北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムI−5
フローレンス・ナイチンゲール、イングランドのジェントリ階級の生まれで、両親がイタリア旅行中にフィレンツェで生んだことからフローレンスと名付けられた。
近代看護学を大成させただけでなく、医療統計学に端を発する統計学そのものを生み出した人物の一人とされる。
たとえば、インフルエンザワクチンの有効率が90%だとしたとき、普通の数学的統計学においては「90%の人がワクチンによってインフルエンザにかからない」と定義できるが、医療統計学においては、「インフルエンザに感染した人の90%がワクチンを打っていれば感染していなかった」という定義になる。
医療・医学の文脈で出てくる統計数値は、必ずしも数学的な価値観と一致しないが、このような統計学的な差異こそナイチンゲールの功績と言える。
「ありゃクラスはバーサーカーだな。まぁ、あの時代にあれだけの功績を女性ながら成し得た執念はバーサーカーかもしれないな」
『この特異点でも、現地のサーヴァントを味方にしていく必要があるわけだけど…どうだろう、そちらの彼女とか』
「立香の出番だ。俺はそういうの向かない」
一通り治癒魔術を終えると、唯斗に丸投げされた立香は「他人事だと思って…」と言いつつ、起き上がってナイチンゲールに声をかける。
「あの、ナイチンゲール」
「なんでしょう。今忙しいのですが。元気になったのなら早く出て行ってください」
「もしも、ここにいる人だけじゃなく、これからたくさん出てくるだろう患者も含めて、丸ごと治療する方法があるとしたら、どうする?」
「……今、なんと」
立香のアプローチの意図に気付いたマシュは、すかさずフォローに入る。
「もうお気づきでしょう、これは普通の戦争ではありません。これはどちらかが絶滅するまで続く戦争、どれだけ治療してもそれを上回る数の人々が患者になります」
「なるほど、戦争を発生させる病巣を根本から刈り取ることでまとめて救う、ということですね」
「そうです、私たちはそのためにこの時代にやってきました。そしてあなたもサーヴァントとして、きっとそのために召喚されたのです」
「…分かりました。この時代に巣食う病巣を切除する、合理的な手段です」
意外と話が通じるバーサーカーだ。ほっとしたような立香とマシュだったが、そこに、外から悲鳴じみた声が飛び込んできた。
「敵襲だ!!ほらほら起きろ、機械化兵団はいない!早く応戦しろ!!」
「早速のようですね」
ナイチンゲールはすぐに立ち上がると、テントを勢いよく出て行く。やると決めたら猪突猛進なところはまさにバーサーカーといったところか。
「ナイチンゲールさん!行きましょう、先輩!」
「うん、行こう!」
立香も起き上がり、マシュとともに走り出す。
唯斗はアーサーとともにそのあとに続いた。すでにテントの外では混乱になっており、キャンプに迫るケルト軍団に対して怯えているようだった。圧倒的に戦力が足りていないのだ。
「立香、召喚サークルができるまではとりあえず一緒に行動するぞ」
「分かった!」
立香のそばで攻撃を防ぐ結界を展開するのが唯斗の役割だ。
キャンプを出るとすぐ、前方から迫るケルト軍団が見えていた。アーサーとマシュが先行していたナイチンゲールを追って走り出し、合流して敵を薙ぎ払っていく。あっと言う間に、見えていた数の半分以上が倒れた。
「消えてる…やっぱ魔術によるものか」
「この数を魔術でってことは、やっぱ聖杯はケルト側にあるのかな」
「そう考えるのが自然だな」
二人が敵を薙ぎ払っていくのを見ながら、唯斗は立香と話す。やはり立香も大勢の判断が早くなった。