北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムI−6


キャンプに接近していたケルト軍に対して、マシュとアーサー、ナイチンゲールの3騎のサーヴァントが押し返したが、相当な数がいるようだ。
さすがに数が多すぎたのか、相手が止まるとこちらも深追いできず、膠着状態に陥る。

マシュたちが戻ってきて、戦線が停滞したと報告を受ける。


「マスター、戦況は膠着しました。彼らにとってサーヴァント戦は初めてなのでしょう」

「テントに届くことはなさそうですが…」


ナイチンゲールは相手の射程距離にキャンプが入らないことを確認するも、ふと眉をひそめた。アーサーも同様で、すぐにロマニからの通信も入る。


『敵性サーヴァントの反応がある!数は2騎!』

「ケルト側の敵性サーヴァントっつったら……嫌な予感がするな」


唯斗が呟いた直後、一同の目の前に一瞬にして距離を詰めてきた2騎のサーヴァントが現れた。
砂埃すら立てずに戦場に着地してみせたその鮮やかさは、歴戦の戦士然りとしたものだ。


「王よ、見つけましたぞ。どうやら彼らがサーヴァントのようです。戦線が停滞するのも無理はない。今こそ我らの出番です」


二人のうち、半裸の精悍な顔つきの男がそう言った。その端麗な顔は見慣れたもので、唯斗は拳を握りしめる。
こういう日が来ることを、予想はしていたのだ。カルデアにいるサーヴァントが敵性サーヴァントとして現れる特異点を。


「さすが我が配下ディルムッド・オディナ。君の目はあれだな、そう、例えるならハヤブサのようだ」

「滅相もありません。あなた、フィン・マックールの知恵に比べれば」


戦場に現れたのは、ディルムッドとフィンだった。
フィオナ騎士団の団長であるフィン、騎士団の一番槍であるディルムッドの二人は因縁の仲でもあるものの、強く信頼し合った古代ケルト指折りの戦士だ。


「ははは、謙遜はよせ。君の審美眼は確かだろう。グラニアを選んだのもそれを証明している」

「い、いや…それはその…ええと…」

「すまない、冗談だよ冗談!少したちが悪かった!さて、それでは戦おう」


…少し癖のあるタッグのようだが、サーヴァントとして現界した彼らは、生前のように並び立っている。それは、ディルムッドの願いでもあったのだろう。


「…唯斗、」

「問題ない。むしろ性能が分かってるのは有利だ。ただ…あいつを倒すまで、この特異点にディルムッドを呼べない可能性があるな」

「え…」


気遣うように声をかけてくれた立香に言うと、驚いた顔を浮かべる。その可能性は思い至らなかったようだ。
世界が同じ存在の重複を許容できるのか、それは極めて曖昧だった。そして唯斗の見立てでは、それは不可能だ。


「それより、来るぞ。マシュ、ナイチンゲール、アーサー、赤い方の槍は魔術効果をすべて打ち消すものだ。黄色い方で受けた傷は、あの槍が壊れるかディルムッドが特異点から消失するまで癒えることはない。気をつけろ」

「ほう、よく知っているな。俺と過去に契約したことがあるのか、人類の最後のマスターよ」

「現在進行形で契約中だ」

「そうか。座の記録を共有しているわけではないが…あぁ、そうだな、良いマスターなんだろう。全力で行かせてもらう」


ディルムッドはそう言うと地面を蹴って飛び出し、すぐに目の前に現れた。
瞬時にマシュが盾で弾き、ナイチンゲールの銃弾が連続して放たれる。それを避けた先に、アーサーが斬り掛かった。

やはりこの場で最も強敵なのはアーサーだ、ディルムッドはまず黄色い槍でアーサーに向かった。
アーサーはその槍を弾き飛ばしたが、すぐ脇腹に向かってディルムッドの赤い槍が迫る。それを咄嗟に剣で受け止めた瞬間、アーサーのエクスカリバーにかけられた「風王結界」が解かれ、エクスカリバーが姿を現した。


「その剣は…!」

「封印を解く手間が省けたよ」


アーサーはそう言って、エクスカリバーから魔力を放出する。あの剣には二重で魔術封印がかけられているため、一度の攻撃では手前の風王結界しか敗れない上に、その下のアヴァロンはただの拘束魔術、むしろ魔術効果を無効化する方が不利になる。
ディルムッドはエクスカリバーを見てすぐにアーサーの正体に気づき、すぐに距離を取った。そこにマシュが畳みかけるが、ディルムッドはサーヴァントより先にマスターである唯斗たちを攻撃することを選んだ。

ディルムッドは目にも留まらぬ速さでこちらに迫り、アーサーを無力化するべく、唯斗に向けて槍を向ける。
魔術師である唯斗に対しての攻撃であるため、当然、赤い槍がこちらに向かってきていた。
普通、騎士であればこのようなことはしないのかもしれないが、ケルト神話の騎士は必ずしも中世ヨーロッパの騎士道の騎士とは一致しない。戦士と言った方が正しい。勝利こそが重要だった。


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