北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナムII−24
そう言って、ニコラ・テスラはこちらまで大股で近づくと、唯斗の頭をがさつに撫でる。驚いてその手の向こうにある顔を見上げると、存外優しい顔をしていた。
「また会ったな、人類文明の最後の継承者よ。あのときは迷惑をかけた。そして、よく戦った」
エリザベートと同じで、特異点間で召喚されている場合は記憶があるようだ。ロンドンでのことを覚えているニコラ・テスラはそう言った。手を離して魔神柱を見据える大男に、ギルガメッシュは呆れながら声をかけた。
「生意気にも神を自称する近代の人間風情が、また腹の立つ男に呼び出されているとは、なんとも腹立たしいことこの上ないものよなァ」
「ウルク王か。フン、私があの妙な男に召喚されたのはあれを倒すためではない。封じ込めるためだ」
ギルガメッシュの言う「腹の立つ男」、ニコラ・テスラの言う「あの妙な男」が誰のことかは分からなかったが、ニコラ・テスラは魔神柱たちを封じ込めるために現れたらしい。
エジソンは何をするつもりなのか理解しているようで、なんだかんだ、やはり互いによく理解し合っている様子である。
「離れていなさい。
人類神話・雷電降臨!!」
ギルガメッシュとともにニコラ・テスラから離れると、あの地下迷宮で見たものと同じ、ニコラ・テスラの大電流が放たれる。
青白い稲妻が全身から上空に向かって放出されると、魔神柱の表面を舐めるように走る。しかし、弾かれてしまう。
「なに…!?」
「フン、あと一歩のところで詰めが足りん。そんなだから、貴様はろくに伝記も書いてもらえんのだ。ちなみに私は世界レベルで流通しているぞ」
「貴様…!」
どうやら、ただ電力が足りなかっただけらしいが、それだけなのにこの二人は大仰に話す。そして、エジソンは電球に再び電気を集積すると、それを青白いニコラ・テスラの電流に向けて同じように放出した。
「これが真の電気、見るがいい!!」
二人の電力は同調しながら魔神柱の表面を今度こそ焼きながら包み込む。それはまさに電気による檻だ。
しかしそれは封じ込めるのみ、魔神柱は依然として屹立し続ける。通信は二人の高圧の電力による磁場で途絶えていたが、まだクー・フーリン・オルタとの戦闘が続いているのだろう。
すると、アキレウスが戦車に乗ったまま近くに着陸し、唯斗に戦車から呼びかける。
「マスター!あいつが来たぞ!」
「あいつ…?」
この期に及んでまだ誰か来るのか、と思っていると、凜とした声が戦場に響いた。
「神性領域拡大、空間固定。神罰執行期限設定。魔力収束および加速に必要な時間を推定。
消費開始」
その気配は、ロビンフッドも理解したらしい。ここからやや東方の平原で戦ったマハーバーラタの英雄、アルジュナだ。
通信で償いはする、とのことだったが、こういうことらしい。
「よろしければ、今のうちに避難をお願いします。範囲は最小限に押しとどめるつもりですが…何しろこの身を犠牲にしての一撃。手加減はできませんので」
「っ、アーサー!アキレウス!」
言わずともディルムッドとギルガメッシュはカルデアに戻り、唯斗とアーサーはアキレウスの後ろに乗り込む。
アーサーに抱き締められるように支えられながらちらりとアルジュナを振り返ると、アルジュナもこちらをちらりと見ていた。
「…償いになるかは分かりませんが。敵であっても私に敬意を払ってくれたあなたを、必ず守りましょう」
「……ありがとう、アルジュナ。どんな形でも、あなたに会えたことを誇るよ」
「………礼を言うべきは、私です。さあお行きなさい」
「行くぞマスター!」
アキレウスに頷いて返すと、アキレウスは戦車を走り出させる。他のサーヴァントたちは霊体化して迅速にその場を離脱していた。
アキレウスもすぐにその場を離れ、一瞬で魔神柱たちから数キロ離れる。直後、背後から膨大な魔力が放出され、眩く輝いた。神代にアルジュナにシヴァ神が授けた神の兵器による捨て身の大攻撃だ。
その大爆発によって、平原に衝撃波が爆風となって駆け抜けていく。空に立ちこめていた雲すらも吹き飛ばし、急速に星空が広がった。
その衝撃波は戦車にも到達して激しく揺れたが、アーサーに支えられていたために落ちることはない。
そうして、アキレウスが平原に戻って着陸した頃には、晴れた煙の向こうに、魔神柱の姿はなくなっていた。
「本当にやっちゃった…」
霊体化を解いて唯斗のそばに集合しているのか、現れたブラヴァツキーが唖然として平原を見渡す。次々と逃げていた他のサーヴァントも現れて、全員が無事だったと分かる。
アルジュナはもう消えてしまっていることだろう。
戦車からアーサー、アキレウスとともに降りて地面に足をつけると、爆風で削れたようになっており、ここまで爆風を到達させたアルジュナの強さが改めて感じられた。