神聖円卓領域キャメロットII−12
意識を前方に向けると、威圧感を放つ騎士の姿。
ロンドンで出会い、カルデアにも呼び出されたモードレッドそのものだ。やはり変転などしていない。
アキレウスとエミヤ、そしてアーラシュも唯斗のそばに寄り、立香とマシュ、ベディヴィエール、ハサンも構える。
「そっちから出向いてくれるたぁいい度胸じゃねぇか」
「なんでこんなことするんだ、モードレッド!」
当然、向こうはこちらを覚えていない。そもそも特異点の記憶は引き継がないのもあるが、恐らく、獅子王麾下の騎士はカルデアの記憶を一切持っていないだろう。アーラシュのように漠然とした記憶を持っていたり、オジマンディアスのように同期していたりするのは特異な例ということだ。
「なんでだ?そんなん楽しいからに決まってんだろうが!ウジ虫みてぇに抵抗するやつらを殺してくのは心底楽しいね!」
『立香君、モードレッドは敵だ。倒すべき相手だ。そこは忘れないように』
乱暴ながら、決して悪い奴ではなく、むしろまっすぐだからこその優しさもある騎士だったモードレッドからは、とても想像できないおぞましいことを言っている。
ロマニの通信を聞いたモードレッドはフンと鼻を鳴らす。
「倒せるもんならやってみな。俺に与えられたギフトは暴走、俺の魂が燃え尽きるまで殺しまくる!そこそこ数がいるじゃねえか、サーヴァントがひい、ふう、みい……あ?おい、なんでてめぇがいる」
すると、モードレッドはベディヴィエールに気づき眉をひそめる。しかしすぐに嘲笑を浮かべた。
「てめぇが反逆者の仲間なんざ最悪の冗談だ!なあそうだろ三流騎士!」
「…ええ。私は円卓の騎士として、加護も武勇もない並み居る一介の騎士にすぎません。それを、我が王は最期まで頼ってくださった」
「……最期だと?いいだろう、てめぇは一片たりとも残さず殺してやる!アーサー王の最期はてめぇなんざにくれてやるものか!!」
ベディヴィエールが素早く前に出て戦闘を開始する。狭い道では複数人で戦うには厳しい場所だ。
「アキレウス、いったん戻ってくれ。エミヤは援護射撃」
「了解、気ぃつけてな」
アキレウスは去り際に唯斗の頭を軽く撫でてからカルデアに戻った。残ったエミヤは、ベディヴィエールに当たらないよう、冷静にモードレッドに剣を放つ。
立香もアルジュナを呼び出して、遠距離攻撃に徹する。モードレッドとベディヴィエールが激しく剣戟をしている間に、アーラシュと呪腕のハサンは周辺の騎士を掃討していた。
なんとかベディヴィエールが宝具展開を阻止しているが、暴走のギフトがある状態で宝具を解放すれば、もとより自身のエネルギーを大きく利用する魔剣クラレントの性質を考えるに、それはほぼ自爆に等しい。
(アーラシュ、モードレッドが自爆する可能性があるか未来視できるか)
(気づいてたか。お察しの通りだ、追い詰められれば山ごと吹っ飛ばすつもりだろう。この戦い、負けか引き分け以外にはねえな。俺がやろう、軍師じゃないが、騎士の兄さんを除けば俺が適役だ)
(…わかった、頼む)
念話でアーラシュと意思疎通すると、やはりモードレッドが自爆するという見立てだった。あの暴走というギフトは、獅子王による呪いに等しい。そんな扱われ方をされていてもなお、モードレッドは獅子王のために戦い、最期を看取ったというベディヴィエールに怒りをぶつけるのだ。
なんと痛ましいことだろうか。それを口にするのはモードレッドへの侮辱だと理解しているが、それにしても、あまりに非道だ。
そうして、想定通りモードレッドが自爆しようとした瞬間にアーラシュが割込み、騎士の矜持を持ち出して自爆を躊躇わせる。さらに、再戦まで戦わないことや村を襲撃しないことなども約束させ、今回は引き下がらせることに成功した。
そこまで口のうまい戦士だというイメージはなかったが、アーラシュのおかげで、西の村を防衛し今後の敵襲も予防するという上々の成果を上げることができたのだ。
今はこれで満足するしかなかった。