強さも弱さも−11
そうして野菜を避けて食事を進めているときだった。
よく知る気配が近づいてきて、唯斗はハッと固まる。その様子にロビンフッドが首をかしげた直後、唯斗の背後にサンソンが立った。
「マスター?」
「…サンソン、どうした?」
「いえ。ただ、お食事の進みが遅いようでしたので。はて、そのお野菜は…?」
圧がすごい。背後から「食べますよね?」という無言の圧力がかけられる。
それを見てロビンフッドが苦笑する。
「あーあ、見つかっちゃいやしたねぇ」
「君も注意くらいしたらどうだ、マスターが倒れたら藤丸にも影響が出るだろう」
「いやぁ、俺は何も言えないですって、先生。人のこと言えない暮らしをしてたもんで」
暖簾に腕押しというやつで、そんなロビンフッドの様子にサンソンは苛立っているようだったが、こっそり離れようとした唯斗の肩を掴んで席に押し付けてきた。
「うっ…」
「マスター。体が資本ということは言わずともよく分かっていますよね?」
「……あ、あとで食うから、サンソンも用事あったんだろ…?」
「マスター最優先です。それとも食べさせてあげた方がよろしいですか?」
サンソンは医学にも精通している。サンソンの言うことを無碍にするわけにもいかないのは確かだが、しかし嫌いなものは嫌いなのだ。
これは逃げられないだろうか、と思っていると、さらに二人、食堂に来るなりこちらに気付いて近づいてきた。
「おや、これはサンソン殿とマスター。どうされました?」
ディルムッドとアーサーだ。サンソンに椅子に座らされている唯斗を見て、やはり気になったらしい。話をぼかすべく、唯斗はすかさず答えた。
「ちょっとな。それよりディルムッドとアーサーが並んで来るのは珍しいな」
「ブラダマンテ殿が私のサインを求めて廊下を徘徊していると聞いてね。あまりそういうことはするべきではない、と思って逃げてきたのさ」
「私もブラダマンテ殿が一騎打ちを求めていると聞き及び…魅力的なお誘いですが、今日はこのあと訓練ですので、事前にお断りと別日の設定をすべく彼女を探していました。アーサー王とは偶然出くわしまして」
どうやら唯斗は自ら退路を断っていたらしい。ロビンフッドが噴きだすのが視界の端に映る。
よりにもよって揃ってしまったサーヴァントたち、そこにラスボスが登場する。
「こら、また野菜を避けているなマスター!」
やってきたのはエミヤだ。唯斗のサーヴァントが集まっているのを見てこちらに注目し、唯斗の皿が見えたのだろう。さすがアーチャー、厨房から唯斗の皿の様子まで見えているらしい。
やってくるなり母親のごとく𠮟りつけてきたエミヤに、アーサーとディルムッドもようやく事態に気付いたようだ。
「おや、マスターは野菜が嫌いだったのかい?単に小食なだけかと思っていたけれど」
「いけませんねマスター。お体に障ります」
「そうだよ、君が倒れたらサンソン殿が卒倒してしまう」
「さすがに卒倒はしない。でもマスター、あなたに何かあれば僕たちも気に病んでしまいます」
アーサーとディルムッド、サンソンの言葉に、唯斗は縮こまる。背後に立つ3人と前に仁王立ちするエミヤ、計4人の圧力に逃げ場がなかった。
呆れたようにしているロビンフッドも当然助けにはならないだろう。
今日は運が悪い日らしい、そう思っていたときだった。
「こらこら、何してるのあんたたち!」
厨房からやってきたのはブーディカだ。恐らくエミヤに用があったのだろうが、会話が聞こえていたのかもしれない。
腰に手を当ててご立腹だ。
「あのねぇ、そんな皆して怒ったらだめでしょ?父親が怒るなら母親は甘やかす、逆も然り!子供に逃げ場を作るのは常識!さては子育てしたことないな〜?」
ブーディカは二児の母だったことも知られているが、アーサーとサンソン、ディルムッドも子供がいた。エミヤは分からない。
生前に子持ちだった3人は顔をそらして気まずそうにするが、母は強しというヤツで、ブーディカは「まったく!」と呆れる。
「…や、俺そんな子供じゃ……」
「年齢じゃないの!誰か一人くらいは庇ってあげるなりフォローしてあげるなりするもんでしょ?まったくもう、英霊が揃いも揃って!」
「いやぁ、このメンバーが怒られるなんて圧巻ですねぇ」
ブーディカに叱られる男英霊4人を見てロビンフッドはおかしそうにするが、ブーディカがじろりとロビンフッドの方も見た。
「あなたも見てたなら助け舟くらい出してあげなさいよ」
「おっと流れ弾かい」
両手を上げてすぐに降参ポーズをとったロビンフッドからブーディカは視線を唯斗のサーヴァントたちに戻す。
まだ何か言いたそうにしていたが、そこに別のサーヴァントが現れた。
「…何をしておるのだ、雑種と愉快な凡百英霊ども」