北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムII−9
あとはどうするべきか、分かるな、という目でアーサーは一瞬だけこちらを見つめてから、ネロとともにオルタを相手取った。
途端に激しい剣戟が始まる。目にも止まらぬ速さで戦いが始まるが、アーサーの言葉と唯斗自身の考えは、一致していた。
このままでは、勝てない。
クー・フーリン・オルタとアルジュナは、匹敵するサーヴァントが必要だ。今この場では、アーサーがオルタと渡り合えるものの、それは唯斗の魔力を使ったエクスカリバーの解放が絶対条件である。
そうなると他のサーヴァントを召喚する魔力は残らず、そしてロビンフッド、ビリー、ジェロニモではアルジュナには勝てない。
「…マスター」
すると、サンソンが振り返った。サンソンもこちらの考えを理解している。自分の出番ではないと理解したのだろう。
「あなたは、マスター藤丸と同様、決断できる人物です。そして同時に、その決断は正しい。それは、あなたの心が正しいからです。何より…あなたが誠意を持って向き合ったサーヴァントたちは、あなたとともにあれたことを、たとえ座の記録に残らずとも、誇るでしょう」
かつて特異点にいたサーヴァントだからこそ、サンソンの言葉は唯斗の胸を打った。ぐっと拳を握りしめて、その痛みが脳を冴え渡らせるのを確認してから、頷いた。
それを見てサンソンは満足そうに笑うと、カルデアに戻る。アルジュナに応戦するジェロニモに、唯斗は呼びかけた。
「ジェロニモ!」
「話は分かっている!ロビン、ともに行け!」
出会ったときから、ジェロニモとはとにかく話が早かった。思考回路が似ているというか、淡々と状況を把握して先回りする考え方が似ているのだろう。もちろん、経験豊富な分、ジェロニモの方が上手だ。単に特異点の異常性に慣れた唯斗でも話が同じ速さでできるというだけだろう。
そんなジェロニモも、僅かだがともにいたビリーとネロも、とても置いていく、ということを簡単にできるような相手ではなかった。しかし、いざとなったら立香に対して自分もそうする覚悟を決めているからこそ、迷いもなかった。
「ジェロニモ!ネロ!ビリー!あなたたちと戦えたことを誇りに思う!…あとは、任せた」
「あぁ、私もだ唯斗。武運を祈る」
「気をつけてね〜」
「うむ!短い間だが、良い旅であった。エリザベートによろしく頼む!」
微笑んだジェロニモ、いつも通り飄々としたビリー、にっこりと笑ったネロ。彼らと最後に目を合わせてから、アーサーとロビンフッドと合流し、ロビンフッドのマントに隠れて姿を隠す。
そしてロビンフッドとともに走り出し、ネロの結界から出て、ポトマック川を渡って西へと走り始める。
アーサーに背負われて、ロビンフッドは霊体化して全速力で逃げ出そうとするが、すでにワシントン周辺は殺気だった敵兵が囲んでいる。
「っ、だめだ、抜けきれない!アーサー、ロビンフッド、アキレウスを呼ぶから宝具で離脱する!」
「いやぁ、あんたも大概すごい人を使役してますねぇ」
あっけらかんとロビンフッドは言うが、あえていつも通りに言い方をしているのだろう。血が滲むほど拳を握りしめていた唯斗のことを、アーサーもロビンフッドも分かっている。
「アキレウス!」
「おう、呼んだかマスター…っと、こいつは良くねぇな」
「とにかく西へ」
「了解」
唯斗のそばに現れたアキレウスは、周囲を敵に囲まれているのを見てすぐに宝具を解放すると、現れた三頭戦車に乗り込む。
ロビンフッド、アーサーとともに同乗すると、アーサーが唯斗をしっかりと抱きかかえた。
「マスターは僕が支える、すぐに離脱を」
「任せな。行くぜ!」
聖なる3頭の馬に牽引される戦車は立ち乗りの馬車であり、ときに音速に匹敵する速度まで加速するアキレウスの後ろでは命綱なしで乗ることは本来できない。
一応サーヴァントであるアーサーとロビンフッドは耐えられるようで、必死に縁に掴まって加速に耐える。
唯斗をアーサーが抱き締めてくれていなければ一瞬で振り落とされているだろう。
一気に馬車は空中に飛び出すと、すでにそこはワシントンDCを離れウェストバージニア州に入っていた。
速度が速すぎてとても眼下の景色など見えないが、空中を疾走する馬車はすでに車で数時間かかる距離を一瞬で飛び去ったようだった。