強さも弱さも−2


しかしギルガメッシュは大して気にした様子もなく、こちらに視線を向けた。まさか唯斗に意識を向けるとは思わず驚く。


「そこの召喚術士。疾く召喚せよ。あやつとて我、待たせるのは不敬ぞ」

「え…あぁ、分かった」


とりあえず立香を含めこちらには敵意がないようだ。断る理由もなく、予定していた通り唯斗は召喚術式の前に立つ。同時に、内心で自分のサーヴァントに呼びかけた。


(少し懸念すべき事態だ。召喚ルーム前に霊体化して集合しておいてくれ)


アーサーをはじめ、それぞれから了解が返される。何かあってもいいように一応の対策だけしておくと、詠唱を開始した。
立香と違って回数は少ないが、唯斗もこれで4回目の召喚だ。慣れてはいるため、つつがなく詠唱を済ませた。

そしていつも通り、大規模な霧の噴出とともに、莫大な魔力の塊が出現するのが分かる。急速にサーヴァントとして構成された英霊が形になると、影となって霧の向こうに霞んで見え、やがてその姿を現す。


「キャスター、ギルガメッシュ。ウルクの危機に応じこの姿で現界した。思い上がるでないぞ召喚術士」


現れたのは、同じ顔のギルガメッシュ王だ。しかし服装は異なり、上体はほとんど晒された肩衣だけが覆い、頭に回された白い上質な布は余った長い裾が後ろに垂れる。下半身もゆったりとしたつくりで、赤や青の色が鮮明だ。

キャスターと名乗ったことから、ようやく何が起きたのか理解する。


「クラス違い…なるほど、あっちが全盛期、キャスターが不死の力を得る旅から帰った後の、ウルクの壁を築いたときの王か」

「平たく言えば老い耄れの姿よ」

「ほう…割り込んで召喚された厚かましさを恥じずに言うか」


突然火花を散らし始めた二人のギルガメッシュは、クーフーリンと同じようにクラス違いで召喚されている。恐らく、伝説通りなら立香が召喚した方はアーチャー、英雄王と呼ばれる全盛期の姿だ。
そして唯斗が召喚したギルガメッシュはキャスター、善政を敷いて壁を建設した賢王ギルガメッシュである。

どうやら、当初は賢王のみが召喚に応じる予定だったところを、なぜか英雄王が割り込んで召喚に応じて現界、唯斗の召喚でようやく賢王も召喚できたらしい。

呆気にとられるロマニとダ・ヴィンチをよそに、アーチャー・ギルガメッシュは腕を組んで偉そうにせせら笑う。


「まったく、人類最後のマスターが斯様な雑種と半端な魔術師とは笑わせる。面白おかしいことでもないかと期待して現界してみれば…なるほど確かに、そこの何もかも減衰した耄碌で十分なはずよな」

「フン、経験も知能も及ばぬ青二才が、口だけは達者で困る」

「口だけか思い知らせてやっても良いのだぞ?」

「年季の違いというヤツは体で教えてこそといったところか」


双方、鋭い瞳でにらみ合いながら徐々に魔力を漲らせていく。
こちらのキャスターのギルガメッシュは空中に石板を出現させ、輝くシュメール文字を展開する。対するアーチャーのギルガメッシュは、背後に無数の黄金に光る水面のような穴から剣先を出現させた。

この世の財のすべてを得たというギルガメッシュは、その巨大な宝物庫が宝具と言われている。このままでは、冗談抜きにカルデアが吹き飛んでしまう。


「ちょ、ちょっと待て」

「邪魔立てするなら貴様から消すぞ雑種」

「いや俺が消えたらお前も消えるだろが」


慌てて自身が召喚したギルガメッシュの前に出て術式の展開を辞めさせようとするも、聞く耳を持たない。ロマニとダ・ヴィンチも立香とマシュと一緒にアーチャーのギルガメッシュを抑えようとしているが、あちらの方が手に負えないだろう。


「っ、ギルガメッシュ、あんた何か目的があって現界したんじゃないのか!」

「斯様な粗末な場所と貧相な魔術師が人類最後の砦とは、もはやその目的も意味をなさないというもの。まとめて消してくれよう」

「横暴すぎる…!アーサー!ディルムッド!」


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