太陽王と元無気力少年−5


唯斗は右手を胸元に宛てると、魔力を籠めて令呪を使用する。特異点すら揺るがすアーサーのエクスカリバーによる空間の歪みに、エミヤの固有結界をぶつけてオジマンディアスの宝具を消失させることで、じり貧の状態から脱するのである。

アーサーは唯斗たちから離れてエクスカリバーを天井に向けると、大理石の天井に向けて真名を解放した。大半の拘束が残ったままでの発動だが、固有結界を破る分にはそれで十分だ。

振り被るように剣を天井に薙ぎ払ったと同時に、膨大な魔力の光線が天井に直撃する。途端に、轟音とともに足元が揺れて空間が大きく揺らいだ。


「令呪を以て命じる。エミヤ、宝具展開」

「承知した。宝具解放、無限の剣製(Unlimited Blade Works)


右手の甲が輝くと同時に、エミヤに大量の魔力が送られ、そしてエミヤを起点に固有結界が展開されていく。壮麗な神殿から、荒廃した荒野に無数の剣が突き刺さった不思議な空間へと塗り替えられていく。

侵食という形であるためか、エミヤの空間の中に瓦礫と化したオジマンディアスの空間が残存しており、大理石の円柱や黄金の壁が瓦礫となって浮いていた。やがて空間の広がりはオジマンディアスのいる玉座の辺りまで進んだところで拮抗し、動かなくなる。


「固有結界に固有結界をぶつけるか!」


オジマンディアスはなおも面白そうに笑う。アキレウスたちは空間の突然の崩落によって攻撃を止めており、オジマンディアスから離れていた。

元の状態をかろうじて留める玉座と、完全にエミヤの世界に上書きされた唯斗たちの周辺との間には大量の瓦礫が浮かんでいる。


「サンソン行くぞ、ギルガメッシュはフォロー頼む」

「ええい、英霊使いが荒いと言っておろう!!」


ギルガメッシュはそう言いつつ、サンソンとともに走り出した唯斗に向かって、オジマンディアスが召喚したスフィンクスから放たれる光線に結界を展開してかき消していく。スフィンクスは黄金のマスクをかぶり、体の大半が宇宙でできていた。とんでもない生き物だ。


「アキレウスとディルムッドはスフィンクスをどうにかしてくれ!アーサーとアーラシュはオジマンディアスに攻撃!」


すぐにアキレウスとディルムッドは巨大なスフィンクスとの戦闘に入り、アーサーとアーラシュは先行してオジマンディアスとの直接戦闘に入る。すでに半分以上の空間が崩壊しているため、その権能も落ちていることだろう。

エミヤは宝具の維持に集中しており、サンソンと唯斗は走って玉座へ向かっている。


「なぜマスターも一緒に?!」

「隙を作るためだ、サンソンは暗殺できないしな。任せたぞ…令呪を以て命じる、サンソン、オベリスクの主に留めを刺せ」

「ッ!!」


走りながらさらに令呪を使って、サンソンに命じる。かつてサンソンが処刑を執行したパリのコンコルド広場にあるオベリスクは、エジプトのルクソール神殿においてオジマンディアスが建設したもので、19世紀に当時のエジプト国王からパリ市に寄贈された。

唯斗は足に強化をかけて飛び上がると、玉座にいるオジマンディアスに空中から飛び込む。咄嗟にアーサーが飛び退き、ギリギリまでアーサーに気を取られていたオジマンディアスは驚いてこちらを見上げた。


「っ、貴様、」

「悪いな、オジマンディアス!」

「なにを、」


オジマンディアスに向かって飛び込んだ唯斗は、驚きつつも避ける素振りのないオジマンディアスの立つ玉座に向けて左手に魔力を籠める。


「ヴァズィ!!」


その瞬間、玉座の祭壇は離れた場所に転移して消失し、オジマンディアスは空中に投げ出される。足元の床が消えて落下し始めたオジマンディアスに抱き着くように唯斗はその晒された胴体に腕を回した。


「な、に…?!」

「サンソン、いけ!!」

死は明日への希望なり(ラモール・エスポワール)


サンソンが宝具を展開すると、処刑台が玉座の代わりに現れて、黒い手がオジマンディアスへと伸びてくる。唯斗によって身動きが取れなかったオジマンディアスを突き放して唯斗は距離を取り、オジマンディアスだけが黒い手に捕まった。

すぐにアーラシュが駆け付けて唯斗を抱き留める。


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