神聖円卓領域キャメロットII−11
「そんな、笑い話じゃないんですし…」
「阿呆、笑い話で済まされるか。命がけの、酒盛りのときの鉄板ネタだぞ!土台と矢を繋ぐ。おもいっきり矢を放つ。矢、20キロ先まで飛ぶ。一緒に土台も飛ぶ。な?簡単だろ?」
「バカだこの人!!!」
「本気ですこの方!!!」
立香とマシュが同時に叫んでいる傍ら、唯斗はアキレウスとエミヤを呼ぶ。モードレッドはセイバーであるため、アキレウスの戦車に乗っている間に支えてもらう役割と、着いてすぐに戦闘に入るためだ。
「ようやく出番か!」
「だから早く召喚サークルを設置するよう毎度言っているだろう」
召喚して早々に説教してきたエミヤはともかく、アキレウスに唯斗はすぐ指示を出す。
「宝具を展開してくれ。すぐに、ここから西に20キロ離れた場所まで飛んでほしい」
「お、了解した。弓兵さんは支え役か?」
「それと、現地で相手するセイバー対策だ。相手はモードレッド、一般市民の集落を襲撃しようとしている」
「…へぇ」
円卓の騎士が本当に殺戮を行っている、という事実に、アキレウスは表情を硬くする。エミヤも無言だった。特異点の状況はほぼリアルタイムでカルデアのサーヴァントたちにも共有されているらしい。
アキレウスが指示通り宝具の戦車を出現させると、アーラシュたちの準備も整った。
「ていうかアーラシュのマスターなんだから唯斗がこれに乗るべきじゃないの!?」
「ライダーには単独行動スキルないしな。気張ってこい」
「おいあいつら何する気…」
アキレウスが唖然とした直後、アーラシュの射撃が実行された。
「裏切り者おおおお!!!」という立香の悲鳴が一瞬でフェードアウトして、アーラシュが飛び乗って4人が張り付いた土台は空高く羽ばたいていった。
「…さて、俺たちも行こう」
「ぶわっはっはっは!!!やべー!!!ペルシアの弓兵すげーことすんなァ!!!」
「これだから古代人は…」
げらげらと笑うアキレウスと、事態を理解してため息をつくエミヤ。立香には悪いが、こちらはきちんと戦車で空を飛ぶ形をとらせてもらう。
エミヤとともにアキレウスの後ろに乗り込むと、前に立つアキレウスの顔を覗き込む。
「あぁ、当然だけど。遅れは取るなよ」
「言うまでもねぇってもんだぜマスター。あいつらの軌跡から着地地点を見極めて先回りしてやらァ」
「任せた。エミヤも頼む」
「シートベルト役とはまた変わったオーダーだ」
エミヤに支えられ、アキレウスは戦車を空中に走らせる。途端に、猛烈な風が吹きすさんだ。時速300キロどころではない。エミヤも唯斗を支えながら自分が振り落とされないようにするのに精いっぱいという様子だ。
アキレウスは冷静に過ぎ去る景色から、立香たちが飛ぶ土台の様子を観察しているようで、その着地点を予想していた。
「マスター!あいつらの着地点は獣の巣だ!人型の敵兵はその先にいる!」
「先行する!」
「あいよ!」
なんとか一言返すのが精々だ。この速度では迂闊に口を開くべきではない。エミヤに庇われていてもやっとこれだけである。しかしそれで十分なのも確かで、アキレウスは見事に粛清騎士の一団の最後尾に着陸した。
着地とともに何人かを下敷きにして屠り、エミヤに抱えられて地面に唯斗が降り立っている間にすでに戦闘を開始してくれていた。
粛清騎士たちは奇襲に成すすべなく倒されていく。
「エミヤ、数は」
「10人程度だ。やるかね?」
「あぁ、戦闘開始。セイバークラスの騎士からやってくれ」
「了解した」
いつもの低い声で頷くと、エミヤは矢に剣を装填し、剣を持った騎士に次々と当てていく。その合間を、アキレウスが槍によって槍兵たちを薙ぎ払っていった。
峠道であることもあり、アキレウスにやられた兵士は谷底へと落ちていき、エミヤに貫かれた騎士も倒れていく。
「マスター、前方からサーヴァント反応。後方からはマスター藤丸たちだ」
「ちょうどいいな」
先に合流したのは立香たちで、後ろから唯斗たちに追いついたころには粛清騎士は全滅していた。
「やっぱアキレウスには勝てねぇか」
「あんたのイカれた飛行は痺れたぜ」
「やめないか。マスターの教育に悪いだろう」
軽く笑いあうアーラシュとアキレウスをエミヤがたしなめる。立香とマシュ、ベディヴィエールはまだ衝撃を引きずっているようだった。どうやらこっそり同行していたようで、呪腕のハサンもいる。
「唯斗マジで覚えてろよ…」
「合理的な方法とっただけだっつの。それより…来たぞ」