神聖円卓領域キャメロットII−6


この村には霊脈も走っていたようで、ようやくターミナルポイントを設置することができた。寝泊まりする場所も用意してもらい、この特異点に来て初めて、身を落ち着けられる場所ができたことになる。

ベディヴィエールは一人で聖都に戻るつもりだったようだが、その霊基の不安定さを見かねてカルデアからもストップがかかり、全員でしばらくこの村にとどまることになる。

まずはアーラシュにカルデアの目的とこの特異点について話をして、アーラシュからも一通り話を聞いた頃には、太陽の光は完全に村に差さなくなり、山の頂上に光が漏れるだけとなっていた。

もともとこの村は、様々な理由で聖地を追われた人々が、それでもなるべく聖地に近いところにいたいという思いで築いた場所らしい。エルサレムの支配者は時代によって様々で、支配者によって認められる宗派は異なった。

そうして時代を追うごとに聖地を追い出された人々が、少しずつ集落を山岳地帯に築いていき、そして獅子王がエルサレムを破壊したことで、より多くの人々がここにやってきた。山の民と呼ばれる彼らが獅子王に否定的なのは、それほどの思いを抱いていた聖地を破壊されたからなのだろう。


「さて、ここからは提案なんだが」


話を一通り済ませたところでアーラシュが切り出す。


「この村の周辺にも、盗賊や怪物が現れるようになった。村を守り食料を得るためにもそいつらとの戦いは必須なんだが、その狩りに付き合ってもらえねぇか。お前さんたちは落ち着ける場所ができて、村人も安心できて、さらには信用してもらえるとくれば、いいことづくめだと思うんだ」

「そうだね、できることってそれくらいだろうし」

「はい!もちろん!」

「助かるぜ。じゃあとりあえず、今晩の狩りは唯斗を借りてくぞ。いろいろ話したいこともあるんでな」


アーラシュの提案は、村周辺の盗賊や怪物を狩り、村人からの信用を得つつ食料なども調達するというものだった。アーラシュの言う通り、とても合理的である。

今晩は唯斗一人を指名されたが、ベディヴィエールや立香たちは迷った表情を見せる。


「いや、俺一人でいい。ベディヴィエールは安静にしてた方がいいし、マシュだって特異点で倒れられたら困る、立香とロマニにきちんと調整してもらってくれ。俺は俺で、カルデアからアーラシュを呼べない分、連携とか確認したい」

「…そうだね、分かった。今日は任せた」


立香がOKを出したため、マシュも食い下がることはせず、唯斗はアーラシュと二人で村から山に戻る。

歩けばすぐに村の生活音が聞こえなくなり、谷間を吹き抜ける風によって人の気配は完全に遮断されてしまう。振り返れば、まだ1分と経っていないのに、もう見えなくなっていた。


「お前さんも疲れてるだろうに、悪いな」

「いや。で、アーラシュはどこまで見た?もしくは、どこまで知ったんだ?」

「そんな大したことは見てないさ。ただ、唯斗がすげえいいマスターだったなって知っただけだ」


山道を水場に向かって歩き始めたところで、唯斗はアーラシュに未来視でどこまで見たか尋ねる。しかしアーラシュはあっけらかんと笑ってそう答えただけだった。


「…反応に困る」

「はは、悪い悪い。さすがに別の世界に召喚された自分とシンクロすんのは無理だ。千里眼を使ってもな。でもそうだな、この魂、というか、霊基があんたに感じた思いとかは、なんとなく座から受け取れたよ」

「そんなことできるんだな」

「それだけ思いが強いってことだ」


アメリカでも、ディルムッドがそれで攻撃を止めたほどだった。ディルムッドには深層心理への疑似レイシフトをしていることもあっただろうが、アーラシュにはそういうことはしていない。フラットな付き合い方をしていたように思う。

そもそもアーラシュは、神代の終わりに現れた英霊だ。少なからず神性に似た性質を帯びていることや、根っからの大英雄であることもあり、人間に対して一歩引いている。まさに、一線を画す存在だ。だからこそ、マスターである唯斗との関係性も、そういうラインがしっかりとある印象だった。


「アーラシュは、どこまでも英雄だから、俺たち人間を総体として捉えて個々人との距離を詰めないタイプの英霊だろ。俺に対してそんな強い感情持ってるとは思わなかった」

「間違っちゃいねぇなぁ。それこそ、お前さんが俺に言ったこととかが理由だろ。俺になんて言ったんだ?」

「すごいこと聞くな…」


何か言っただろうか、と記憶を辿る。呼び出して初めて二人きりでシミュレーションしたときのことだろうか。


「あー…初めて二人で訓練したときにさ。こうして夜に二人きりになってたんだけど。直前に俺の過去を夢としてサーヴァントが共有してたんだよ」

「夢?」

「そう」


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