封鎖終局四海オケアノスI−5
宝具などはもちろん使わず、アーサーは剣筋だけで勝負する。しかしドレイクの剣捌きもとんでもないレベルである上に、素早く銃も撃ってくる。この時代らしい、剣と銃が同時に使われる戦闘だ。
銃弾すらアーサーは剣で切り捨てるが、流れ弾がこちらに飛んでくるため、結局唯斗は結界を展開する必要があった。とんでもない人物だ。生前ながらサーヴァント並みとは。
そうして一通り戦いがドレイクが押される形で進むと、ドレイクは程よいところで切り上げることにしたらしい。
「かぁ〜っ!効いた効いた。あたしの負けさね。煮るなり焼くなり抱くなり好きにしな!」
「ま、間に合ってます…」
ニヤリとしたドレイクに、立香は若干顔を赤らめながら首を横に振った。ドレイクはその反応に笑った。
「へぇ、なるほどなるほど。そういう訳なら仕方ないね。ともかく負けは負けだ。あんたらの話を聞こうじゃないか。でもまぁ、あれだろ?見た感じ、足が欲しいってことじゃないかい?あんたらは捜し物があるが、この海に不慣れだ。なんで、海賊だろうがあたしを頼るしかないってことわけだ」
「海賊とか関係ない。フランシス・ドレイクが必要だ」
それに対して立香ははっきりそう答えた。
ドレイクは一瞬目を見開いてから、少しだけ顔を赤くする。
「へぇ……ふーん、はーん、そーうなんだ」
「立香ってああいうとこあるよな」
「君も大概だよ、マスター」
こっそりアーサーに言うと、アーサーは軽い口調で返した。聞き返したかったが、ドレイクはあっさりと切り替えて話を進めるためそちらに意識を戻す。
「で?具体的に何をしろって言うんだい?あたしらは負けたんだ、命以外は差し出すよ?」
「…まずは状況を掴みたいと思います。この海域は具体的にどこですか?」
「あー、悪いね。そういや、それわかんないわ、あたしら」
「分からないでどんちゃん騒ぎしてたんですか!?」
「そうだよ、だって食料や水に困らないしねぇ。よし、じゃあ降伏もしたことだし、あたしたちは今からあんたの仲間!さあ、とりあえず乾杯だ!」
「え、ちょ、待っ、」
ドレイクは強引に「いいからいいから」とジョッキを用意し、立香たちを野営地の中心に引き立てる。
日が傾き始めた空の下、たき火の周りに海賊たちがあぐらをかいて座り、飲み食いに興じている。そこに立香やマシュを連れて、ドレイクはラム酒のジョッキを男たちに持ってこさせる。
「それじゃあ野郎ども!新たに仲間になった四人に…あれ?逆だ。新たに仲間になったあたしたちに乾杯だ!!」
男たちは一際大きな歓声を上げてジョッキを互いにぶつけ合う。もうここまでの騒ぎになってしまえばどうしようもないだろう。後ろからついていった唯斗とアーサーは、慌てるマシュをよそにすでに諦観だった。
海賊に常識を求める方がおかしいだろう。
ドレイクはなおも話をしようとする真面目なマシュにジョッキを押しつける。
「あの、協力していただけるなら話を…」
「ん?ああ、大体分かるよ。この海域は異常なんだろ。少なくとも、砲弾の直撃を受けてピンピンしてる超人がうようよいるんだからね!」
超人、それはサーヴァントのことだろう。やはりこの特異点にもサーヴァントが召喚されているらしい。敵としてか、抑止としてかはまだ分からない。そもそもこの空間の広さすら定かでないのだ。
ちゃらんぽらんに見えて、やはりドレイクは世界一周を成し遂げるだけある人物だ。一応、ここで起きていることはある程度把握しているらしい。
なお、知りながら襲ってきたのは「面白そうだった」からとのことだ。どこまでも海賊だった。
「で、藤丸だっけ?あんたは…船長か何かかい?」
「似たようなものでしょうか…」
マシュは反応に困ったようにしつつ是と答え、立香もなんと言ったものか、という顔をしていた。
ドレイクはそんな立香ににやりとする。
「なるほど、それなら…そら、飲みな!」
そう言ってドレイクは、黄金に輝く杯にラム酒をついで立香に差し出した。無理矢理飲まされた立香は一瞬で顔を赤くして目の焦点が合わなくなる。
ふら、とする立香の手元にある杯に、唯斗とアーサー、そしてマシュの動きが止まった。マシュの肩にいるフォウすら驚きの鳴き声を上げていた。
それは、紛れもなく、聖杯だった。
杯をドレイクが立香から受け取ると、ドレイクは驚愕するマシュたちに疑問符を浮かべる。
「なんだい、急にあたしの顔を見て。似たような知り合いでも思い出したかい?」
「い、いえ、それです、その杯!」
「おや、これに目をつけるとはお目が高い!」