封鎖終局四海オケアノスI−2


マシュが聞き出したところによると、海賊たちはこの海域がどうなっているのか理解しないまま進んでいるらしい。
ただ行く当てはあるらしく、水や食料の補給のために海賊島という島を検討しているとのことだ。情報ももちろんだが、海上では食料などを得ることはできないし、召喚サークルを確立するための霊脈も見つけられない。
陸上を目指すのは合理的だ。

ロマニも合意して、マシュは意外と貫禄ある指示で船を海賊島へと舵を向けさせた。

戦いも終わり、緊張もなりを潜めたことで、ようやく唯斗も周囲の世界に意識を向けられる。
船員たちが島へと向かうために準備をし、けが人を手当てしているのを見ながら、甲板で欄干にもたれて水平線を見渡す。


「マジで海だ…」

「海としては特に不審な点はないね」


隣に立つアーサーも、潮風に金髪を揺らしながら水平線に目を細める。
大海原の向こうには白い雲が点在し、陸地の影はない。気候としては、いくらか赤道に近い温暖な海域のようだ。荒れてはいないが、地中海の穏やかさでもないような気がする。北海のような北の海でもない。やはり、太平洋か大西洋のやや赤道よりといった感じだろうか。


「…海賊じゃない、国家の船員とかだったら、殺してしまうと逆効果だろうけど、海賊ならそこまで死に対して不寛容ではない、と思ってる」

「そうだね。海賊はその点割り切っていると思うよ」


少し言い訳がましかっただろうか。
欄干を掴む手に力が入ってしまうと、アーサーは隣で苦笑した。何かと思って見上げると、アーサーは優しく見下ろす。


「レディ・キリエライトを含め、サーヴァントではマスターと意見をぶつけることはできない。アドバイスはできてもね。藤丸君と意見をぶつけられるのは君だけだし、それは君にとっても藤丸君にとっても良いことだ。ありのまま喧嘩するといい」

「……分かった」


喧嘩したいわけでもないし、もちろん、人を殺したいわけでもない。だが、考え方がぶつかることを恐れる必要もない。予備員として、折れるタイミングは唯斗の方が早くあるべきだろうが、立香にきちんと意見を伝えることは遠慮するようなことではないと、アーサーは背中を押してくれた。

やがて船は前方に島の影を掴み、その島へとまっすぐに進む。目指していた海賊島とのことだ。
港などはなく、白い砂浜のギリギリまで接岸する。そこから小舟を出して、あるいは直接海に入って島へと上陸した。唯斗とアーサーは船から直接大きくジャンプして砂浜に降り立った。マシュと立香は小舟で上陸してくる。

すると、島の森から他の海賊たちがわらわらと出てきた。こちらを見るなり、顔を下品にゆがめる。


「ヒャッハー!女だ!獲物だ!」

「マシュ、唯斗、峰打ちで!」

「はい、マスター!」

「…向こうは俺と立香は殺す気でくるぞ」


立香は唯斗の隣に来るとわざわざそう言ってきたため、唯斗は血気盛んに迫る男たちに指先を向けて答える。
立香はそれにむっとした。


「相手が海賊だからって、唯斗、殺してもいいって思ってる?」

「殺す気はないけど、結果そうなっても、あまり問題はないと思ってる。ただ、陸上ではあいつらの役割が読めないからな、技術要員が特定できない以上、加減はする」

「常に加減して欲しいんだけど」

「状況による」


マシュとアーサーがちぎっては投げを繰り返し、唯斗もこちらにやってくる男たちをガンドで気絶させていく。投擲を結界で弾き短く答えると、立香は「唯斗?」と圧をかけてきた。


「あのな立香、俺たちはサーヴァントじゃない。もし日本の街中でいきなり剣を持ったヤツに襲いかかられたら、正当防衛で相手を殺してしまっても罪には問われない。なぜ特異点ではそれが許されないんだ」

「俺たちにはサーヴァントがいる、圧倒的にこっちの方が強いんだから、加減して当然じゃん」

「圧倒的、ね」


そのくせ、サーヴァントがやられそうになったら前に出ようとしてしまう自己犠牲精神を持ち合わせているのだ。本当にサーヴァントが圧倒的に強いということを理解しているのか疑問だった。


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