封鎖終局四海オケアノスI−8
船は順調に進んだが、前方に見えた島にサーヴァントの反応が観測されたことで、ドレイクとカルデア一行だけで探索に上陸することになった。
なるべく事前にロマニから観測できる陸地の情報を唯斗は聞いていたが、場所の特定は依然としてできていない。恐らくこの先も難しいため、召喚された英霊から推測するしかないだろう、という結論になっている。
唯斗がそうやって通信している間、甲板では立香たちが戦闘をしていたようで、どうやらこの海には「海賊の概念」が幽霊のように現れているらしい。聖杯によって狂ったこの海には、大航海時代というものが概念的に再現されているようだった。
サーヴァントが召喚されるのと同じようなものだろう。
やがて船が接岸すると、船員たちを残して砂浜に上がる。
ドレイクと立香、マシュ、唯斗、アーサーで歩き出すと、途端にドレイクが何らかの気配を察知して突如として発砲した。
銃声が森に響き、鳥が飛び立つ。やられる前にやるということだろう。
マシュはあわあわとしているが、ドレイクは気にせずに森へと分け入る。
「おーい!マシュ、藤丸、唯斗、アーサー!こっち来てみな!」
「こんぐらい豪胆じゃなきゃ、未知の海洋に出ようとは思わないか」
「それは…確かにね」
ドレイクに唯斗が感心していると、アーサーも頷く。
立香たちに続いて森に入ると、ドレイクは草の間に鎮座する石版を示した。
「これ読めるかい?」
「ルーン文字だな。かなり新しい…」
唯斗はしゃがんで石版を注視し、ルーン文字を解読する。さすがにルーン文字くらいはある程度読むことができる。アーサーも読めるだろう。
「血斧王、ここに目覚める…9世紀のヴァイキングの王、エイリークだな」
「エイリーク王…サーヴァントだね」
アーサーは顎に指を当てて険しい顔をする。この石碑そのものから微量の魔力を感じるため、恐らく概念の海賊と同じだろう。つまり、この世界には、海賊にまつわる英霊が召喚され始めているということだ。
『まずい、気づかれた!サーヴァント反応急速接近中!』
「マシュ、会敵する…!」
「はい、先輩!」
マシュが盾を構え、アーサーも剣を構える。ドレイクは銃を前方に向ける。
この人数だけでサーヴァントとの戦闘だ。
話し合いができれば、なんて考えていたものの、現れたエイリークはバーサーカーだった。話が通じるわけもなく、森の中で戦闘にもつれ込んだ。
咆哮を上げて、斧を振り回すエイリーク。マシュとアーサーは俊敏に動いてエイリークに攻撃を仕掛けていく。他のサーヴァントはまだ呼べないため、二人に頑張ってもらうほかなかった。
すると、エイリークが斧によって木々を薙ぎ倒し、その枝や石がこちらに猛スピードで飛んできた。唯斗は素早く結界を展開し、立香と自身、そしてドレイクの前に幾何学模様の術式が輝いて出現する。
「おお…あんた魔術師だったんだね」
「一応。あんま期待はしないでくれ」
「こんくらいできるなら、人間は敵じゃないだろう?」
「まぁ…むしろやり過ぎないよう調整するのが大変だけどな」
そう言いながら立香を見遣れば、気まずそうにする。正直なヤツだな、と思っていると、アーサーの斬撃によってエイリークが消滅した。
「お疲れ様、アーサー。あの感じ、座には帰ってないな」
「うん、倒しきってはいないね」
『…うーん、ごめん、今日はシステムの調子が良くないみたいだ。追跡はできない』
「霊体化したか、サーヴァントとして何者が召喚して戻らせたかのどっちかだろ。それならシステムが正常でも追えない」
『あ、なるほど。確かにその可能性もある。とりあえず、常に正常に作動しているか注視しておくよ』
エイリークは倒せなかったようで、消えてしまった。霊体化したのか、マスターのところに帰ったのかは分からないが、いずれにせよこれ以上は動けない。
元の目的に戻るべきだろう。