北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムI−2


いよいよ、第五特異点へのレイシフトの日となった。
すでに本来の時空であれば2016年3月末にあたる日だが、この間に戦力も十分増強され、満を持してレイシフトを敢行する。

つい最近、立香が突如として長い間眠り続けるという事態に陥りカルデアが騒然としたものの、どうやら夢の中で疑似レイシフトのような状態になっていたらしく、その間にまた別の英霊と縁を結んだと言っていた。
けろりとする本人をよそに唯斗は正直かなり肝が冷えたが、隣で元気そうにマシュと並ぶのを見て、とりあえずは目先のレイシフトに集中しようと切り替える。


「今回の特異点は北米大陸、極めて大きな規模のものだ」


ブリーフィングにて、管制室の一番上部でロマニが地図を示す。
観測された特異点はほぼ北米全域、基本的には現在の米国のアラスカを除いた本土領域に相当する。


「ちょうど二人の別行動方針が活きてくるだろうね」

「ちょっと不安だけどね」


ロマニが言う通り、今回から唯斗と立香はできる限り別行動をとるようになる。
第四特異点で、立香がひとりでも十分やっていけることが証明されたこと、唯斗が危うく魔霧によって致命傷を負いかけたことなどから、リスク回避と効率化のために分かれて行動することができるようになった。

もちろん、二人で行動する方が合理的であればそうする。あくまで選択肢の一つだ。
それでも少しだけ不安そうにする立香とマシュに、ロマニは安心させるように笑う。


「とは言っても、マシュがターミナルポイントを設置するまでは原則として一緒に行動することが望ましい。ただし、それに囚われ過ぎないこと。そして、退避行動は各個人に集中すること。残る3つの特異点の敵もきっと強大だ、逃げるときは自分のことだけ考えるように」


そのために唯斗はアキレウスを召喚したのだ。
これからは、逃げるときは唯斗も立香も互いを意識せず、自分の身を最優先する。


「唯斗君、この時代について何か意見はあるかな」

「意見っつってもな、これまでの会議で一通り出したけど…やっぱ気になるのは、知的活動が全土に見られることだな。この時代、合衆国は東部13州に限られていた」


レイシフト先は1783年の北米。当時、英領13州が英国との間で独立革命戦争を起こしている。
もちろん全土にインディアンが点在しているし、スペインなどの入植者もいるが、正史と様相が異なるようだ。


「特にルイジアナ以西、まだ未開の地だったこの領域でも東部並みの活動が見られるのはおかしい。一方で、大西洋が静かすぎる。独立戦争が正史と異なる有様になってるのは間違いない」

「ドクター、レイシフト先は中央部南寄りでしたね。マスターと唯斗さんで東西に分かれて進むべきでしょうか」


東部も西部も様子がおかしいという唯斗の言葉にマシュがそう尋ねるが、答える前に唯斗が口を開いた。


「交戦勢力がいる可能性が高い以上、まずはその詳細を確かめないと、迂闊に敵味方を識別されるわけにはいかない。それにこの時代はすでに銃火器の時代、威力も精度も未熟だけど、マスケット銃を始め飛び道具は現代に近いから、隠密行動がベターだろ」

「確かに…そうですね、今回の情報収集フェーズはより慎重にいきます」

「僕の出番はいったい…まぁ唯斗君が頼もしいのはいつものことか。さあ、早速準備しよう」


レイシフトが始まれば状況を俯瞰して分析するのはロマニにかかっている。
それを全員が理解しているからこそ、ロマニが頼りないとは、そこまで思っていなかった。あくまでそこまで、だが。


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