神聖円卓領域キャメロットII−2


「ダ・ヴィンチちゃん…?なんでバギーに…」

「うん?ああ、これは心臓部に私のマナ収束機構を取り付けた改良型オーニソプター、その名もスピンクスメギド号さ!」


ダ・ヴィンチの魔力を収束させる動力部が取り付けられているということだが、それはつまり、自身の魔力を限界まで圧縮して爆発させるということだ。ダ・ヴィンチの魔力を必要とする以上、それは遠隔操作が可能なものではない。


「ッ、ダ・ヴィンチあんた…!自爆する気か!」

『なんだって!?そんなもの却下に決まっている!!』

「なに言ってんのダ・ヴィンチちゃん!!」


意図に気づいた唯斗が慌てて止めようとすると、ロマニと立香も続く。
しかしダ・ヴィンチはやんわりとそれを制した。


「まぁまぁ。トリスタンのギフトを見てから、こうなることは分かっていたよ。これくらいしなきゃあいつらから逃げられないってね。これが私の最後の出番ということさ。そうだろロマニ?サーヴァントなんてほんとは、一日や二日で別れる使い捨ての消耗品だ。私はちょっと、それが他より長かった、いや、長すぎたかもだ。あとは君がうまくやりたまえ。チキンのくせに、ここまで頑張ってきたんだろ?」

『はぁ…わかったよ』


ロマニは案外早く折れた。
これが戦闘中だけ呼び出すカルデアの簡易召喚であれば話は別だが、ダ・ヴィンチはどうなのだろうか。コフィンに入って特異点にレイシフトしているが、特異点で死ぬとカルデアには戻れないのだろうか。それとも、カルデアに霊基が登録されている以上、カルデアに戻るのか。正直これは分からない。

立香とマシュは依然として拒否する姿勢を見せているが、この状況ではほかに打開案がないのも確かだった。


「Ci vediamo!ドクター・ロマン、そして立香君、唯斗君、マシュ!天才は不滅だ、生きていたらまた会おう!」


ダ・ヴィンチはそうやって快活に笑うと、オーニソプターを走らせる。翼が広がって空中に飛び出すと、本隊に向けて突撃していった。ワイバーンなみの速度だ。
それを避けられるはずもなく、本隊はすべて爆炎に包まれた。


「っ、先輩!ダ・ヴィンチさんが…!」

「…ッ、」


助けられるかもしれない、と後方に立ち込める煙を見つめる立香の腕を、唯斗はそっと掴む。


「行くぞ立香。俺たちはまだ、この人たちを守る義務がある」

「…うん、そうだね。行こうマシュ、早く山岳地帯に入るんだ」

「はい…ダ・ヴィンチさん、必ず戻ります…!」


立香は振り返り、必死に逃げる難民たちを視界に移して、頷いた。マシュも応じて、盾を持ち直して難民とともに走り出す。

通信の向こうで、特にダ・ヴィンチが帰還したような声は聞こえてこないため、単に死んでいないのか、あるいはもう二度と会えないかのどちらかだった。
サーヴァントはそもそも時代を超えて現界するように設計されているため、時代から異物として排除される意味消失の対象にはならない。人間の体を持つ立香と唯斗、マシュだけがバイタルチェックと存在証明をされており、アーサーや今回のダ・ヴィンチも管制室でバイタルチェックは行われていないのだ。

アーサーがいれば切り抜けられただろうか。いや、変転しているわけでもない円卓の騎士たちに対して、きちんとエクスカリバーが起動するか分からなかったし、エクスカリバーを解放してやっと倒せるというほどまでに強化されている円卓の騎士が、少なくとも3人はいるのだ、じり貧なのは変わらない。

頭でそう分かっていても、隣にアーサーがいないことが、漠然と心に不安を掻き立てる。そんな自分に、唯斗は少し戸惑いながらも足を進めた。


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