強さも弱さも−4
さすがというべきか、ギルガメッシュはアーサーがこの世界の英霊ではないことを見抜いている。
アーサーはギルガメッシュを煽って反応を見たようだが、アーチャーの方ならともかく、こちらのギルガメッシュはまったく動じていない。少し苛立っているようではあったが、それですぐに「じゃあやってやろう」などということにはならないようだ。
そんなチョロいギルガメッシュを見たくもないため、そこは別にいいのだが、力を貸してくれない、というのは困る。
「…ギルガメッシュ。悪いけど、ここはあらゆるリソースが不足してる。働かないなら還ってもらっていいか」
「ほう?半人前が言うではないか」
「一人前ならあんたがいなくても人理くらい修復できる。半人前だから、みっともなくても使えるものは使うし、使えないなら切り捨てる。この召喚はシステムフェイトによるものだ、座への強制送還は通常の召喚よりも容易だぞ」
本当はこんなこと、ギルガメッシュ王相手に言いたくはなかった。人類史最古の英雄である存在に、召喚術の家系である唯斗が何も思わないわけがない。何よりも、切れ長の深紅に染まった瞳をじっと見据えて言うのは恐ろしかった。
「…フン、未熟者が大層なことを言う。だが、見た目よりもいくらかはマシな場所のようだな、カルデアとやらは。よかろう、貴様の分不相応な身の程知らずさと胆力に免じて、いくらか力を貸してやってもいい」
「え、マジか」
「何を驚いておる」
まさか応じてくれるとは思わず、つい驚いて見上げてしまう。背の高いギルガメッシュの高い位置にある尊顔を見上げれば、神が丁寧に作り上げただけある造形美が目に映る。
ギルガメッシュは唯斗の反応を見て、呆れつつ少しだけおかしそうにした。
「…や、なんつか、改めて、あのギルガメッシュ王が力貸してくれんのかって思ったら…」
「あくまで後々我のためにもなるからであって、貴様への温情でもなんでもない。思い上がるなよ」
「あぁ…それでも、ありがとう。さっき、ああいう言い方はしたけど…本当は、憧れた英霊に会えて、嬉しかったんだ。勉強し始めて一番初めに知った英霊だったから、特別、っつーか」
急に「あのギルガメッシュ王に会えた」という事実が認識されてきて、力を貸してくれると心変わりしてくれたことで冷静さを取り戻したからか、なんだか気恥ずかしくなってきた。
畏怖や憧憬から、つい目をそらしてしまい、照れて頬をかく。
「…なんて、あんたにはとっては聞き飽きたことかもしれないな」
そうして誤魔化すように小さく笑って、切り替えようとしたときだった。突然、アーサーが唯斗の目元を覆うように隠しつつ抱き締めてきた。唐突に温もりに包まれて何事かと固まる。
「ちょっとマスター、そんな可愛い顔しちゃだめだろう」
「え…は?何言ってんだ」
「初夜権で知られる古代の王相手にそんな可愛い顔したら、食べられてしまう」
いったいこいつは何を言っているのか、と思ってアーサーの手から脱すると、ギルガメッシュがニヤリと笑った。
「雑種にしては見た目の良いヤツだと思っておったが…悪くないではないか」
「何が…?」
「知りたければ分からせてやってもよいぞ?」
「絶対ダメだよマスター」
ニヤニヤとするギルガメッシュに対して睨みを利かせるアーサー。二人が何を言っているのか分からずディルムッドの方を見ると、ディルムッドも神妙な面持ちで頷いた。
「くれぐれも密室に二人きりとなりませんよう」
「ええ…」
空気は緩んだが、アーサーの突然の行動とギルガメッシュのにやけ顔の理由は謎のままだ。
いずれにせよ、立香たちも話をつけたようで(こちらはダ・ヴィンチが煽ったらしい)、二人のギルガメッシュもカルデアの戦力となることで落ち着いた。
立香は引き続き召喚を続けるが、唯斗はこれより各サーヴァントとの訓練期間に入る。
第四特異点へのレイシフトは、3週間ほどに迫っていた。