北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムII−3
「あんた、距離置くタイプかと思ってました」
「あー…いや、その認識は間違ってない、ただ、カルデアではお前から距離詰めてきてたから、癖で」
「え、俺が?」
きょとんとするロビンフッドの反対側の隣で、ビリーがニヤリとする。
「へぇ〜、グリーンってば結構面食いじゃん」
「いやこっちの俺に言うな」
アウトロー同士、ということもあるだろうが、もともとの性格も合うのだろう、二人の仲は良さそうだ。あだ名ではないそうだが、ビリーはロビンフッドをグリーンと呼ぶ。
軽口を叩いて騒ぎ出すのを見ていると、夜の寒さが足元から這い上がってきて、思わずくしゃみを一つ漏らす。
「…っくし、」
「ん、寒いんですかい?」
「ちょっとな、やっぱこの時代は寒冷だな…」
現代では、このあたりは9月でも20度から30度の気温を保つため、気温が下がりきらない。しかし気温以上に体感温度が下がるのはこの地域で元からの特徴であり、今より寒冷な18世紀末ともなればさらに夜の気温が低いようだった。
すると、おもむろに肩に温かいものがかけられた。緑色のそれは、ロビンフッドの宝具であるマントだ。
そこそこ厚い生地であるため、肩にかけられた状態でもそれなりの重さを感じるが、いつもロビンフッドは絹でも纏っているかのように軽やかに動いている。
その厚みのおかげで、肌寒さが和らいだ。
「…ありがと、助かる」
「まぁ、あんたに風邪引かれちゃ困りますからね」
ロビンフッドは目をそらしてそう言った。
そんなロビンフッドを見て、エリザベートが不満げな声を出した。
「ちょっと、さっきあたしには貸さなかったじゃない!」
「いやあんた敷物にしようとしてたろ!それに可愛げが足りねェしな!」
「グリーン、唯斗のこと可愛いって思ってるんだ?」
「な…ッ!」
「へぇ〜〜?ふぅ〜〜ん??」
捲し立てるロビンフッドに対して、すかさずビリーがからかうように言うと、エリザベートも途端に意地悪そうな笑みに変わってニヤニヤとする。
「会ったばっかりなのに、やっぱ面食い?それとも、カルデアの記録が本能みたいに共有されてんのかな?どっちにしても熱烈だねぇ〜」
「好きな子には特別優しくしちゃうんだ〜?へぇ〜、意地悪しちゃうタイプかと思ってたけど〜」
「うるせぇ!あ〜も〜!違いますからね!」
「俺はロビンフッドの隣、結構落ち着くから好きだけどな」
「ッ?!」
「あっはっは」
顔を赤くして怒るロビンフッドにそう言うと、バッと顔を逸らして反対側を向いた。その隣でビリーが腹を抱えて笑っている。
エリザベートに至ってはもう興味をなくしたのか、「発声練習してこよ」と言ってその場を後にした。自由すぎる。
ラーマに治療を適宜行うナイチンゲールや、こちらの様子を微笑ましそうに見守るジェロニモなど、こうしてみると実に多彩なメンバーだ。余裕があるわけでは決してないが、これまで大きな戦闘があまり起きていないこと、移動時間が長いことなど、普段よりも出だしが緩やかであるため、サーヴァントとの会話が多くなっている。
きっと、唯斗自身がそういうコミュニケーションを取れるようになりつつあることもあるだろう。まだまだ立香に「コミュ障」と呼ばれる域を脱していないが。
しかし、召喚サークルが設置された今、唯斗は立香たちと分かれて行動できるようになる。一緒に過ごすのは、恐らくこれが最後の夜となるだろう。