神聖円卓領域キャメロットI−6
そこからは怒涛の展開だった。
ついに玉座に通されて謁見したと思ったのもつかの間、なぜか首が取れかけていたオジマンディアスによく分からない理由で戦闘をさせられ、一通り戦ったところで「さて」と何事もなかったかのように話し始めたのである。
事前にオジマンディアスの情報は共有していたため、戦闘そのものはなんとかなったが、唯斗だってサーヴァント総力戦でなんとか勝った相手だ、正直、格の違いを見せつけられただけだった。
「余はすべて心得ている」
そうして高い位置に座す玉座について、こちらを睥睨しながらオジマンディアスは語り始めた。
「貴様たちがカルデアの者ということ、これまで4つの特異点を修復してきたこと…余をサーヴァントとしていることもな」
「な…ッ!オジマンディアス王!?あなたが従うなど!」
「勘違いするでないぞニトクリス、余があやつを伴っているのであってあやつが余を従えているのではない」
あやつ、と言って唯斗を指さしたのを、それでもニトクリスは愕然として見ていた。
こちらも驚きだ。どうやらオジマンディアスはカルデアのオジマンディアスとある程度記憶を共有しているらしい。
「ふむ、ある程度同期しているのかもしれないね。あり得ない話じゃないさ、カルデアのオジマンディアス王だって過去の現界の記憶を持っていた。理論上無理はない」
ダ・ヴィンチは特に驚いていないし、正直そう言われれば唯斗も納得だ。さすがにリアルタイムではないだろうが、一定の頻度で同期しているのかもしれない。それくらいならできそうな人物だ。
さらにオジマンディアスは衝撃の事実を告げた。なんと、カルデアの到着はあまりに遅く、すでにこの時代を狂わせるはずだった聖杯はオジマンディアスの手にあるという。それがあるならなおさらカルデアの個体と同期できるのも納得だ。あるいは、カルデアのことを知ったオジマンディアスが、カルデアの召喚に応じることでこちらの様子を確認しようとしたのかもしれない。そのあたりはギルガメッシュと同じ可能性もあったが、そもそもギルガメッシュもなぜカルデアに来たのか明確にはなっていなかった。
「なるほどね。つまり君は聖杯によって呼び出されたあと、逆に聖杯を奪ってこのエジプト領を築いた。ということは、君が時代を狂わせた人物ということかな?」
「…いや、それは違うんじゃないか」
ダ・ヴィンチの推測は、十字軍によって呼びされたオジマンディアスが逆にその聖杯を手にして時代を狂わせたことで特異点化したというものだった。よく一瞬で十字軍が呼び出したと推測したものだが、それでは解せない部分がある。
「オジマンディアスは、ここが特異点であることを知ってる。それなら、ここでエジプト領を築いても、たとえ世界征服を目論んでも、すべて無意味だとも分かってるはず。何より、オジマンディアスがいた新王国はシリアあたりまで版図としていたのに、このカナンの地を領土とするどころか、山の民や聖都の民なる勢力を許して国境を閉ざしてる。聖杯を持つオジマンディアスほどのサーヴァントがそうした勢力を駆逐できてないのであれば、むしろそっちこそ時代を狂わせる何らかの要因になってんじゃないのか。そうだとすれば、この古代エジプトが中世中東から弾き出されるのを防いでるとも取れる」
「ふむ、さすが余を召喚してすぐに引くほど賛辞の言葉を述べただけある。些か気味が悪いが、概ね正解だ」
聖杯つきのオジマンディアスなど最強に決まっている、という唯斗の見立てに少し引きながら、オジマンディアスは肯定する。
時代を狂わせるはずだった聖杯は、十字軍が聖地を奪回することで特異点化するはずだったが、その前にオジマンディアスが聖杯を獲得してしまった。しかも、聖都の民という別勢力が、獅子王とやらを据えてエルサレムを破壊して居座っているとのことだ。
本当に、何から何まで特例な特異点である。
そして、この世界の惨状を見てから出直せ、というのがオジマンディアスの意向であり、一通り話を聞いたカルデア一行は、追い立てられるように聖都を目指すことになったのだった。