封鎖終局四海オケアノスII−13


全員欠けることなく、ヘラクレスは倒された。
あとは事前に示し合わせた通り、まとめてイアソンたちを叩く。


「残るメディアとヘクトールは強敵です」

「あ、ヘクトールは俺たちにリベンジさせてくれ」


全員でまとまって草原を歩きながら最終確認をしている際に、唯斗はふとそう提案した。きっと忸怩たる思いをしているサーヴァントがカルデアに控えているはずだ。隣を歩く騎士王もそうだろうし、何より唯斗自身もそうだった。


「お、いいね。やっちゃいな」


そういうのが好きそうなドレイクはニヤリとして同意した。立香も「任せた」と頷く。
隣を歩くアーサーはにっこりと笑った。


「ギリシアの英雄に見せてやろうじゃないか。僕たち英国の力をね」

「え、笑顔なのに怖いです…」


圧のあるアーサーの笑顔にマシュが引いている。なかなかアーサーもあのときのことはキレているらしい。

そうして森に入り、斜面を降りて船に戻ると、沖合に停泊しているアルゴー号に接近する。先ほどと同じように船を横に着けると、今度はドレイクの方からイアソンに声をかける。


「おい!戦いに来たぞ!」

「馬鹿な!ヘラクレス!ヘラクレスはどうした!」

「おいおい、どうしたってあたしたちに聞くのかい?あいつが生きてたらあたしたちが生きてるはずないだろ?」

「馬鹿な…!あのヘラクレスがお前らのような寄せ集めに敗れるわけが…!」

「ま、いいさ。そう信じたいならそうすれば。こっちは勝負を決めるだけさね」


イアソンは慌てて出立の指示を出す。どうやら撤退するらしい。それも予想通りだ。ドレイクは船員たちに号令をかけた。


「ゴールデン・ハインド号!これが最後の航海、最後の海賊だ!目標はアルゴー号!連中が持っている財宝はあたしたちの自由の海だ!全部まとめて取り返すよ!」


逃げるアルゴー号に対して、ゴールデン・ハインド号はぴったりとついて行く。ドレイクたちの航海技術の前に、ただの宝具でしかない様子の船では逃げ切れない。
そう判断したのか、ついにヘクトールとメディアがこちらに一瞬で乗り込んできた。アーチャーたちからの攻撃を受けるつもりはないのか、接近戦に持ち込むようだ。それでいい。

予定通り、唯斗とアーサーはヘクトールの前に立ちはだかった。こちらの狙いを理解して、ヘクトールは立香たちの方には行かずに唯斗たちと対峙する。


「やあ、未来の魔術師さん。遠路はるばるご苦労様。オジサン、そういう根気は評価するなぁ」

「…カルデアのことは、紹介する必要はないようだな」

「なあに、ちょっとばかり読みが当たっただけさ。所詮は仕えるマスターも選べなかった、戦争屋の人殺しさ」

「俺はそれでも、あんたを英雄だと思い続けるし、人類史はあんたを語り継ぐ。そのために、戦ってるんだ」

「……嬉しいことを言ってくれる。でもま、矜持ってのはいついかなるときも持つべきものでね。オジサンも防衛戦にはちょっとばかり自信があるんだ。なんで…総力戦でかかってきな、ガキ。年季の違いを教えてやるよ」

「ディルムッド」

「…ディルムッド、ここに。挽回の機会をいただけるのですね」

「あぁ。アーサー、ディルムッド。誰が海の覇者か、ギリシアの英雄に見せてやれ」


ブリテン王とケルトの騎士。後に大英帝国として世界の海を統べる国の礎となった英雄だ。ギリシアの英霊に、真の海の覇者は誰か、証明してやるべきだろう。


「先手必勝。不毀の極槍(ドゥリンダナ)


ヘクトールは早速、デュランダルに魔力を展開して宝具として展開する。猛烈な勢いをつけて、槍はこちらに飛んできた。


破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)…!」


そこに、ディルムッドは深紅の槍に力を込める。2本の槍の片方で宝具を展開すると、突っ込んでくるデュランダルを受け止める。この槍は、触れている部分の魔術効果がすべて剥奪されてしまうという宝具殺しの代物だ。
それにより、一瞬にして勢いをそがれたデュランダルは、アーサーによって弾かれる。

本来、ランサーにはセイバーが有利だ。だが機動力もあるヘクトールに対して、唯斗をがら空きにすることはできない。その場合、アーサーが後ろに下がってディルムッドが前に出た方がいい。
ディルムッドは前に出ると、ヘクトールとの槍での一騎打ちを開始した。
激しくぶつかり合う槍からは火花が散り、互いにリーチの長い獲物から俊敏に体を反らして避ける。


「…やっぱ、ディルムッドは力を出し切れてない、か…?」

「そうだね、魔力の強化がいるかもしれない」

「分かった」


アーサーが同意するなら、やはりそうなのだろう。原因は分からないが、本気を出せないならマスターとして援護が必要だ。


「ディルムッド!ぶちのめせ!!」


右手を掲げて魔力を籠める。途端にディルムッドの2本の槍が輝く。


「マスター…!ありがとうございます。このディルムッド、双槍にてギリシアの英雄を討ち取ってみせましょう」

「やってみな…!」


不敵に笑うヘクトールに、ディルムッドは2本の槍によって畳みかける。威力も素早さも増した槍によって、ヘクトールは途端に追い詰められていく。


「宝具解放、『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』!」


さらにディルムッドは黄色い槍の宝具を展開した。この槍によって受けた傷は、槍を破壊するか使い手が死なない限り癒えないとされる。
その槍によって、ヘクトールの腰あたりが思いきり抉られた。大量の血が飛び散り、ヘクトールが呻いて顔をしかめる。再びディルムッドは赤い槍に力を込めると、宝具を再度使おうとしていたヘクトールの槍を弾く。


「アーサー、畳みかけろ」

「了解。最後だ、ディルムッド殿」

「ええ!」


アーサーも剣をヘクトールの背中に回り込んでたたき込む。背中を切りつけられたヘクトールは前に衝撃で吹き飛ばされ、待ち構えたディルムッドの黄色い槍に貫かれた。致命傷、かつ、もうこの世界では治らない。
動きを止めたヘクトールは、それでも、槍を放すことはなかった。


「……畜生、ここまでか。まあ、やるだけのことはやったからねぇ。あとは…最後にその身を捧げな、エウリュアレ!」


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