神聖円卓領域キャメロットII−7


唯斗は、かいつまんで過去を話す。家のこと、父のこと、母を蘇らせる術式の触媒にされ命を落としかけたこと。ずっと、一人だったこと。


「俺はずっと孤独で、世界に居場所なんてなくて、一方でそれはそれで都合が良かったから、あんま悪いことだとも思ってなかった。でもその分、グランドオーダーにも初期のころは消極的だった。アーラシュと二人で訓練したころには、俺もいろいろ考え方が変わりつつあったんだけど、孤独の英雄とも言われるあんたに、確か、世界を救ったとしても居場所がないのに頑張るのはつらくないのかって聞かれたんだ。それで俺は、あんたたち英霊が託してくれたこの世界を、案外悪くないなって思い始めてたから、それでいいって答えた。そのうえで、孤独どうし、たまには肩を並べて戦おうって、たぶんそうあんたに言ったと思う」


訥々と、記憶を辿りながらアーラシュとのことを話していく。お互い、周囲に敵の気配がないか探りながらではあったが、一方でお互いの言葉に耳を傾けていた。

隣でじっと唯斗の話を聞いていたアーラシュは、「なるほどな」とつぶやく。


「そうか…お前さんは、唯斗は、隣に立とうとしてくれてんだな」

「もちろん、大英雄たるアーラシュの隣なんて、おこがましいんだけどな。気持ちの問題だ。たとえあんたが大地を割ってから消えなかったとしても、そのあとの世界であんたは一人だった。俺も、グランドオーダーの先にある世界で、きっと一人になる。それは一緒だと思ったから、それなら、一人と一人、隣で一緒に戦いたいと思った」

「そうか…それにしても、よく、世界のためにって思えたな。いくら英霊たちに敬意があっても、それでもなお苦しい戦いだろう」


これまで解決してきた特異点は5つ、これが6つ目だ。居場所のない世界を救うために努力する、それがどんなモチベーションがあっても苦しいことだろうとアーラシュは言ってくれている。そういうところは本当に変わらないというか、どこまでも優しい人だと思う。


「俺も最近まで言葉にできなかったんだ。それでも最近、第五特異点でやっとわかった。あなたたちが後世の人間たちに残してくれた世界だから、守りたいと思ったんだ。だからこそ、人間である俺たちが、こうやって戦わなきゃいけないんだ。そう思って戦ってる」

「…そっちの俺、こう言わなかったか。俺のマスター運はいいらしいってな」

「言ってた」


唯斗が答えると、アーラシュは「やっぱりな」と笑う。そして、唯斗の頭をおもむろに撫でてきた。
兄貴肌然りとしたこの男のそれは、優しいが雑には雑だ。それでも、それがカルデアで事あるごとにこうしてくれるアーラシュと重なって、ほっと息をつく。


「悪い、子ども扱いっぽかったか」

「…いや、気にしてねぇ、から……その、」

「うん?」

「……続けて、ほしい」


アーラシュはふと、唯斗の年頃がアジア系であるゆえに幼く見えていたかと思ったのか、手をぱっと放す。それについ、唯斗は言い淀みながらも続きを要求した。
途端に「何を恥ずかしいことを言っているんだ」と我に返り、慌てて口を動かす。


「あーいや、ほら、普段は俺、アーサー王と一緒にレイシフトするんだけど、今回は別のサーヴァントが帯同してて、そのサーヴァントとはここに来る前に分かれることになったから、なんつか、普段一緒にいる俺のサーヴァントがいないのを、無意識に不安に思っ…いや、その、あーマジで俺はバカなのか…?くそ、だから、自分のサーヴァントであるアーラシュと会えてほっとしたって言うか…」


何か言わなければと思って喋ると余計なことを言ってしまうというのを、いい加減自分でも学ぶべきだろうと内心で辟易とする。
なぜこうも毎度綺麗に墓穴を掘ってしまうのか。

無言になったアーラシュに、さすがに引いたかと不安になって、そっと左側に立つ背の高い弓兵を見上げる。


「…アーラシュ?」

「っ、あぁ、悪い、続きな、うん」


するとアーラシュも一瞬どもり、そして唯斗を抱き寄せた。すっぽりと抱き込まれてしまい、何事かと目を白黒させる。しっかりアーラシュの太い腕は背中に回っており、続きと言いつつ全然違う挙動をされている。


「お前さん…それはずるいだろ…」

「え、なにが」

「俺ァ知ってるぞ、こういうの。ギャップってやつだろ」

「何言ってんだ」

「俺も分からん!」


要領を得ないアーラシュから答えを聞くのを諦め、唯斗はまぁいいか、と独り言ちてから、アーラシュの防具がなくインナーだけが覆う鎖骨に頬を寄せる。
本当に、無意識にアーサーがいないために張り詰めていた神経が緩んだのを感じて、やっと心も落ち着けたような気がした。


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