封鎖終局四海オケアノスII−9


航海を続け、また新たな島が見えてきたときだった。
いつも通りアルテミスとオリオンが騒いでいると、オリオンの頭に矢が突如として突き刺さった。


「ふぎゃあ!」

「ダーリンの頭に矢が!?大当たり!!」


アルテミスはオリオンの頭から、ややもったいつけて矢を引き抜くと、柄につけられた手紙を見つける。どうやら矢文だったようだ。


「あ!」

「どうしたのですか?」

「うふふ、知り合いだったわ。相変わらず堅苦しいわね。やっぱり愛を知らない純潔少女だからかしら」


手紙の主に、アルテミスはどこか嬉しそうにしながら笑う。
アルテミスにこう言われる人物と言えば、思い当たる人物は限られる。


「アタランテか?」

「ええ、そうみたい。ふふ、驚くかしら」


アルカディア王イアソスと女神クリュメネの間に生まれたアタランテは、男子を望まれていたにも関わらず女子として生まれたことで捨てられてしまい、アルテミスが送った雌熊に育てられた。それに恩義を感じてアタランテはアルテミスを信奉するようになる。
アタランテは自分より強い男と結婚するとして、求婚した男と勝負して負けたら殺すというルールで勝負したため、多くの若者が命を落としていた。

そんなアタランテに、ついにアルテミスが会う。
このことに懸念していたのは唯斗だけではなかった。

上陸して森に入っていくと、オリオンに純潔を奪われる日のことを顔を赤らめてアルテミスが語り始めた。聞いてもいない壁ドンシチュエーションを聞かされていると、やはり懸念は強まる。
両方を知るエウリュアレは、すでに哀れみを目に浮かべていた。


恋愛脳(スイーツ)すぎる…彼女が見たら、ショックで卒倒するんじゃないかしら」

「気を強く持って欲しいな…」


そう心配していると、ついにそのときがきた。

森の中、どこからともなく声が降ってくる。


「汝らはアルゴノーツを敵とする者か!?それともすでに諦め、屈した者か!?」


リーダーは立香だ。視線を向けると、立香は迷わずに答えた。


「俺たちは諦めない!」

「いいだろう!今、我が姿を見せる!」


現れたのは、緑を基調とした服に、ネコ科を思わせる耳と鬣のような金髪、そして弓矢を携えた女性だった。


「試すような問いかけをして済まなかったな。分かってはいたのだが、念のためだ。何しろ、我々はこの海における最後の希望だ」

「あなたは、アタランテ、でよろしかったですか?」

「ああ、我が名はアタランテ。女神アルテミス様に仕える狩人である…あぁ、そういえばフランスでちらりと顔を合わせていたな。あのときは狂化されていたが…」


そういえば、第一特異点でジャンヌ・オルタに召喚されていたサーヴァントの一人でもあった。
一瞬だけ敵対したことがあるが、今回は味方だ。

マシュは全員をまとめて紹介していき、最後にアルテミスの番となった。


「それから、こちらがアルテミスさんです」

「……アルテミス?マシュと言ったか。冗談はやめてもらおう。アルテミス様は狩猟と純潔の女神であり、間違ってもサーヴァントとして召喚されることはないはずだ」

「ねぇダーリン、アタランテが信じてくれないの。別にいいじゃない、純潔の女神が愛に生きたって。ねえ?」

「ノーコメント」

「…え、本当?」


アルテミスの様子に、アタランテは動きを止める。アルテミスはそんな様子に気づかずに、いつも通りに振る舞った。


「本当よ、アタランテ。愛に生きる狩猟の女神、それがこの私。アルテミスよ、うふっ」


その瞬間、ふたりとアタランテの体が傾いた。マシュは慌てるが、アタランテは卒倒することはなく、なんとか体勢を立て直す。


「だ、大丈夫だ…今更自分が信仰していた女神が恋愛脳(スイーツ)系だからって倒れたりしない…!」


まさか英霊として召喚された先で自身の信仰対象と出会い、しかもそれがこの有様だと知れば、気を失いたくもなる。
アタランテは気を取り直した。


「…ともかく、紹介したいサーヴァントがもう一人いる。契約の箱を持つサーヴァント、要するに、アルゴノーツが求める男だ。その名を…」

「やあ、待ちくたびれたよ、君たち」

「…ダビデ、という」


120/460
prev next
back
表紙へ戻る