特異点F: 炎上汚染都市冬木−10
セイバーはそう言って、光り輝きながら消失した。座に還ったのだ。
それにしても、アイルランドの光の御子という言葉、アーサー王クラスがセイバーとして召喚されたことから伺えるバランスとしても、キャスターの真名に気付いてしまった。
召喚術の家系だ、それくらい分かって当然である。
彼はアイルランド・ケルト神話に出てくる大英雄、クーフーリンだ。ブリテン島とアイルランド島、それぞれのトップクラスの英霊がいたということだ。
「おいまてそれどういう…うお!?ここで強制送還かよ!チッ、納得いかねえがしょうがねえ!後は任せたぜ!次があるんなら、そんときはランサーとして召喚してくれ!」
セイバーが消えたことで聖杯戦争は終わり、キャスターも座へと帰還することになる。光に包まれながらそれだけ焦ったように言うと、瞬く間に消えていった。
クーフーリンはもともと槍兵として活躍した人物である。魔術師としての姿で今回は現界していたため、全盛期の力を出せなかったのだろう。
「セイバー、キャスターともに消失しました。私たちの勝利、なのでしょうか?」
『あぁ、よくやってくれた!所長も喜ぶはず…あれ、所長は?』
「
冠位指定…その呼称をどうしてサーヴァントが…?」
セイバーの言葉には数々の気になることがあった。オルガマリーもそれに気づいていて、顎に手を添えて険しい顔をしている。立香はやはりというか、明るく「何か気になることでもあったんですか?」なんて聞いていた。
「え…?そ、そうね、よくやったわ、藤丸、マシュ、雨宮。不明な点は多いですが、ここでミッションは終了とします」
あとは聖杯を回収するのみ。マシュはセイバーがいたところに落ちていた水晶体のところへ行こうとする。
そのときだった。
「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適正者。まったく見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ。それに君、一流の予備員。個別に殺そうとしていたのに、まさかレイシフトしていたとは」
「レフ教授!?」
なんと、そこにどこからともなく現れたのはレフだった。長々と喋りながら姿を現した、豊かな髭を蓄えるハット姿の男だ。
そしてその言葉は、普段の彼からは考えられないほど、攻撃的で悪意に満ちていた。唯斗を指して「個別に殺そうしていた」とまで言ったのだ。
「…レフ教授、あんた……」
『レフ!?彼がそこにいるのか!?』
「うん?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか。まったく……どいつもこいつも統率の取れていないクズばかりで吐き気が止まらないな」
薄々感じ取っていた。レフからは、「人の気配がしない」のだ。特に何の気配がするというわけでもないが、それにしても、普通でないのは確かだった。
嫌な予感がし始める。
「レフ……あぁ、レフ、レフ、生きていたのね!良かった、あなたがいなかったら私、これからどうやってカルデアを守っていけばいいか分からなかった!」
「所長、いけませんその男は…!」
マシュは止めようとするも、オルガマリーは聞いていない。カルデアで精神状態が限界だったオルガマリーにとって、優秀なレフは唯一の助けであり、依存しているようだった。
「やぁオルガ、元気そうで何よりだ。君も大変そうだったようだね」
「ええ、ええ、そうなのレフ!予想外のことばかりで頭がどうにかなりそうだった!でも、あなたがいれば大丈夫。今までもそうだったもの。今回も助けてくれるのよね?」
「あぁ、もちろんだとも。予想外のことばかりで頭に来る!その中で最も予想外なのが君だよオルガ。爆弾は君の足下に設置したのに、まさか生きているだなんて」