特異点F: 炎上汚染都市冬木−6
唯斗にとってはこれが初めてきちんと邂逅したサーヴァントである。それは立香も、恐らくオルガマリーとマシュもそうだろう。ダ・ヴィンチを除けばの話だが。
通常、聖杯戦争には7騎のサーヴァントが召喚される。各サーヴァントは、現界に際して不安定な存在をなるべく確立させるため、7つのクラスにカテゴリー分けされて現界する。型に嵌めるということだ。
7つのクラスとは、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーを指す。セイバーは剣に優れた武勇を持つ英霊であり、ランクとしては最強とされる。他のクラスも同様で、アーチャーは弓や銃など飛び道具、ランサーは槍など長尺の獲物を使っていた者、ライダーは戦車や馬など騎兵としての活躍をした者、キャスターは魔術師だった者、アサシンは暗殺者としてのスキルを持つ者、そしてバーサーカーは狂人めいた特徴を持つ者だ。
聖杯戦争ではこの7つのクラスとなるが、他にも英霊には分類があるとされる。
クラスは現界のためのものでもあるが、真名を明かさないようにするという効果もある。有名な英霊などはその弱点や死んだ原因なども分かっているため、迂闊に名を明かすと不利となる。そこで、クラス名で呼ぶことで他のサーヴァントに弱点を見せないようにするのだ。
このキャスターも、真名は別にある。ルーン文字を使っていたことからも、ケルトか北欧の神話に登場する上級の英霊だと分かる。
「敵性反応、消失…戦闘、終了しました…!」
やがてサーヴァントたちが消滅し戦闘が完全に終わると、ロマニと通信を再開した。ロマニは最初こそ英霊たるキャスターに敬意を示す口上を述べたが、「聞き飽きた」とばっさり切られ、キャスターとロマニは本題に入った。
『確認しますが、最後の生存者なのですね?』
「負けてない、という意味ならな。俺たちの聖杯戦争は、いつの間にか違うものにすり替わっていた。経緯は俺にも分からねえ。街は一夜で炎に覆われ、人間はいなくなり、残ったのはサーヴァントだけだった」
やはり聖杯戦争が原因となってこの特異点が生じているらしい。
サーヴァントだけが残されたあと、セイバーが暴れて他のサーヴァントたちを倒していき、倒されたサーヴァントはまるで汚染されたかのように黒くなった。いわゆるシャドウ・サーヴァントという状態だ。サーヴァントの亜種、劣化版である。
キャスター以外は全員この状態と化しており、ここまでにシャドウ・サーヴァントを3体倒した。そのクラスはアサシン、ランサー、ライダーで、残るはアーチャーとバーサーカー、そしてセイバーだ。
問題となった根本を正す、それが特異点解決の糸口となるのなら、セイバーを倒す必要があった。
「今の俺ははぐれサーヴァント状態だ。仮契約としてどっちかをマスターにしてぇんだが…」
キャスターは唯斗と立香を見比べる。それに対して、オルガマリーが口を開いた。
「現状、契約を認めているのは藤丸立香だけです。本来、英霊との契約は極めて重要な行為。ほいほい許すわけにはいかないの。ここは藤丸立香が契約なさい。カルデアのバックアップがあるから、一人で数体のサーヴァントと契約することは可能よ」
「なんだ、そうなるのか。そこのイケメン坊主の魔力量なら暴れられると思ったのによ」
キャスターはそう言うが文句はなさそうだ。マシュに的確な指示を出す立香のこともきちんと評価しているらしい。
「特異点の原因があるとしたら、大聖杯だろうな。そこ以外ありえない」
「でもそこには、セイバーがいるのですよね」
「そういうこった。アーチャーとバーサーカーもな」
キャスターはすでに特異点の原因を突き止めているらしい。オルガマリーはここまで来たら解決する気になったらしく、このまま一同はキャスターの道案内で大聖杯とやらのところへ行くことになった。
まさに強行軍だが、じっとしてても恐らく向こうから来てしまうかもしれない。それならこちらから攻める方がいいだろう。