北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムI−11
典型的なアメリカ人であるエジソンらしいと言えばエジソンらしい。
歴史の浅いアメリカは、近現代史において、常にこのようなスタンスを貫いてきた。
エジソンはサーヴァントとして本能的に思うところの世界の救済というところに思いはなく、アメリカだけを救うことに満足している。
「…究極のユニラテラリズムだな」
『唯斗…?』
『ほう、もう一人いたか。報告にあったもう一人のマスターだな』
ユニラテラリズム、アメリカの孤立主義を示す言葉だ。一国主義ともいう。多国間で協調することをマルチラテラリズムと言って、現代の国際社会はこちらにあたる。
「さっきからケルトを野蛮だなんだと言ってたけど、現代アメリカ文明にアイルランド文化は切っても切れないものだし、科学はアジアの文明なしに実現しなかった。歴史に敬意のない国の未来は先細りするしかない」
アイルランド移民がアメリカ社会の原動力として機能した部分は非常に多いし、禁酒法時代に黒人が生み出した音楽がジャズだった。インドでゼロの概念が生まれ、中東で因数分解などの数学が発展し化学が生まれ、それらが欧州で科学として大成された。
「何より、自由と人権こそ合衆国憲法の真髄だ。それを捨てて機械化した民衆が暮らすアメリカだ?そんなの、まさにまがい物だな」
『……言うではないか、未来のマスターよ』
『ミスター雨宮の言うとおりです。あなたがそう言うなら、私が取るべき方法はただ一つ』
『そこまでだナイチンゲール。ここでの戦闘は許さない』
ナイチンゲールは銃を構えたのだろう、カルナが警戒を高める。一気に緊張感が増していく中、エジソンは淡々と立香に尋ねた。
『お前はどうだ、藤丸よ。私とともにケルトと戦い、聖杯を奪い取るべきではないか?三分の時間を与えよう』
唯斗はああ言ったが、とはいえ現状は変わらない。圧倒的な兵力とサーヴァントを誇るケルトに対抗すること、そして時代修復に不可欠な合衆国の存続、これらを満たすためにエジソンたちと協力することは合理的な方法ではあるだろう。
しかし、立香は応じなかった。
『答えはノーだ、プレジデントライオン』
『……ほう。裏で何かを策すにせよ、共闘は承知すると思っていたが。その誠実さ、真摯さ、エジソンとしては許すべきなのだろう。しかし、大統王としての私は、お前たちをここで断罪せねばならん』
エジソンのその言葉とともに、大量の機械化兵団が立香たちに襲いかかった。さすがにあの数は捌けないだろう。カルナがいる以上、ひどい目には遭わないとは思っていたが、実際にブラヴァツキーの魔術によって投獄されるだけで済んだようだ。
通信が戦闘音を途絶えさせ静かになったことで、唯斗はアーサーを見上げる。
「あの場でナイチンゲールがエジソン側につくわけがない。立香の選択は正しいだろ」
「そうだね、いずれにしても戦いは避けられなかった。裏切ることを前提というのも、藤丸君には難しかっただろうしね」
「……あとは、様子を見計らって助けに行く必要があるわけだけど…カルナを相手にするのはしんどいな。召喚サークルもない、アーサーと一騎打ちだ。いけるか」
「……倒すとなると少し厳しいね。不可能ではないけれど、あの要塞にも人間がいる、宝具展開もなかなか難しい部分があるし、何よりこの先も長い。マスターの負担を抑える必要がある」
「だよな。立香たちが脱出する時間稼ぎだけするに留めたいけど、あいつらが逃げ出すにあたっての決定打もないんだよなぁ…」
立香たちが確実に逃げおおせるための手段を確保すること、そしてその間にアーサーがカルナを留めておくこと。それはあまり簡単なことではなかった。