北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムII−22
唯斗たち北軍は、ベオウルフを李書文が相手取ってくれているおかげでなんとか戦線を維持していた。
南軍も三日目の正午にワシントンに入り、メイヴたちと交戦を開始した。
夜になる頃にはメイヴたちを追い詰め、このままならなんとかなるのではないか、そう思った矢先のことだった。
『唯斗君!気をつけろ!』
ロマニがそう通信でこちらに叫んだ直後、突如として地面が震動し、星が満ちる夜空が広がっていた平原が急速に暗闇に覆われた。空に立ちこめる文字通りの暗雲。稲妻さえ煌めく不気味な空に、地面を裂いて出現したのは、なんと魔神柱だった。
それも、一本だけではない。
「………なんだ、これ」
呆然と呟いたのも無理はないだろう。サーヴァントたちも愕然とし、ギルガメッシュでさえも顔をしかめる。
ディルムッドは即座に唯斗のそばに控え、アーサーも戻ってきた。
ブラヴァツキーは危険を察知していたようで、エジソンを急かしてロビンフッドとエリザベートをこちらに後退させていた。李書文とベオウルフも戦いを止めて、空に立ち上がる28本の魔神柱を見上げた。
『メイヴが、かつて自身が生み出した『
二十八人の怪物』という枠に魔神柱を聖杯で無理矢理押し込めて概念として成立させ召喚したんだ!正真正銘、本物の魔神柱が28体、そこにいる!』
魔神柱を28本も呼び出すにあたり、それを概念として強力に成立させるため、英霊をクラスという枠に押し込めるように、魔神柱を自身の特性に押し込めて召喚したということだ。
いや、もうそのあたりはどうでもいい。
28体もの魔神柱がイリノイ州に出現しているという厳然たる現実だけで、十分だった。
「…ソロモンの魔神柱と同じだ、28体いるという概念が成立している以上、28体同時に倒さないと、倒せない。1体だけでも複数のサーヴァントで戦ってきた相手を、同時に28体倒す…?」
そんなことは物理的に不可能だ。これまでの4つの特異点のうち、魔神柱とは3回戦っているが、いずれも総力戦だった。
しかし、こんなときこそ冷静になるべきだ。息を深く吸い込む。まだ、負けていない。
「……落ち着け。アーサー、ギルガメッシュ、ディルムッド、この魔神柱たちを倒すことは不可能だけど、立香たちがクー・フーリン・オルタを倒して聖杯を回収すれば、こいつらの動力もなくなって時代の修復が始まる。俺たちはそれまで持ちこたえるだけでいい。逆に言えば、持ちこたえられずに合衆国が敗北すれば、時代は崩壊する」
「そうだね、これは防衛戦だ。倒す相手として見なければいい」
「なんとも醜き姿よな」
アーサーもギルガメッシュも泰然としている。さすが王といったところか。ディルムッドも怖じ気づいた様子はまったくなく、唯斗のそばに控えて魔神柱を睨む。
勝算がなくなったわけではない。倒さなければならないわけではないのだ。
「ロビンフッド!エリザベート!ブラヴァツキー!エジソン!持久戦だ!立香たちが聖杯を回収するまで持ちこたえればいい!倒せなくていい、勝てなくていいから、決して負けるな!いいな!」
「…へいへい、了解ですよっと。俺たちサーヴァントが諦めてちゃ、示しがつかねぇな」
「絶対負けないんだから!言われなくてもね!」
ロビンフッド、エリザベートはそう意気込んで魔神柱との戦闘を開始した。ロビンフッドの矢もエリザベートの槍も、魔神柱を傷つけこそするが、すぐに別の魔神柱の攻撃が始まる。
李書文も戦いに加わってくれていて、ベオウルフは積極的にとはいかないが、それでも魔神柱の攻撃に反撃してみせていた。
「出し惜しみはなしだな。アーサー、風王結界の解除を許可する。ギルガメッシュももっとゲートを開いて大丈夫だ。ディルムッドは俺に攻撃してくるヤツをカウンター。あとは…アキレウス、来てくれ」
「あいよ、呼んだかマスター…って、こりゃ…」
そばに現れたアキレウスは、うごめく魔神柱に目を見開いてから、状況の悪さに目線を厳しくする。
「ワシントンで戦う立香たちが勝つまでの防衛戦だ。でも、お前に防衛戦は似合わない。代わりに、暴れてきてくれ」
「…ふっ、了解。実は俺の得意分野なんだな、それは」
「そいつは初耳だ」
珍しく冗談に乗った唯斗に、アキレウスはニヤリと楽しそうに笑ってから、宝具を展開した。
「宝具展開、
疾風怒濤の不死戦車!!」
次の瞬間、アキレウスは三頭戦車に乗って遠く離れた場所で魔神柱をまとめて3本ほど刈っていた。例によってまったく姿を追えない俊足だ。すぐに復活する魔神柱に、さらに槍で攻撃をたたき込んでいく。
アキレウスの活躍に火蓋を切って落としたかのように、一斉に魔神柱も攻撃を始め、アーサーとギルガメッシュも指示通りに攻撃に転じる。
ディルムッドは唯斗に迫る魔神柱の攻撃を防ぎつつ、その魔神柱に攻撃を加えていた。