封鎖終局四海オケアノスII−12


ついに、アルゴー号が森の木々の影から見えた。島に向かって接近してくる巨大な船を捉えると、アーチャー組が用意を始める。ここからは短期決戦だ。スピード感が重要になる。
敵影を認めたアタランテは、弓矢を構えた。


「さて、遠慮なく宝具の大盤振る舞いをさせてもらおうか。『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』!」

「じゃあ私もいくわよ!宝具展開!愛を唄うわ!『月女神の愛矢恋矢(トライスター・アモーレ・ミオ)』!!」

「…私も、遠慮なく贈ってあげる。宝具展開、『女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)』!」

「いやぁモテモテで羨ましいな。僕からもお裾分けだ。宝具、『五つの石(ハメシュ・アヴァニム)』!」


次々と矢の宝具が解放されていき、大量の矢がアルゴー号に降り注ぐ。一発一発が重く、外しても船の周りに巨大な水柱が立ち上っていた。
すぐにヘラクレスが船から降りて島に向かってくる。降り注ぐ矢をものともせず移動する巨体に、立香はエウリュアレを背負って走る準備をした。


「立香、気休めだけど強化かけとく」

「ありがとう」

「マシュ、ドレイク。行こう」

「はい、唯斗さん」

「ぶちかますよ!」


ものすごい勢いで木々を薙ぎ倒して接近してくるヘラクレス。唯斗は足に強化をかけて飛び上がると、森を越えてアーサーとともにヘラクレスに接近する。立香とマシュは後方を走り、ドレイクも援護射撃をしてくる。

上空10メートルほどからヘラクレスを捉えると、唯斗は左手をかざす。


「ヴァズィ!」


ヘラクレスの足下の地面が突如として消失し、ついでにアルゴー号に落としておいた。ヘラクレスは突然空いた穴に落ちていき、攻撃が止む。

アーサーはすぐにヘラクレスに接近すると、斬撃を開始した。
衝撃波が木々を揺らし、その剣の激しさが伝わる。着地した唯斗は、アーサーがヘラクレスと一騎打ちしているのを見守った。


(いったん離脱する!走って!)

(了解)


唯斗は振り返って走り始める。強化した足で勢いよく森を駆けていくと、すぐにドレイクとマシュに追いついた。


「来るぞ!」

「はい!アタランテさん!」

「任せろ」


アタランテはマシュを連れて先に森を抜ける。ドレイクはいったんここで別れる。
次に平原に出たところで、待ち構えていたアルテミスとオリオンが援護に入る形でアーサーとヘラクレスが再び戦いを開始した。
人間の目で追うことのできない剣戟によって、一瞬で地面が抉れ、木々が吹き飛ぶ。こちらに飛んでくる瓦礫を結界で弾き、マシュが盾によって立香に届いた瓦礫を飛ばした。


「よし、サンソン!」

「ここに。っと、これはまた…!」


呼び出したサンソンはアーサーの様子とヘラクレスに驚く。アーサーはサンソンが合流することを分かっているため問題ない。


「悪いサンソン、アーサーとあいつを足止めしてくれ」

「分かりました。お任せください」


サンソンは素早くヘラクレスに向かうと、宝具を展開した。草原に現れたギロチン台から伸びたいくつもの手がヘラクレスを拘束する。ギロチン台に引き立てることこそ敵わないが、動きが止まった隙にサンソンとアーサーの剣がヘラクレスを集中的に切りつける。


(マスター、サンソン殿と離脱する)

(分かった)


アーサーがサンソンとともに再び離脱すると、一緒に地下墓所の入り口付近まで走り、待っていたダビデと合流した。アルテミスたちとは別れ、アタランテが運んだマシュを後衛に、唯斗とアーサーでヘラクレスと3度目の会敵をする。
アーサーは関節を、サンソンは急所を狙って攻撃しているが、それでも動きは止まらなかった。ダビデの石を使った鋭い投擲攻撃もヘラクレスを的確に抉るはずなのに、ヘラクレスはどんどんこちらに迫っていた。
だが、飛び散った血痕が草原を汚しているため、しっかりアーサーによるダメージも入っている。


「唯斗、立香たちは地下に入った!」

「あとはお任せを、唯斗さん!」

「了解、アーサー!」


唯斗とアーサーはダビデとともに離脱する。マシュと回り込んでいたドレイク、アタランテが地下に入っていき、そのすぐ後に、ヘラクレスは地下に突入していった。狭い墓所では人数がいると却って不利だ。彼女たちに任せるしかない。


「僕は確認しに地下に入る」

「分かった」


ダビデは契約の箱を確認するために地下へと入っていき、あとはアーサーとサンソン、唯斗が残される。


「…はぁ、お疲れ様、アーサー、サンソン」

「うん、マスターもね」

「呼ばれていきなりヘラクレスとは、回を重ねるごとに特異点は厳しさを増していますね」

「まあな。でもありがとな、サンソン」

「いえ、呼んでいただけて光栄です。それでは」


サンソンはカルデアに戻り、2人だけが残される。風がそよぐ草原は、先ほどまでの激しい戦いが嘘のようだった。


「…よく折れたね、マスター。あのとき」

「アーサーにあんなこと言われたら、応じないわけにいかない、マスターなんだから」

「そうだね。君のその強さ、僕はとても素晴らしいものだと思っているよ」

「…さんきゅ」


人目がないからか、今度はアーサーは頭を撫でてきた。やはり、アーサーにこうされる瞬間が一番落ち着くかもしれない。

すると、地下から魔力の大規模な放出があり、すぐに消えた。どうやらヘラクレスは無事に倒せたようだ。


「…やったようだね」

「みたいだな。よし、大詰めだ」


123/460
prev next
back
表紙へ戻る