太陽王と元無気力少年−3
大規模な戦闘になることから、シミュレーターは貸し切り状態となり唯斗とそのサーヴァントだけが利用できる状態になった。室内にはロマニとダ・ヴィンチ、立香、マシュが控えており、廊下にもオジマンディアスを一目見ようと野次馬が集まっていた。それだけの人物なのである。
シミュレーターで用意された空間はフランスを元に設計されただだっ広い平原で、そこにオジマンディアス一人と唯斗たちが対峙している。
こちらは総力であり、セイバーのアーサー、アーチャーのエミヤとアーラシュ、ランサーのディルムッド、ライダーのアキレウス、アサシンのサンソン、そしてキャスターのギルガメッシュである。
対するオジマンディアスはライダーであるため、クラス相性で言えばサンソンが有利となるが、相手が相手だけにあまりそこに拘っていない。
「まさかのライダー被りとはなァ!ライダーとしてどちらが優秀か見せてやるぜマスター」
槍を構えて不敵に笑うアキレウスはすでにエンジンがかかっているようで、同じく戦闘大好き勢であるディルムッドも「ファラオと戦える栄誉、感謝します」と言って槍を構えていた。
アーラシュとギルガメッシュはいつも通り泰然としており、サンソンはやや緊張した面持ちだがしっかりと剣を携える。
そして、アーサーは見えない剣の切っ先をオジマンディアスに向けながら、複雑そうな表情をしていた。
「…アーサー。何があったかは知らないけど、前の聖杯戦争のことは俺には…いや、守るべき人理には関係のない話だ。ベスト出さなきゃはっ倒すからな」
「…当然だとも。相手が誰であろうと、僕はこの剣を、君と世界を守るために振るおう」
しかし当たり前だが、アーサーはきちんとそのあたりはメリハリをつけている。たとえ相手がなんであろうと、後ろにいる唯斗のことを忘れることはないだろう。
まずここで重要なのは、初手における臨機応変な対応だ。最大限に警戒して防御しつつ、攻撃モーションをこちらも畳みかけたい。
『それでは戦闘訓練、これ本当に訓練だからね!いくよ、ようい、はじめ!!』
ロマニがこの期に及んで念を押すが意味はないだろう。事実、号令とともにオジマンディアスは宝具を解放した。
「宝具解放、全能の神よ、我が業を見よ! そして平伏せよ。我が無限の光輝、太陽は此処に降臨せり!
光輝の大複合神殿!」
その瞬間、青空の下に広がっていた草原は壮麗な神殿内部へと姿を変えていた。巨大な列柱と大理石、分厚い金属装甲、輝く黄金と白亜、贅と技術の粋を集めたような大神殿である。
「ッ?!固有結界か…!?」
巨大な神殿のホールのようなそこは玉座の間であり、スタジアムのような広さはネロの宝具である大劇場を彷彿とさせた。同時に、あのアメリカでネロやジェロニモたちを失った戦いを思い出す。あんなことを繰り返さないようにしようと、唯斗は心に誓ったのだ。
通常、固有結界はとにかく術者の思い通りにあらゆる法則が捻じ曲げられる。
治世後半から、続くエジプト新王国第20王朝における歴代の王が「ラムセス」を称した頃にかけて、オジマンディアスはまさに神格化された王となった。それは、ギルガメッシュほどではないにしろ神性を与えているはず。
「ギルガメッシュ、防御魔術展開。アキレウス、宝具を展開してエミヤと空中へ。アーラシュはその位置から攻撃開始、アーサーとディルムッドは遊撃、回避は各自に任せる」
素早く指示を出すと、慣れたように各自がすぐに動いた。ギルガメッシュですら、相手が相手だからかすぐに宝物庫のゲートを開き魔杖を出現させる。
アキレウスは戦車を召喚すると、エミヤとともに乗って上空へと舞い上がる。スタジアムのように広い空間であるため問題なく飛んでいた。
アーラシュは唯斗の近くで大量の射撃を開始、一本の光の矢が数百、数千と分かれてオジマンディアスに降り注ぎ、それを目くらましとするかのようにアーサーとディルムッドが駆け抜けていく。
「サンソンはまだ待機、オジマンディアスの攻撃パターンが分かるまで俺のそばにいてくれ」
「分かりました」
固有結界の中にいるという圧倒的な不利において、遊撃が可能なのはアーサーやディルムッドくらいだ。早々自由にさせられる状況ではない。
「小賢しいことを。
闇夜の太陽船」