北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムI−10


キャンプから南東へと移動する間、マシュたちとブラヴァツキーが話していたところによると、ケルトの侵攻によって東部13州は陥落し、西部合衆国は西海岸へと移動、かろうじて均衡を保っているらしい。
合衆国が滅亡することだけは避けなければならないため、本来であれば合衆国側につくべきところだが、その目的はこの特異点の正史からの切り離しであるため、カルデアの目的とは相反する。

足に強化をかけてアーサーとともに歩くことしばらく、ようやく立香たちが目的の要塞、現代のコロラド州の州都デンバーにたどり着いたことが通信で分かった。


「…大統王?」

「また…すごい感性だね」


聞こえてきた役職名はとてもまともでないものだったが、このようなことをする時点でまともさは期待できない。
要塞から離れた位置で止まり、それ以上の接近をせずに待機し始めると、要塞に入った立香たちが大統王とやらに謁見するホールに案内される。
該当するサーヴァント反応を感知したロマニも訝しむ中、ついに立香たちの目の前にその人物が姿を現す。


『率直に言って大義である!みんな、はじめまして、おめでとう!』


ロマニが転送してきた立香たちの通信映像には、原色のヒーロースーツのようなものに身を包まれたライオンが出現した。巨体はまさにアメリカらしいライオンで、唯斗もさすがに唖然とした。


『あ、あなたが…アメリカ西部合衆国を支配する王様、なのですね?』

『いかにも。我こそはあの野蛮なるケルトを粉砕する指名を背負った、このアメリカを統べる王、大統王トーマス・アルバ・エジソンである!』

「は!?エジソン!?」


ナイチンゲールやブラヴァツキーなど、19世紀の人物が続くため、エジソンが現れたこと自体に疑問はないが、まさかエジソンがライオン姿で出てくるとは思わなかった。
もはやなんでもありだ。


『単刀直入に言おう。四つの時代を修正した力を活かして、我々とともにケルトを駆逐せぬか?』


ライオン姿であることを些事と一蹴したエジソンは、立香に対してそう打診した。
ここからが本題だ。実際問題、アメリカの維持が特異点修復の絶対条件なのは確かだ。


『ケルトを駆逐する理由は?』

『むう、口にするまでもないことだと思うが…奴らは時代を逆行している。アメリカは知性と理性の国だ』


しかし立香は冷静で、あえてその質問をした。
そこからエジソンが語るところによると、エジソンは膨大な数のケルト軍に勝つため、国家体制を刷新し機械化兵団を増産、数で勝負したとのことだ。
しかし課題は指揮官不足、サーヴァントにはサーヴァントしか対抗できないにも関わらず、合衆国側のサーヴァントはエジソンとブラヴァツキー、カルナの3騎。他のサーヴァントは大陸に散っているが、合衆国側につく素振りはないそうだ。
あのインディアンのサーヴァントが思い浮かぶ。必ずしも米国を助けたいと思う者ばかりがこの大陸に召喚されるわけではないだろう。


『二つ、尋ねてもよろしいですか』


そこに、ナイチンゲールがエジソンに尋ねた。エジソンは快くそれを促す。


『一つ目の質問です。ここに到着するまで何度か機械化兵団を見ましたが…あれはあなたの発案なのですか。あなたの言う新体制の目指すところだと』

『うむ、その通りだ!国家団結、市民一軍。老若男女分け隔てない国家への奉仕!いずれ、すべての国民が機械化兵団となってケルトを、侵略者を討つだろう』


どうやらあのロボット兵は元々人間であり、エジソンは国民を機械化して兵力とする予定らしい。ロボットとなって、より合理化・効率化するのだろう。


『…では二つ目の質問です。いかにして世界を救うつもりなのですか』


続くナイチンゲールの質問には、まずマシュが答えた。


『それは、聖杯を回収して時代を修復すれば達成されます。ケルト軍から聖杯を奪還すれば、あとは私たちで…』

『いや、時代を修復する必要はない』


しかしエジソンはそう言い切った。ブラヴァツキーがキャンプで言っていたことが思い出される。時代を切り離すという、特異点Fでこちらの世界のアーサー王が言っていたことだ。


『聖杯があれば私が改良することで時代の焼却を防ぐこともできよう。そうすれば、他の時代とは異なる時空にこのアメリカという世界が誕生することになる』

『他の時代はどうなるんだ?』

『滅びるだろうな』


エジソンの言葉に、立香は静かに問いかけた。立香もエジソンの主張をすでにある程度理解しているのだろう。
すげなく返したエジソンに対してマシュは口調を荒げる。


『そんな、それでは意味がありません!』

『何を言う。これほど素晴らしい意味があろうか。このアメリカを永遠に残すのだ。私の発明が、アメリカを作り直すのだ。ただ増え続け、戦い続けるケルト人どもに、私の発明こそが人類の光、文明の力なのだと示すのだ』


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