封鎖終局四海オケアノスII−10
合流したサーヴァント二騎は、それぞれアタランテとダビデだった。
やはり契約の箱は宝具として存在しており、持ち主は予想通りダビデだったようだ。
さらに、契約の箱はダビデの召喚に際して現物がともに出現する。しかも、それは霊体化できず、ダビデの生死に関係なく世界に独立して留まる。
つまり、ダビデに座に還ってもらうだけでなんとかなる代物ではない。
アタランテが言うには、伝説通りアルゴノーツの乗組員として召喚されたアタランテが、イアソンの元を脱してこの島にたどり着き、偶然発見したダビデにイアソンの狙いが契約の箱であることを伝えた。
ダビデはそれを聞いて島に留まり、聖杯が召喚した抑止としてのサーヴァントを待っていたのだそうだ。
そもそもこの二人を引き合わせたことこそ、時代の修正と抑止の力であったのではとも思う。
「イアソンは、この世界に召喚されたときから契約の箱を求めていた。これがあるとこの海域の王になれると公言して」
「なんだそれ。契約の箱はユダヤの根幹を記したもの、ダビデ王が神殿を介して神に奉納したものだろ。そもそもユダヤの王はオリエントともヘレニズムとも欧州文明とも違う、より共同体統治者としての便宜的な地位に近い。ギリシア文明の定義する『王』とは性質が異なる」
「よく知っているね、唯斗。理解の通り、これは王の資格ではなく単なる王の所有物さ。それにしても君は若い頃の僕のようだ。見た目が。さぞ持て囃されることだろう」
「……これ以上、憧れの英霊が全然イメージと違ったパターンはやめてくれ……あ、でもダビデ王はアビシャグとかいたし…いや、イメージ通りか。悪い、続けてくれ」
「後世の子にこう言われるのはさすがに嬉しくないな」
明るい牧草地を思わせる緑の神に緑の瞳、幼少期に美少年と持て囃されたダビデは軟派な男という見た目をしている。そんなダビデ王に名を呼ばれるだけでも嬉しくなってしまうところ、またしてもイメージが崩れることを言われたと思ったが、よく考えれば伝説通りだった。
それよりも重要なことを確認する必要がある。
「それでダビデ王、契約の箱だけど、触れたら等価の反動として死がもたらされるという認識で間違いないか?」
「その通りだよ」
「ってことは、神霊が触れれば、反動で世界に放出される魔力量は…」
「間違いなく、この世界に死をもたらすだろうね」
『はあ、やっぱりか…』
聞いていたロマニと揃って、唯斗はため息をつく。視界の端で分からなさそうにしている立香を見て、唯斗はもう少し解説を入れておく。
「今、この世界はレフの聖杯とドレイクの聖杯でシーソーが釣り合ってる状態。どちらも決定打がなく、特異点は修復も崩壊もされない。だから、シーソーの支柱をぶっ壊す。その力をこの世界に解き放つために、契約の箱にエウリュアレを捧げようとしてるんだ」
「めっちゃわかりやすい…ありがとう唯斗」
「それにしても、なぜイアソンはそこまでして世界を滅ぼしたがっているんでしょう」
「さあ?もしかすると、知らないのかもな」
マシュの疑問にアタランテはそんな回答を返した。イアソンの元で、一度は黒海を旅した人物だ。その評価は正しいだろう。確かに、この世界の王になれると思っている男が、世界を滅ぼす行為をしようとしているのはチグハグだ。
唯斗は状況整理が一通り済んだところで、メンバーを見て次の話し合いに移行することを提案する。
「で、問題はイアソンたちとの戦い方だ。目下問題はヘラクレスへの対応と契約の箱の死守。ダビデ王、アタランテ、アルテミス・オリオン、エウリュアレはアーチャー。残りはシールダーのマシュとドレイク、俺と立香、そしてセイバーのアーサー。カルデアから呼べる戦力も合わせればもちろんそれなりに戦力は大きいけど、長時間呼べるわけじゃない。長期戦は無理だ」
「ヘラクレス単騎を引き離す必要がありますね。メディアとヘクトールを同時に相手にすることはできません」
「ヘラクレスが契約の箱に触ってくれたら一発で昇華できると思うけど…それどんな状況だろう」
マシュ、ダビデと考え込むがすぐに行き詰まる。アタランテやオリオンも籠城戦などを考えるが、やはりヘラクレスの火力の前には無意味だ。とにかくこのメンバーでは近接戦に耐えられないし、カルデアからの戦力だけで11回殺すこともできない。