太陽王と元無気力少年−2


「召喚早々に余を称える言葉の数々を素早く繰り出すとは、こたびのマスターは随分と身の程を弁えている。その名を余が呼んでやる僥倖に打ち震えるがよいぞ、マスター・唯斗」


怒涛の唯斗の賛辞に対して気を良くしたのか、オジマンディアスは唯斗の名前を呼んでみせた。それにしても、不遜な態度のわりにはすぐにマスターと呼んでくれるのだな、と意外に感じた。


「こんなことを言うのもなんだけど、あなたがサーヴァントとしての現界に応じるとは思わなかった。マスターとサーヴァントの関係性はそれぞれとはいえ、その呼称自体に一定の上下関係を想起するだろ」

「これが初めてでもない故な。あぁ、どうやら別の世界線であるようだが…余は通常、唯一敬愛する妻であったネフェルタリの遺品を触媒とする召喚にしか応じぬが、愛するネフェルタリの遺品を暴いた者には等しく死をくれてやっている。聖杯戦争であれば、聖杯を用いて他の愉悦を求めるのも手ではあるがな。いずれにせよ、世界がどうなっているか知った上での現界だ。余が生前成し得なかったことといえば、世界を救うことくらいであろう」


特に不足のあった人生でなかったことは史実からも明らかであったし、本人にとってもそうだったらしい。
その人生を彩った最愛の妻・ネフェルタリの遺品でしか召喚に応じないものの、いざそれで召喚すれば術者を殺すというのだから理不尽と言えば理不尽なのかもしれない。
とはいえ今回はそんな触媒は用意していない。それにも関わらず召喚に応じたのは、これが世界を救うための召喚であると分かっていたからだそうだ。


「しかしだからといって貴様をマスターだと早々に認めるのも余の矜持に関わる。余の力を貸すに値するかどうか、直接確かめてやろうではないか」

「マスターとして相応しいか確かめる…なるほどな、それは道理だ。戦うんだよな?戦力の確認にもなるし合理的ともいえる、やるか」

「……余が言ったことではあるが、貴様少し脳筋すぎるであろう…まぁ良い、悪くない」


オジマンディアス相手であれば、むしろそれくらいさせてもらわないとこちらの気が済まない。気が引けてしまう。サーヴァントを隷属させるつもりなど微塵もないが、隣に立ってもらうというだけでもおこがましく思えてしまう、それだけの相手だった。


「おーいマスター、この気配って…やっぱりか」

「おお、勇者ではないか!」

「久しいな、ファラオの兄さん」


唖然としていたロマニたちを差し置いて召喚ルームに入ってきたのは、アーラシュだった。親し気に挨拶するのを見て、アーラシュの過去の話やオジマンディアスの言葉から察した。


「アーラシュ、前の聖杯戦争でオジマンディアスと会ってたのか」

「まぁな。懐かしい威圧感を感じたモンで見に来てみれば、思った通りだった」


快活に笑うアーラシュを見て、オジマンディアスは表情を緩める。聖杯戦争であれば敵対したはずだが、そういうようには見えない。


「ふむ、勇者もサーヴァントとしているか。なるほど、なかなか見込みのある。なおさら興味深い」

「どうせあれだろ?マスターとして認めるためにテストする、みたいな流れになってるんだろ?」

「見えてた?」

「さっきな」


どうやら懐かしい気配がして、なんて言っていたが、アーラシュにはこの事態がある程度予想されていたのだろう。まったく動揺していないのは元来の性格もあるだろうが、分かっていたことでもあるからのようだ。

すると、アーラシュがそっと唯斗に耳打ちした。腰をかがめて唯斗の耳元に顔を寄せる。


「ちなみに騎士王とはバチバチだから、あまり会わせない方が…」

「聞こえているぞ勇者よ。そしてそれもすでに把握している。聖剣使いもサーヴァントであるとな。まとめて相手にしてやろう」

「あー…唯斗君、いろいろと言いたいことはあるけれど、とりあえずファラオを待たせるわけにもいかない。シミュレーターを貸し切って大規模展開すれば耐えられずはずだ」

「悪いなロマニ、了解した」


カルデアであるため、特異点での戦いのように同時に戦えるサーヴァントの上限などはない。全員まとめてと言っていることから、今後の組み立て方の参考にもするべく、全員で挑むことにした。何やら因縁があるらしいアーサーとの戦いは少し心配だが、シミュレーターを壊さない程度に全力でやるしかないだろう。


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