太陽王と元無気力少年−1


歩いて合衆国を横断するという強行軍を行った第五特異点の修復が終わり、カルデアに戻ってきた頃には、2016年の5月中旬に差し掛かっていた。
相変わらず外は暴風雪となっているが、しかし残すところあと2つの特異点の修復で人理復元が大手となる。

次の第六特異点の特定とレイシフト準備にはまた2か月程度かかると予想されることから、アメリカでの反省を生かしつつ、さらに戦力を強化していくことになった。というか、待っている間にできることはそれくらいしかなかった。

唯斗にもいくつか課題が課せられているが、そのひとつ、火力の増強というところで召喚にチャレンジすることにしていた。すでにバーサーカーを除くクラスの召喚が完了しているため、これ以上の召喚は唯斗に一任されている。少数精鋭というのが唯斗の役割であるため、主要クラスが揃った今、召喚は必須ではなくなっていた。

そこで、まず最初に召喚を行ってみて、火力の高いサーヴァントが来なければ既存サーヴァントによる火力強化という方針にしたのである。

そうして、召喚ルームでロマニとダ・ヴィンチ、立香、マシュとともにいつも通り召喚を行う。

ただ、いつもと違うのは、マシュのバイタルを部屋の外でスタッフがチェックしているということだ。
実は、帰還してすぐにマシュは一時的に昏睡状態に陥り、しばらくそのままだったのである。立香は相当に気を揉んでいたが、つい昨日目が覚めて、すべてのバイタルが正常値に戻った。
ことがことであるため、立香はロマニから何やら話を聞かされたようだが、唯斗は経過の報告だけを受けている。唯斗への説明も、次の特異点までには、とのことだった。

とりあえずはマシュの様子はいつも通りとなり、立香も落ち着いたため、今日は早速召喚となった。

魔術式が青白く輝き、呼応してマシュの盾も光る。前回はアキレウスが来たことから、今回も大物が来るかもしれないと、ギルガメッシュのときのような惨事にならないことを祈りながら待ち構える。

そして詠唱を終えた直後、膨大な魔力の霧が噴きだして部屋に満ちて、視界が曇った。驚く立香たちの声を聞きながら、唯斗は霧の奥に現れた圧力を放つ人物を注視する。いったい誰が来るのか、だんだん霧が晴れてこちらに近づいてくる姿を見つめた。


「我が名はオジマンディアス、余を呼び出したのは貴様か」

「……は、マジで………?」


呆然と、名乗った浅黒い肌の男を見上げる。身長差はアーサーほどではないが、体格が良く、何よりその発する威圧感が極めて強かった。その纏う空気だけで気圧されてしまいそうになる。

低い声を聞いていたロマニたちも驚愕の声を上げる。それもそうだ、オジマンディアス、これまでカルデアには縁がなかったはずの古代エジプトのファラオである。

慌てて唯斗は居住まいを正すと、オジマンディアスの正面に立って見上げる。声が震えそうになるのを堪えながら、その目を見つめ返した。


「俺は雨宮唯斗、カルデアのマスターの一人として召喚を行った。まずは呼びかけてに応えてくれてありがとう。まさか…ラムセス2世に…会えるなんて…」

「唯斗、大丈夫…?」


心配そうに声をかけてきた立香を勢いよく振り返ると、唯斗は珍しく声を張る。


「大丈夫なわけねぇだろ!?ラムセス2世だぞ!?エジプト新王国第19王朝のファラオにして古代エジプト最大の発展をもたらした王の中の王!3300年前の人類文明において、人という生命体の上限を突破した建築の数々!古代ギリシア、ローマ、さらには近代以降の欧州の文明すらその発展の礎とした文明の父たるエジプトにおいて最大の功績を成し、世界史上最古の平和条約であり人類史最初の国際法であるエジプト=ヒッタイト平和条約を締結した神格級の王だからな!?」

「う、うわ…思ったよりめっちゃガチじゃん…」


立香ですら引いたようにするほどだが、こうなるのも仕方ないだろう。あくまで神話の人物であるギルガメッシュ王や、伝説であり史実ではないアーサー王などとは違う、正真正銘の実在した人間だ。それなのに、その偉業の数々は人間離れしたものばかりで、むしろ神話であった方が納得できるほどの人物である。

おおよそ人間一人ができる国家統治として、彼以上のことをできる人間は後にも先にもいないだろう。


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