北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムII−19


エジソンたち西部合衆国とともに、東部ケルトとの戦いがいよいよ始まることになった。
恐らくそれを察知しているであろうケルト軍もこちらへの侵攻を企てているはずで、まともに衝突していては相手の思うつぼとなってしまう。

そこで、首都ワシントンへの攻撃を立香が、合衆国の防衛を唯斗が指揮する形で東西に分かれる作戦となった。
すでにかなり魔力を削られている唯斗よりも、立香の方が万全の体制でクー・フーリン・オルタと戦えるからだ。

南北に分かれ、合衆国に侵攻するケルト軍を北側で防衛する北軍、ワシントンDCに侵攻する南軍とに軍を分割、機械化兵の大半は数が必要な北軍に宛がわれた。
そのほか、北軍にはエリザベート、ロビンフッド、エジソン、ブラヴァツキーが、南軍にはカルナ、ラーマ、ナイチンゲール、スカサハが同行する。

特異点のサーヴァントだけで比べれば北軍の戦力は薄いが、そこを唯斗とアーサーでカバーする。

スカサハの見立てでは三日後に全軍が衝突することになり、恐らく北軍はミズーリ州・イリノイ州方面で、南軍はミシシッピ州・アラバマ州方面で会敵する。どちらも米国東部に肥沃な大平原をもたらすミシシッピ川流域付近が衝突ポイントとなるようだ。

サーヴァントたちは最後の別れとなる挨拶をしたが、例によって唯斗と立香はいつも通りに振る舞う。必ず生きてカルデアに戻ると、互いに言わずとも覚悟を決めていた。

そうして逐一通信で報告をしながら進軍すること二日、夕暮れに北軍はイリノイ州南部、カンザスシティとインディアナポリスの中間あたりに位置する、ミシシッピ川水系の合流地点の平野でケルト軍と衝突した。
ロビンフッドはスカサハに言われたとおり、きっちり6割の兵力を削減してみせたが、それでも無尽蔵に沸いて出てくるかのような数だ。

エジソンの指揮する機械化兵、ブラヴァツキーのUFOのようなものからビームが放たれる宝具、エリザベートによるひどい歌声とサーヴァントたちも攻撃を続け、唯斗もアーサー、アーラシュ、ギルガメッシュによる範囲攻撃を行った。


「フン、我を斯様な戦いに使いおって」

「悪いなギルガメッシュ、ストレス発散と思って頼む」

「……なかなかえげつない言い方をする」


不機嫌そうに宝物庫のゲートから出た魔杖によって広範囲を爆破するギルガメッシュに言うと、ギルガメッシュは途端に面白そうな顔をした。何がえげつないのか分からず首をかしげる唯斗に、アーラシュは苦笑した。


「ストレス発散でケルト兵を爆破しまくるとは、穏やかではねぇなぁ」

「もともと穏やかなヤツじゃないだろ、ギルガメッシュ王は」

「それもそうか」

「不敬」


手に持った石版で軽く頭を殴られる。普通に痛いそれに抗議の意志を籠めて見上げたが、そこに通信が入る。立香からだ。


『こちら南軍、今、モントゴメリー近郊でクー・フーリン・オルタと戦った。負けてはいないけど、ワシントンに逃げられた。この戦いで、カルナがやられて、スカサハも倒されたって』

「……そうか。アルジュナは?」

『アルジュナは、聖杯にカルナとの決着を望んでたみたいだから、カルナがいなくなってやり場のなさそうな感じだった。だから戦って発散してもらった』

「発散……いやそれはいい。で、どうなった」

『償いはするって言って消えちゃった。追いかけることでもないし、今はワシントンに向かって中継のシャーロットを目指してる』


まためちゃくちゃな話だ。しかし、その体当たりこそ立香の美点でもある。
アルジュナは吹っ切れているようで、味方はしないまでも、償うとのことだ。敵の戦力でもなくなったようであるため、事実上削ったと見ていい。
残る敵性サーヴァントは、と思ったところに、その人物がちょうど現れた。


「マスター」


鋭く言って戻ってきたアーサ−が示した先に泰然と佇むのは、禍々しい大きな槍を構えた半裸の男。その肉体はあまたの傷跡が残っていた。


「俺をぶっ倒した連中はどこいった?」

「……ベオウルフだな」


228/460
prev next
back
表紙へ戻る