ノスタルジー−7


そうして、いわゆる地元トークをランスロットとしていると、かつてあれだけ嫌っていたフランスやブルターニュのことが、だんだんとそう嫌いなものではなくなってくる。まったく単純なものだ。

それにしても、あれだけ渋っていたにも関わらず、ランスロットのおかげで会話はそれからも続いた。これだけ話せるとは自分でも驚きである。


「…自分で言うのもなんだけど、まさかこんな話せるとは。ランスロットに話しかけてよかった…あ、でも、ランスロットからすりゃ俺と会話弾ませんの面倒だったかもしんねぇな」

「いえ、まさか。戦闘中や訓練中のあなたしか知らなかったので、厳しいお方かと思っていましたが、笑うと大変愛らしい。ずっとお話ししていたいほどです」

「な、に言ってんだ…!」


愛らしい、などと言って微笑んだランスロットに、さっと顔に熱が溜まるのを感じる。まるで女性を口説くようなそれを、なんの衒いもなく言えてしまうのはやはりランスロットだからだろうか。


「…俺は、こんな、誰かと他愛ない話なんて、してこなかった。強いて言えばアーサーとちょっと話すくらいで、自分から、こうやって声掛けんのも初めてで。気の利いたこととか言えねぇし、そういうつまらない自分を分かってるから、必要ない会話を誰かにしようって、思えなかった。迷惑かけるのは嫌だし。なんて、そんなん言ってもランスロットは否定してくれるんだろうけどな」

「当然です、間違った認識は改めていただきたい。あなたとの時間は、とても素敵なものでした」


そう言って、ランスロットはテーブルに置かれた唯斗の手をそっと包むように握った。その手からは甲冑が消えている。


「なぜなら、あなたは全身で私という存在に向き合ってくれている。きっとあなた自身が、出来得る限りで相手に向き合おうとしているからです。確かに他人に関心がないのでしょう。でもそれは、いざ誰かと向き合うときに誰よりも誠実な態度となる。そうやってあなたの懐に入れてもらえることは、ひどく特別なことに感じられるのです」

「…でも、俺も、ランスロットみたいな優しくて懐の広い相手じゃなきゃ、勇気出して話しかけられなかった。ギルガメッシュみたいなのは無理だったと思う」


苦笑して言えば、「彼は私にとっても難しいですね」とランスロットも笑う。
少し極端な例だったかもしれない。

ふと、唯斗の手を包むランスロットの手の厚さと大きさに気付き、その手を持ち上げてしげしげと眺めた。


「あんなでかい剣振り回してるだけあるなぁ。大人の手って感じだ」

「…ふふ、気を許した相手には、年相応に振る舞ってくださるのですね。本当に、愛らしい」


すると、ランスロットはぎゅっとその手を掴み、もう片方の手を唯斗の頬に滑らせた。椅子から中腰になってこちらに身を寄せて、精悍な顔が近づく。


「…、ランスロット…?」

「もう少し、大人の会話をしませんか?私の部屋で」

「名案だなランスロット。大人同士、話し合おうか」


その直後、冷え切った声がランスロットにかけられて、ぎくりとランスロットの肩が揺れる。背後を見遣ると、サンソンが冷気を纏って立っていた。

さらに、唯斗の隣にディルムッドが突如として現れて、ランスロットの隣にアーサーがやってきた。アーサー以外は霊体化していたようだ。


「み、見ていたのですか」

「会話は聞いていなかったが、距離が近づいた時点で接近させてもらった」


サンソンたちはどうやら、会話は聞かないまでも唯斗たちを監視していたらしい。


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