死界魔霧都市ロンドン−11


ジキルのアパルトメントから大英博物館までは距離があり、道中はヘルタースケルターとの会敵が多かった。
しかし、動きたかったのは唯斗だけでなかったのか、アーサーもいつもより活き活きと剣を振るっていた。モードレッドはもちろんのこと、唯斗が呼び出したディルムッドも「やっと出番ですね」とやる気満々だった。

ヘルタースケルターを次々とちぎっては投げてロンドンを進み、唯斗もガンドで思い切り吹き飛ばして鬱憤を晴らしていると、ようやく前方に大英博物館の跡地が見えてきた。
ギリシア神殿のような威容を誇るはずの建物だが、完全に破壊され、瓦礫の合間に彫像や円柱が無残な姿を晒している。


「確か、地下の入り口が…この辺に…」

『あれ、唯斗君は時計塔に来たことがあるのかい?』

「あぁ。父のことで尋問されたからな。11歳のとき以来だから…4年ぶりか」

『そ、うか…』


アーサーが助けてくれたあのあと、唯斗は魔術協会に連れられ時計塔へと呼び出され、そこで尋問を受けた。そうして唯斗本人に特段の問題がないことが一応は確認された。


「そんな年齢で尋問なんてされるのかい…?」


引いたようにするジキルに、あっけらかんと唯斗は頷く。


「魔術師なんてそんなもんだ。さすがに、俺の父親みたく子供を触媒に亡き妻を甦らせようなんて話はそう聞かないけど、魔術師の家の子に一般的な幸せを知ってるヤツなんてほとんどいない」

「魔術師ってのはいつの時代も碌なモンじゃねーよな」


モードレッドの言葉は正直その通りだろう。
唯斗は記憶を頼りに瓦礫の合間を捜索し、やがて地下通路への入り口があった辺りに見当をつけた。


「ヴァズィ」


そこに左手をかざして瓦礫を転移させると、一瞬で地下への階段が現れる。アーサーはともかく、初めて見たジキルたちはひどく驚いていた。


「えっ、なんだい今の!?」

「お前、ちゃんとした魔術師じゃねーか、藤丸やジキルと違って」

「ほう、なかなかやるな」


アンデルセンやモードレッドも褒めるが、唯斗は気にせず階段を降りていく。後ろから全員が着いてきたのを確認してから、唯斗は通信を切った。


「マスター?今、通信を切ったかい?」

「あぁ。ちょっと、込み入った話をするからな」


そう言って、唯斗は後ろをついてくるアンデルセンに目を向ける。


「アンデルセン、お前が調べたいのは英霊召喚システムについてだったな」

「そうだ」

「俺は召喚術の名家の家系だ。今の魔術もそうだ。そんで、知りたいことは聖杯戦争と英霊召喚システムのこととなると、それは俺の家系の神秘に関わることになる。俺は正直、魔術師として生きていきたいと思ってたわけじゃねぇから、神秘なんざどうでもいい。でも、カルデアや立香、マシュたちに迂闊に知られるわけにもいかない」

「なるほどな、分かった。一般的な範囲に留めてやろう」


アンデルセンは自分が知れればいいタイプだろう。唯斗はそれを分かっていたため、その回答に頷いて返してから、通路を進み始めた。同時に改めて口を開く。


「カルデアのシステムの元になってるのは冬木の聖杯戦争だ。他の聖杯戦争も、すべて原型は冬木をモデルにしてる。でも、冬木の聖杯戦争もまた、オリジナルがある」

「だろうな。俺はその可能性に至ったからここに来た」

「その仮説は正しい。どう正しいかは、資料の閲覧できるとこまで案内する。多分、俺の知らないところまで時計塔の資料には書いてあるはずだ。っつっても、関連する資料は時計塔内部のあちこちにあるんだけどな」


冬木の聖杯戦争のモデル、それはアーサーがこの世界に来た理由である、ビーストとの戦いを想定した世界の抑止力の理だ。グランドクラスと呼ばれる、聖杯戦争で利用される7つのクラスの最上位にあたるサーヴァントが7騎でまとまって挑むことになっているのが、人類悪であるビーストだ。
唯斗が実家で閲覧できる資料で分かっているのはそこまでで、グランドクラスが誰か、ビーストとは具体的にどのような存在かなどは知らない。時計塔まで来ればそこまで記述があるのではないだろうか。


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