北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムI−3


いつも通り、立香とマシュはカルデアスの下部に鎮座するコフィンに向かうが、唯斗とアーサーは待機となる。
唯斗はレイシフトスーツを着用しているものの、まだ管制室に残っていた。先に立香がレイシフトして、第四特異点のようなことがないよう、大気組成などを確認するのだ。

まず立香とマシュに対するプログラムが始まり、実証が開始される。

唯斗と隣に立つアーサー、ロマニ、そしてダ・ヴィンチが固唾をのんで見守る中、二人のレイシフトは無事に成功し、通信が繋がる。


『レイシフト、無事完了しました。問題ありません。バイタルは正常ですか?』

「立香君もマシュもバイタルは正常だ。周囲に変わった様子はあるかい?」

『特にありません』


立香が答えて、マシュも索敵を終えて『敵性反応ありません』と応答した。どうやら今回は特に問題なく現地に着地できたらしい。

しばらくはシステムのクールダウンのために待機するが、これなら最短での追加レイシフトが実行されるだろう。

ほっとしていると、突然、ロマニがホログラムのモニターを見て鋭い声を発する。


「いや、そこから北の方角に反応、どうやら大規模戦闘が起きているようだ!」

『ほんとだ、音がする…見てきます!』


立香が応じて、マシュと二人で戦闘地帯へ向かう。
カルデア側ではこうやって見えていたのか、と興味深く思いつつ、二人が赤い点の群れに近づいていくのを見守る。それにしても数が多いが、動き方に差があり過ぎる気がした。


「アーサー、どうやら二つの勢力が交戦してるみたいだけど、片方があまりに前近代的過ぎないか?」

「そうだね、組織だった動きとしては、どうにも差が大きい。文明レベルに差があるのか、指揮系統がすでに崩壊しているのか…いや、敗走しているようにも見えないな。元からこう動く勢力なんだろう」

「覚えは?」

「ケルト系や北方ゲルマンに通ずるものがある、っていうのが僕の所感だ」


指揮官でもあったアーサーがこう答えたのだ、恐らくそのどちらかと見ていい。そしてどちらも、近代北米にいるような者たちではなかった。


「マシュ、映像送れるか」

『はい、唯斗さん』


ロマニに割り込んで通信に呼びかけると、マシュが映像を送ってきた。やや乱れているが、時代を跨いでいるにしてはかなり鮮明だ。


「やっぱり、片方はケルトの意匠が見られるな」

『ケルト、ですか…もう片方は…っ!先輩、あれは、バベッジさんです!』


息を飲んだマシュが送った映像では、もう片方の勢力に奇怪なロボットが見えた。
確かに第四特異点にいたバベッジのロボットに似ているが、似て非なるものだ。それは立香も同意見だったらしい。


『マシュ、あれはバベッジじゃないよ。何かは分からないけど…』

「そうだな、バベッジとは関係がないわけじゃないんだろうけど、いずにせよこの時代からすればオーパーツだ。片や時代遅れの前近代、片や未来のオーパーツ。開幕早々とんでもないな」

『っ、敵性ロボット兵団、こちらを補足、攻撃行動を開始します…!』

『マシュ、戦闘だ!』

『はい!』


文明的でないケルト軍団に対して未来的すぎるロボット軍団。アンバランスにも程がある。いったい、独立直前のアメリカで何が起きているのか。

しかしいずれも、立香とマシュの敵ではない。サーヴァントが相手でなければ、すっかり強くなったマシュの前にバタバタと倒されていく。
ロボット軍団、ケルト軍団と双方との戦闘を済ませた立香たちだったが、最後、突如として砲撃が始まった。後退したロボット軍団によるものだ。


『先輩!!』


マシュの悲鳴じみた叫び声とともに、立香のバイタルが急低下する。まさか直撃したのか。
一応、礼装のおかげで人間の攻撃に対してはさほど致命傷には至らないものだが、それにしても直撃はまずい。


「ッ、ロマニ、」

「大丈夫、体は無事だ。軽傷ではないけれど、術式スクロールで足りる。マシュ、立香君を落ち着いた場所に運べるかい?」

『はい、どうやら砲撃してきたロボット軍団に随行する、人間の兵士…恐らく独立軍でしょう、その人たちが私たちを保護してくれそうです』

「よし、じゃあそのキャンプの座標に俺とアーサーもレイシフトしよう」

『お待ちしています、マスターの治療もしたいので…!』


被弾はしたものの、現地の人間と合流できそうだ。ロマニがそこまで焦っていないことから、立香も命に別条はない。

ダ・ヴィンチがすぐに準備を開始したため、いよいよ唯斗もレイシフトの段階となる。


「行こう、アーサー」

「うん、ようやくだね、マスター」


第四特異点ではほとんど役に立たなかった。北米では、役割を全うしたい。


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