封鎖終局四海オケアノスII−18
「そっかぁ。あんたたちと世界一周は無理かぁ。でも、短い間だったけど、面白おかしい旅だったからいいよ」
しかしやはりドレイクはすぐにそんな様子も消して、ボロボロの甲板に仁王立ちになる。船長として、まさにそれは大海賊の貫禄だった。
「さ、行きな。海の人間にとっちゃ、別れはいつだって唐突だ。だからあたしたちはいつだって、笑って誤魔化すのさ」
「はい、さようなら。自由の海を渡り歩くキャプテン。でも残念です、私は自分の望みをこの旅で見つけて、ご報告するつもりだったのに」
「ああなんだい、そんなことかい」
この旅の途中、マシュに欲しいものはないか、とドレイクが聞いたときに、マシュはすでに望みは叶っていると答えた。本当の望みを見つけないと、なんて話をしていたが、ドレイクは「もう持ってるよ」と答えた。
「誰だって望みは持ってるんだ。ただ、本当の望みってヤツに気がつかないまま一生を終えるヤツがいるだけの話さね」
「…ドレイク船長。私はどちらでしょう」
「あんたは…うん、自覚しない方がいいタイプだ。あんたはそのままでいい。きっと最後に分かるさ。あんたは何がしたいのか。あんたは何をするために、最期までその盾を振るうのかってね」
本当の望み。そんなもの、考えたこともなかった。いや、望みなんていうものが唯斗にあったのだろうか。きっと昔はアーサーに再会して礼を言うことだった。
今はどうだろう。
ようやく離れたアーサーを振り返ると、アーサーはいつも通り優しい笑みを浮かべる。
まぁいいか、と唯斗は考えるのをやめた。
きっと唯斗にも、分かるときが来るのだろうから。
「じゃあなマシュ、立香、唯斗、アーサー。それと軟弱な学者先生!時代を救った報酬はそうさねぇ…あんたらの旅の終わりに、あたしとの旅は楽しかったって思い出してくれれば、それでいいさ!」
そう言って、まるで大海原に差す太陽の光のように笑ったドレイクの笑みを最後に、視界は暗くなって五感が消えた。
直後、目が覚めてカルデアの管制室が目に飛び込んでくる。まだ地面が揺れているような感覚がするようだった。あれほど長く船に乗っていたことなどない。
「立てるかい?マスター」
「大丈夫だ」
アーサーに返して立ち上がりコフィンを出ると、ロマニが出迎えてくれる。マシュと立香も無事に戻ってきていた。
「いやぁ、それにしても、唯斗君と立香君が喧嘩したときはどうなるかと思ったけど。なんだかんだ最後は息が合った連携だったじゃないか」
するとロマニはそんなことを言ってきた。隣にいるダ・ヴィンチもニヤリとする。
「ランサーとディルムッドを揃って呼んだところなんて、声まで揃っちゃって」
「先輩と唯斗さんはとても良いコンビだと思います。いつも冷静な唯斗さんがいてくださるおかげで、頼りないドクターより安心できます」
ダ・ヴィンチはからかっているだけだが、マシュは純粋にそう言っているため怒るわけにはいかなくなる。言葉に詰まった唯斗を見て、さらに大人たちは楽しそうにした。
一方、立香は首をかしげる。
「喧嘩なんてしたっけ?意見が合わないことはあるけど…なんだかんだ唯斗が仕方ないなって顔して助けてくれるの、俺めっちゃ好きだよ」
「…っ、お前なぁ…」
「そうそれそれ!あ、そういえば歴史教えてくれるって言ってたよね?」
「……くそ、生きやすそうなヤツだなお前は」
「いきなり褒めないでよ」
ため息をついた唯斗に、ロマニたちの笑いが聞こえてきた。予備員だから折れているのだと思っていた唯斗だったが、思えば立香のこういうところに絆されている結果なのかもしれない。その可能性を否定できない自分に呆れつつ、唯斗は諦めた。
立香のこういうところが、立香が正規マスターであるべき理由なのだ。