神聖円卓領域キャメロットII−4


「唯斗ほんとすごいね!」

「いや、別にこれくらい魔術師ならできて当然だからな。ルシュド、喉乾いてるか」

「うん!飲んでいいの?」

「あぁ。立香、抱えてやってくれ、この座標に固定してるから動かせない」

「あ、そういうことね。了解。じゃあ行くよルシュド」


立香は頷いて、ルシュドの両脇に手を差し入れて抱き上げる。少し高い位置に固定してしまったため、抱き上げられた状態でないとルシュドには届かなかった。
直径30センチほどの水の球体に直接口をつけて飲んだルシュドは、「おいしい!」と目を輝かせた。


「俺も飲んでみよ〜」

「わ、私も失礼します!」


立香はルシュドをいったん下ろしてやってから、マシュと揃って水の球体から水を飲み、口々に美味しいと感想を述べた。


「へぇ、俺は水の味の違いとか分からないけど…にしてもあれだな、恋人用に二股になったストローで一つのグラスからジュース飲むやつみたいなことしたな、お前ら」

「ぶっ!!」


二口目を飲もうと水に顔をつけていた立香は、唯斗の言葉に思い切り噴き出した。水球にぼこぼこと気泡が大量に吹き出し、それによって球体は形を歪ませながら膨張して立香の顔面も飲み込んだ。

慌てて顔を離した立香は咳き込み、マシュも慌ててその背をさするが、二人とも顔をやや赤くしていた。


「唯斗〜!!」


立香は少しだけ顔を赤らめながらも、笑いながらこちらに掴みかかってくる。肩を組むようなヘッドロックまがいの掴みかかり方をしているが、単にじゃれているようなものだ。


「はは、顔赤いぞ。もう一回水被っとくか?」

「てかその水!俺が顔洗った水を人に飲まれるのさすがにまずいから捨てて!」

「はいはい、分かりましたよ藤丸先輩」

「はいライン超えた!マジでカルデア戻ったらケイローンにあることないこと吹き込んで課題地獄見せてやるから!」

「それお前も同じ量出されるやつだろ」

「…確かに」


スン、となって唯斗から立香が離れたところで、試験的に出現させた水は用済みのため、「ヴァズィ」と唱えて少し離れた場所に適当に捨てる。
すると、その岩陰から何やら鳴き声らしきものが聞こえてきて、突然、巨大な目玉の怪物が姿を現す。しっとり濡れているのはゲイザーだ。どうやら適当に捨てた水を被ってしまったらしい。


「…立香が顔洗った水を被らされたからゲイザーが怒ってるぞ」

「いや全部唯斗のせいだよね?」

「おや、これで食料問題も解決ですね。自ら食料になりに来てくださるとは」

「ベディヴィエール…?」


冷静に右手を構える唯斗に立香がツッコミを入れると、今度はベディヴィエールが不穏なことを言い出し、立香は恐る恐るそちらを見る。ベディヴィエールは本気だ。


「大丈夫です、私も旅に慣れておりますので。食べられるものには目が利くんです」


まったくそういう問題ではないが、ベディヴィエールは特に気にせず、一瞬でゲイザーに接近すると一撃で仕留めた。美しい剣裁きは円卓の騎士そのものだが、笑顔でバラバラになったゲイザーの肉片をこちらに見せてくる姿に、唯斗も立香も慄いた。


「ちょうどいいので、この辺りで一度休憩がてら食事にしましょう。ほかにもワイバーンとかいるみたいなので、難民50人分も合わせて調達できそうですよ」

「お、俺はワイバーンの方がマシ…よさそうかな!」

「立香、肉食動物の方がアンモニアとかの影響で肉がまずいらしい。たぶんゲイザーのがマシだぞ」

「唯斗、なんとかうまいこと牛とか召喚できない?」

「できるわけねぇだろ」


結局、ベディヴィエールとともに仕留めたワイバーンとゲイザーがその日の昼食となった。
唯斗はゲイザーのどろどろとした肉を食べたが、ふと、立香が顔を洗った水を被ったゲイザーだったと思い出した。若干涙目で食べている立香に、さすがにそれは追い打ちだろうと、唯斗は口には出さずにどろりとした肉とともに飲み込んだ。


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