強さも弱さも−5
ギルガメッシュを召喚した混乱も正午には収まり、アーチャーもキャスターもそれぞれあてがわれた部屋を魔改造して王宮のようにし始め、なんだかんだカルデアに居着くようだった。
一方、唯斗はサーヴァントとの訓練に入る前に、先ほどのギルガメッシュとの戦いでも見受けられたことを確かめるべく、ディルムッドと二人になった。アーサーたち他のサーヴァントにはいったん下がってもらっている。
人気のない廊下にて、ディルムッドと向かい合えば、ディルムッドも話す内容を理解しているようだった。
「ディルムッド、単刀直入に聞くけど、いまいち力を出し切れてないだろ」
「はい。やはり、お気づきでしたか」
「お前ほどの英霊が、追い詰められているわけでもないのに俺の令呪のフォローを必要とするとは思えない。ディルムッドの実力なら、もっと戦えるだろ」
「…ありがとうございます。あなたの期待に、私はなんとしても応えたい。ご協力いただけますか」
「当たり前だ。ロマニのところに行ってみよう」
ディルムッドの力ならば、第三特異点での戦闘で令呪によるアシストが必要にならなかったはずだ。唯斗にとっても、あの特異点で二角も令呪を消費するとは思っておらず驚いているほどである。
ロマニに相談するため廊下を並んで歩き出し、ディルムッドが両手に持っている槍を見遣る。
「…ディルムッド自身の力、ってよりは、宝具そのものの性能が落ちてんのか…?」
「見るだけで分かるのですか」
「分かるっていうか、こんだけサーヴァントがいれば、それぞれの英霊としての格や逸話、伝説の強さから宝具のランクも相対的に分かってくるし、高位の宝具が常時放っている魔力の気配くらいは感じ取れる。ディルムッドは世辞じゃなく、本当に優れたランサーだ。神代のものでありお前が持つ槍にしては放っている魔力量が少ない気がする」
たとえば、あのクーフーリンが持っている槍がこれくらいの魔力量を持っているのなら、これくらいの知名度の英霊のものであれば相対的にこんなものか、というような評価ができる。それは、カルデアに多くの英霊がいるからにほかならない。絶対的にその宝具の良しあしを見て判断することなど唯斗ごときができるわけがなかった。
「…これほど真っすぐお褒めいただけることも、実はそうないのです。なので、やはり多少は照れがありますね」
すると、ディルムッドは称賛など聞き飽きているだろうに、照れたように笑った。隣の遥か高い位置にある端正な顔を見上げ、唯斗は思わず感心してしまう。
「チャームの魅了がなくても、お前はたくさん女性を落とせるタイプの男だよな」
「何を仰います!そんなことはありません。私よりもあなたの方が…」
「…清姫にさ、男にモテるタイプだろって言われたんだけどどう思う」
「………それは、その…」
途端に言い淀んだディルムッド。その素直な性格を考えれば沈黙は雄弁だ。
「…マスターの貞操は私が守りますとも」
「そんな話してねぇだろ」
どす、と右側の逞しい腕に肘打ちをかます。
ディルムッドは慌てて「すみません」と謝るが、唯斗はしょうもない会話に苦笑する。
「誤魔化すの下手すぎだろ。ほんと誠実なヤツだな」
「…マスターは、優しい笑い方をされますね」
少し驚いたようにしながら言ったディルムッドの意図が分からず、隣を見上げて首をかしげる。
「そうか?そもそもあんま笑わねぇしな」
「だからこそ、あなたの笑顔を見ることができた者はますます惹かれていくのでしょう」
「笑顔ひとつで安上がりなこった。ほら、もう管制室着くぞ。切り替えろ」
「はい」
何を言っているのだろうか、と思いつつ、もう管制室に到着したので会話を切り上げる。
宝具の力に制限がかかっているのは、マシュのような理由が考えられる。ディルムッドに対して、マスターとしてかなり深く踏み込む必要があるだろう。内心、唯斗はその覚悟を決めていた。