死界魔霧都市ロンドン−9


単に立香たちのメンタル面を心配して夜の哨戒に行かせたはずだったが、どうやらビンゴだったようで、立香たちはPことパラケルススと会敵、パラケルススが目的としていた聖杯に召喚されたサーヴァント・シェイクスピアと合流した。

この魔霧は聖杯そのものか、聖杯の影響を受けたものによって出現していることは推測できていたが、この霧から現れたサーヴァントたちは、敵の陣営によって回収されてしまっていたらしい。ジャックなどがそうだったようだ。
危うくシェイクスピアもそうなるところだったが、それを防いだだけでなく、パラケルススも倒すことができた。

事前に唯斗はPがパラケルススである可能性を立香に指摘した上で、宝具を展開される前にライダーを召喚して倒すよう提案していた。立香はその通りにマリーとアストルフォによってパラケルススを倒すことに成功した。
しかしパラケルススは特に新しい情報をもたらすことなく消失してしまったため、敵へと至る決定的な情報は依然として得ていない。

こうして、ようやく立香とマシュは疲れて泥のように帰ってから就寝して、とりあえずは唯斗たちが誘導した通りになった。
アーサーに唯斗も眠るよう言われ、アンデルセンとシェイクスピアが一室を独占したため、引き続きソファーで眠ることになる。しかしその前に、唯斗はアーサーと話しておきたいことがあった。

二人きりで廊下に出て、化粧室に入る。書斎で立香たちが寝ているため、静かに移動した。


「どうしたんだい?改まって」

「……マシュの盾、いや、マシュの中にいる英霊についてだ」

「…、」


アーサーの表情は読めない。だが、唯斗は通信でモードレッドたちの会話を聞きながら、これまで培ってきた予想が確信に変わりつつあった。
唯斗は一時的にカルデアとの通信をミュートにしている。


「マシュと融合したサーヴァントは、円卓の騎士、ギャラハッドだな」

「…どうしてそう思うのかな」

「最初から、あの盾が円卓関係だとは思ってた。意匠から中世初期の欧州のものだと推測できるし、その時代で召喚サークルの確立ができるような極めて高度な触媒になり得るものはアーサー王伝説しか思い当たらない。盾の英霊ってのは聞いたことがなかったけど、ブーディカがマシュを「後輩」と呼んだことや、モードレッドの言動、特に聖杯のことを聞いて確信した」


ギャラハッドはランスロットの息子であり、唯一聖杯にたどり着いた円卓の騎士だ。その高潔な人格は円卓でも高く評価されており、モードレッドが「聖杯はお前らに渡してやる」と言ったときの言葉から理解できた。
アーサーは唯斗の言葉を聞いてから、仕方ない、といったように息をついた。


「遅かれ早かれ、マスターなら気づくだろうとは思っていたけれど…こんなに早くに気づくとは。その通り、人格は消えてしまっているようだけど、あの宝具も、彼女の力も霊基も、ギャラハッドに由来するもので間違いない。彼を知る英霊なら誰でも気づくだろう」

「関係する英霊と、カルデアの上級スタッフだけだろうな、知ってるのは。マシュも立香も知らない以上、俺も知ってることは他人にバレないようにするつもりだけど…ギャラハッドと融合したデミ・サーヴァントなら、もっと強くなれるな、マシュは」

「そのはずだよ。でも、彼女は彼女のあり方で成長していく。決して、ギャラハッドをトレースする必要はない」

「…確かにな」


別にギャラハッドだと分かってどうこうするつもりはない。ただ、はっきりさせておくことで、知らない振りがしやすくなる。
きっと、これは「知るべきとき」があるタイプの事柄だ。そして今は、まだ唯斗の知るべきときではない。だから、まだ黙っていようと思った。


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