神聖円卓領域キャメロットI−3


灼熱の砂漠を西に進むこと数時間、礼装や強化魔術、さらにはダ・ヴィンチが急ごしらえした酸素ボンベによってなんとか歩けているが、すでに序盤から状況は芳しくない。いまだ時代や座標地点が正しいのかも分かっていないが、希望的観測をすれば、エルサレムより南方の砂漠地帯にレイシフトしてきたと考えるべきだろう。西に向かえば地中海沿岸の平野部に出る。そこは緑豊かな地域であるため、都市もあるはずだ。

しかし目標地点を目前にしたところで、砂嵐の向こうに聳える巨大な神殿と、その周りにうごめくスフィンクスの群れに気づいた。


「だめだ、引き返そう。あそこに突っ込むのは自殺行為だ」

「…あの神殿、」

「唯斗君は検討がついているだろうけど、いずれにせよ私たちでは突破できない。まずは別のルートに…」

「っ!何者かが高速接近中!」


古代エジプトを彷彿とさせる四角錐の巨大な建築物は、まるでピラミッドのようだった。大量のスフィンクスを配置しているように見えることからも、あれの主はオジマンディアスなのではないかと唯斗は気づく。
しかしダ・ヴィンチの言う通り、いずれにせよあそこにはたどり着けないし、そもそもカルデアとここは異なる存在だ。味方になってくれる保証もない。

すると、そのピラミッドから何者かが急速に接近してきた。見ると、人間のようだ。


「チッ、先回りされたか。兵士を差し向けているとはさすが太陽王…!」

「目測ですが、敵影およそ10!うち一人は手足を縛られているようです」

「迎撃しよう。でも優しくね」

「はい、マスター!」


いつも通りの指示を出す立香。もうさすがに、唯斗も何も言わない。それに今は、情報を得るためにも人間とコンタクトを取ることは合理的だ。

相手が人間であればさほどてこずることはなく、マシュとダ・ヴィンチ、唯斗によってあっという間に戦闘不能となっていく。その中で、髑髏の面をつけた者たちのうち、一人の面が外れた。


「なっ、私の面が…!」

「…サーヴァント?」

「なに、貴様マスターか?」


どうやら女性らしい人物はサーヴァントのようだ。道理でこの敵だけガンドが効かなかったわけである。向こうはこちらがマスターであることに気づいたようだったが、すぐに背後から声をかけた仲間に意識を戻した。


「申し訳ありませぬ百貌様…!こやつらまっとうな兵士ではありませぬ!それにあの盾の模様、恐らく聖都の…」

「下がっていろ、サーヴァント相手ではたやすく殺され…ていないな。なんのつもりだ、まさか我ら山の民など殺すに値しないと?」


百貌と呼ばれた女性はこちらを鋭く睨みつける。山の民という言葉も気になるが、それより、マシュの盾の模様から「聖都」という言葉を発した。
マシュの盾はギャラハッドのもの、つまり円卓の騎士のものだ。円卓の騎士は、物語の舞台こそ5世紀ごろのブリテン島だが、描いたのは後世の人物であるため、基本的にはキリスト教の物語として描かれる。

ローマ帝国時代のキリスト教である円卓の騎士と、この時代のレバント地方にあった十字軍国家の騎士の模様は異なるものだ。それは、ローマカトリックとしてすでに数百年の歴史が経過していることによる。

そこに引っかかりを覚えていたが、女性は「まあいい」と切り上げようとした。彼女たちの目的はどうやら「女王」なる人物の誘拐だったようだが、その女王らしき人物はすでにダ・ヴィンチが確保していた。


「縛られていた女性はこちらで保護したよ。いやぁ、私ってば抜け目のない天才だからね」

「…!貴様ら、何者だ!オジマンディアスの手の者か!」

「俺は藤丸立香!あなたは!」

「私は百貌のハサン、西の頭目、山の翁の一人だ!」


そして、やはり太陽王オジマンディアスがあの神殿にいることで間違いないようだったが、一方でこの女性も百貌のハサンと名乗った。

ハサン、そして山の翁とくれば連想される人物は一人だが、だからこそ、「山の翁の一人」だという複数の存在をにおわせる表現が気になった。


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