特異点F: 炎上汚染都市冬木−11


「え…?あの、それ、どういう意味…?」


和気藹々としていたかのように見えたのは一瞬で、レフはすぐに顔をゆがめた。オルガマリーは笑顔を引き攣らせる。

爆弾を設置したという決定的な言葉。あの管制室の惨状が思い浮かんだ。


「いや、生きているというのは違うな。君はもう死んでいる。肉体はとっくにね。トリスメギストスはご丁寧にも、残留思念になった君をこの土地に転移させてしまったんだ」


あのとき適応番号が呼ばれたのは唯斗と立香だけだった。マシュは契約サーヴァントの枠として飛んでいる。気にならなかったわけではなかったのだ。いったいどうやって、オルガマリーが特異点Fにレイシフトしていたのか。
なぜなら彼女はレイシフト適性がなく、それさえあれば本来なら彼女こそ先陣を切ってレイシフトするような器だ。

レフの説明は道理に合っている。死んで肉体を失ったからこそ、レイシフトができるようになったということだ。


「…オルガマリー所長は、肉体を失ったことで適性なしの状態ではなくなり、それでレイシフトができた…つまり、カルデアに戻っても…ってことか」

「さすが召喚術の名家だ。やはりこの手の話は得意分野かね」

「え……え?カルデアに、戻れない?」


レフは徐々に絶望の色に染まっていくオルガマリーに冷酷な笑みを向けた。

そして訥々と、唯斗が多くを端折ったことを説明し始めた。懇切丁寧に、オルガマリーはもう死んでいるのだということを。

本来、死とは瞬間的な事象だ。そして幸いなことに、自分が死んでいるという状態を自覚することは、死という定義の前にあり得ない。自分の死というものをはっきりと自覚させられるなど、なんと残酷なことだろう。


「生涯をカルデアに捧げた君のために、せめて今のカルデアがどうなっているか見せてあげよう」


するとレフはそんなことを言った。そして聖杯によって、大規模な空間の接続を行う。レフとオルガマリーのすぐ正面に現れたのは、時空の切れ目と、その先に輝くカルデアスだった。


「な、なによあれ、カルデアスが真っ赤になってる……?嘘でしょう……?」

「本物だよ。君のために時空を繋げてあげたんだ。聖杯があればこんなこともできるからね。さあよく見たまえアニムスフィアの末裔。あれがお前たちの愚行の末路だ。また君のいたらなさが招いたことだ」

「違う、私のせいじゃない、私は失敗なんてしてない、私は死んでなんかない…!私のカルデアスに何をしたって言うのよぉ…!」

「君の、ではない。まったく、最期まで耳障りな小娘だったなぁ、君は」


ついにオルガマリーはヒステリックな声を上げた。彼女のヒステリーはいつものことだったが、それは必ずしも彼女のせいではなかった。

すると突然、オルガマリーの体が宙にふわりと浮かび上がった。


「なっ、体が宙に…!」

「言っただろう、そこは今カルデアに繋がっていると。最後の贈り物だ。君の宝物とやらに触れさせてやろう」

「なに言ってるの、レフ?私の宝物って……カルデアスのこと?」


徐々に空間の切れ目へと浮かんでいくオルガマリー。それを呆然と見る立香は、隣で唯斗にそっと問いかけた。


「…唯斗、いったい、何が起きてるんだ……所長は、本当に…?」


普通に日本で生きてきたのなら、人の死に触れる機会はそうない。爆発した管制室は遺体など見る影もなかったし、この街には実際に人が消えている。明確に今、人が死のうとしているということに、愕然としているようだった。


「…あぁ、彼女はもう死んでる。思念体が特異点でだけ受肉しているようなものだ。でもこの空間を作り上げたセイバーが消えた以上、ここは消えるし、所長がカルデアに戻っても彼女の体は爆発で残ってない」


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