神聖円卓領域キャメロットII−13


モードレッドの反応が村から離れてひと段落したと思った直後、ベディヴィエールは宝具の使用が祟ったのか、ふらりと意識を失って倒れてしまった。
どのみちここから東の村までは二日かかるため、いったんこの村に滞在することになる。

それならばついでにこの村の頭目であるハサンと挨拶でも、ということで呪腕のハサンに紹介されたのはやはり百貌のハサンで、こちらを見るなり敵意をむき出しにした。無理もない、こちらは彼女の作戦を台無しにしたのだ。
こちらにとってはニトクリスもハサンも敵ではないが、向こうはそうではない。

どうやって協力を取り付けようか、ということになったところで、呪腕のハサンはあからさまに話題を変える。


「ところで百貌の、例の件はどうなっている」

「あぁ…まだ情報は漏れていないようだが、いずれ死ぬか口を割るかのどちらかだろう」

「そうか…どこかに単独行動に向いていて非常に強くサーヴァントも使役できるような方が助力くだされば…」

「そんな奴がいるわけ…いたな……」


これは完全にそういう流れだ。立香は無言でシャドウボクシングの動きをし始める。いつでもいけますアピールだ。マシュは心得たようにうなずく。


「はい、私たちなら!」

「任せて!」


立香もすぐに応じる。呪腕のハサンは朗らかに笑うと、事情を説明してくれた。

どうやらハサンの一人が円卓の騎士に捕まったらしく、砦に囚われているらしい。本来、ハサンであればそのようなことになれば自死を選ぶようだが、このハサンは体質のせいでそれができないのだそうだ。

このまま拷問で口を割ってしまえば、獅子王への反逆計画が露呈してしまう。それを危惧しているようだった。


「しかし助けると言って帰ってこないとも限らん。人質を置いていけ。助け出したハサンと交換だ」

「それなら、俺とマスター…唯斗でどうだ?カルデアのマスターのうちの一人なら問題ねぇだろう」


すると、意外なことにアーラシュがそう提案した。ここで意識を失って床に伏しているベディヴィエールを挙げれば、実質フルの戦力で砦に向かえるはずだ。
マシュや、通信の向こうでロマニも反対しようとしかけたが、アーラシュが続けて口を開く。


「この村、見たところ備蓄がないだろう。戦える者もいなさそうだ。また粛清騎士が現れるかも分からんし、食料を狩りに出る人間も必要だ。ベディヴィエールにしても治癒魔術ができるやつがいるなら一応見ておいた方がいいだろう。それに、水の錬成もできるんだよな?マスター」

「…なるほどな。確かに、百貌のハサンも行くなら村ががら空きになる。食料調達と水の錬成、ベディヴィエールの看護、サンソンを呼んで村人の治療もできるかもしれない。何もしない人質より役に立つ人質の方がいいだろ」


アーラシュが言う通り、この村は東の村よりも危機的状況にある。防衛戦力だってないに等しい。狩りはアーラシュに任せきりになるが、治癒と水の錬成は唯斗が魔術でできるし、短時間ならサンソンとともに村人の健康状態を確かめられる。


「立香はハサンの救出。俺は西の村の守りと支援。文句あるか、百貌のハサン」

「……ふん、ならいいだろう」

「そうだね、確かにこの村の人たちも心配だ。助けて終わりじゃないもんね。こっちは任せて」


百貌のハサン、立香もうなずいて、ロマニもそういうことならと許可を出した。
召喚サークルが確立された今、もう分かれて行動することが可能だ。砦の攻略は立香たちに任せて、唯斗はアーラシュとともに村に残ってこまごまとした手伝いに専念することにした。


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