神聖円卓領域キャメロットI−15
「この正門だけが昼間なのはギフトとやらの力。それなら当然、日中は能力が三倍になるという逸話が効果を発揮してるわけだな」
「その通りです。そして私の前にあなた方は撤退など不可能」
それは誇張でもなんでもない事実だ。しかももっと悪いことに、マシュはガウェインを前に竦んでいる。恐怖だけではない、恐らく中にいる英霊の影響だ。
円卓とは平等の象徴、敵対などもってのほかだ。だからこそ、ランスロットが不義の恋を結んだことで円卓は崩壊していく。戦闘は避けて時間を稼げれば、何やら企んでいるらしいダ・ヴィンチに突破口を開けてもらえるかもしれない。いや、戦っても意味がない、という言い方でもいいだろう。
「…カルデアでは、ランスロットとトリスタンが召喚に応じてくれている。彼らの性質を見ていれば、あなたたち円卓の騎士がこんなことをしているのが理解できない。オルタ化しているわけでもないのに、なぜ」
「っ、そうだ、なんで聖抜なんてことをしてるんだ!?」
唯斗の意図に気づいた立香も、並ぶように隣に立った。マシュは驚いてその背中を見つめ、ダ・ヴィンチはいまだ何やら集中しているように見える。
「最初から、最悪の場合に盾になろうと前に出たあなた、そして女性を守らんとするあなたも。そのうえで聞かれたのならお答えするべきでしょう。あなた方のお名前は」
どうやらガウェインにはこちらの意図もすべて筒抜けのようだ。それも当然だ、踏んだ場数が違う。
「俺は藤丸立香」
「…雨宮唯斗だ」
「私はガウェイン。人理を守らんと、この聖都を築き上げたお方、騎士王にして純白の獅子王、アーサー王に仕える騎士です。永遠の千年王国を築き、純白なる魂だけを救い、それ以外は切り捨てる、ただそれだけの話であり、これは我々の正義に基づくもの。それを拒んだのです、獅子王と我ら円卓の騎士を敵に回したこと、どうかお覚悟を」
「お前たちには負けない!」
「っ、先輩!」
淡々と語るガウェインは剣を振りかざすが、立香はあえて応戦する形をとった。
すかさずマシュは盾で守ろうと間に入ったが、ガウェインの一太刀で突き飛ばされてしまう。
「マシュ!」
慌てて立香は倒れたマシュのそばに駆け寄る。それを見て、ガウェインはため息をついた。
「まったく、嘆かわしい。それでは立香の覚悟も報われないというもの。なぜ、覚悟もできていないのに戦場に来たのです?いいですか、その幼子の母親を殺したのは私です。私の命によって行われる聖抜であり、私が許した殺戮です。あなたが敵意を向けるべきは司令官であるこの私。その道理を弁えない者が戦場に出るなど、我々への侮辱と知りなさい!」
「っ、マシュ…!」
「…聖剣を無辜の民の血で染めた騎士の分際で語るな…ッ!
鉄の人よ、天より来たれ」
素早く詠唱した唯斗によって、立香たちに向けてガウェインが続けて振り下ろした炎を纏った剣は、頑強な結界に防がれた。ブルトン語詠唱によって生じた強固な結界魔術だが、詠唱が短い分アメリカでアルジュナに対して使ったものよりランクが下がるため、対サーヴァントであれば通常攻撃でやっと防げるといったところだ。
すると突然、結界が消えた瞬間にガウェインの懐に突如として人影が現れ、その体を吹き飛ばした。
「驕っているのはそちらだ、サー・ガウェイン!外道に落ちた貴公に、彼女の信条を糾弾する資格はない!」
白銀の髪を靡かせた姿は、ベディヴィエールだ。
ガウェインは吹き飛ばされた先の地面から、背の高いベディヴィエールを見上げ、愕然とする。庇われた立香も驚いて顔を上げた。
「な……に……?あなた、あなたは…!サー・ベディヴィエール!なぜあなたが、あなたが王に反逆するのですか!?」
「ルキウスさん!?じゃないの!?」
「挨拶は後程!今は目の前にいる相手に集中するとき!だってあなたたちは負けていない。実力の問題ではない、あり方の話です。強きをくじき、弱気を助ける。その決断は常に、何より正しいものです。であればこの輝きはあなたたちのために!
剣を摂れ、銀色の腕!」
ここにきて正式にベディヴィエールの真名が明かされたが、まずはガウェインの前から撤退するべきだ。
ベディヴィエールが右腕の宝具を展開したことで、ガウェインをさらに正門へと吹き飛ばし、地面に叩きつける。ガウェインは呻きながらも、ベディヴィエールを睨みつけていた。
その隙に、ダ・ヴィンチが残存勢力を排除していた後方から脱出。
そうして無事、なんとかバギーのところまで撤退することに成功したのだった。