北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムII−8


「くっ…余の黄金劇場内部で、これだけの膂力だと…!?」

「大胆不敵だが失策だ。お前たちが狙うべきはメイヴじゃなく俺だろうに」


カルデアのクー・フーリンとは、やはり見た目がまったく異なる。禍々しい尻尾のようなものが揺れており、体の厚みもこちらの方が上回っているだろう。
警戒するサンソンは唯斗のそばにさらに近づき、アーサーは一歩前に出た。サーヴァントたちは、クー・フーリン・オルタの強さに警戒心を急激に強くしていた。


「光の御子、クー・フーリン!聖杯の持ち主はお前か!」


ジェロニモはナイフを構えてオルタに尋ねるが、オルタはつまらなさそうに答える。


「あ?そんなもんメイヴにくれてやった」

「ではその力はなんだ!?ここはネロの結界内部だぞ…!」

「私が願ったの!クーちゃんを『王にして』って願ったの!私と並び立てるほどに邪悪で、逞しい王に!」


ネロの結界内部であるにも関わらずまったく弱まった様子を見せないオルタに、ジェロニモは聖杯の持ち主をオルタだと判断したが、本人は否定する。
どうやら、メイヴが聖杯に「このクー・フーリン」を生み出すように願った結果、オルタが出現したということらしい。


「なるほど、聖杯が生み出したのならその強さも納得だ…」

「関係ねぇよ。俺が求めたのはこの状況だけだ。俺は王として覇を唱え、武を振るうと決めた」

「ほう、王と来たか。皇帝たる余が問おう。汝はいかなる手段で政を采配する気だ?」


国王という器では本来ないクー・フーリンだ。オルタともなれば本来、王などなろうとは思わないだろう。しかし本人は王であろうとしている。
それに疑問を感じたのは唯斗だけではなかったようで、ネロはそう尋ねた。


「俺は戦い、殺し、支配する。それだけだ」

「…まさか、それだけか?」

「賢政を行う柄じゃねぇ。そもそも、この土地に住まうはすべて戦士だ」


とはいえ、やはりクー・フーリンはクー・フーリンだ。オルタの語る「王」とはそのような原始的なものであり、文明も民主主義もすべて否定するものだった。


「……ネロ、それ以上語るのは無駄だ。所詮、キリスト以前のケルト文明は弱肉強食の原始社会。それが良い悪いじゃねぇけど、人類がそれを脱却する歩みを否定される理由は一切ないんだ」

「…そうだな。唯斗の言うとおりだ。では、余が王とはなんたるものか、見せてやろう」


ネロは本格的に剣を構えてオルタと対峙する。
アーサーも見えない剣をオルタに向け、ジェロニモやビリーも臨戦態勢に入ったが、その直後、ビリーの銃弾が何者かに弾かれた。
途端に全員がサーヴァントの存在を知覚する。それは、まったく予想外の3騎目。


「…正直言うとね、ここはクーちゃんで十分だとは思ったんだけどね。ま、もう1騎くらい予備戦力で残しておいてもいいかなって。賢いよね、私って!…あぁ、そんな顔しないでクーちゃん。数は時に力となるし、今回は一応、人類最後のマスターの片割れもいるわ」


オルタは呆れたように見ていたが、唯斗は絶句する。まさか、こんなパターンになるとは思わなかった。
いや、まったく想定していなかったわけではないが、可能性は極めて低いと思っていたのだ。


「…俺はあの女と騎士王を獲る。他のザコと人間のマスターはあいつに任せる」

「OK、じゃ、やっちゃって、アルジュナ!」


唯斗たちの前に現れたのは、白い貫衣に大きく流麗な弓を構えた、浅黒い肌の美青年。
アルジュナ、マハーバーラタの事実上の主人公である。
アルジュナの存在をほんの片隅程度には想定していたが、しかし3騎のサーヴァントの一人として現れるとまでは正直思っていなかった。
愕然とする唯斗たちに、アルジュナは矢を弓に宛てながら口を開く。


「…苦しませるのは本意ではありません。どうか速やかに私の役割を全うさせて欲しい」

「マスター。クー・フーリン・オルタは少し次元が違う」


すると、アーサーが小声でそう告げた。固い声音に、唯斗は驚いてその顔を見上げる。隣にいたサンソンも驚いたような気配をしていた。


「…あれは別格だ。神霊級と言ってもいい。加えて、聖杯を持った女王メイヴ、そしてその支援を受けたアルジュナ。数がどれだけいても決して有利になることはない。それぞれに対して適切な相手を宛がわないと、勝てない」

「……アーサーでもあいつは厳しいか」

「クー・フーリン・オルタを倒せてもアルジュナまでは。そして、メイヴとアルジュナの2騎はこのメンバーでは勝てない。マスターは僕のエクスカリバーで魔力を消費することになるからフォローもできないだろう」


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