神聖円卓領域キャメロットII−18


急いで村に戻った唯斗は、すぐに村人たちに声をかけて避難用の洞窟へと向かわせ、戦える十数名をアーラシュのいる村の入り口に走らせた。


「唯斗お兄ちゃん!」

「…ルシュドか」


逃げ遅れている者がいないか見て回っていると、ルシュドが駆け寄ってくる。不安そうな顔をしており、唯斗の腰に抱き着きながら見上げる。


「戦うの?お兄ちゃんとアーラシュお兄ちゃんだけで?危ないよ!」

「大英雄アーラシュと一緒なんだ、余裕だよ」

「でも…」

「いいから。本当に危なくなったら俺が洞窟に戻って立てこもる。だから、それまで逃げた人たちのこと頼んだぞ」

「…うん!」


ルシュドは頷くと、洞窟の方へと走っていった。たまにあの子は、こちらの様子を伺って、少しでも疲れているように見えると心配しに来てくれる。優しくて、聡明な子だ。


「…せめて立香たちが間に合うまで持ちこたえる」

『その通り。入り口でアーラシュが迎撃を開始したようだ、まだしばらく距離はある。ハサンの方も、やはり夜になってからの到着になりそうだ』

「了解。俺も村の西側からの迎撃にあたる」

『カルデアは君に注力してバックアップする。くれぐれも無理はしないように』

「無理しないで済めばいいけどな。サーヴァント反応、あるんだろ」

『あぁ、遠くて詳細には分からないが、2騎はいる』

「……円卓が二人か」


よりにもよって、二人もこちらに来ているらしい。これは本格的に、こちらの動向が知れていると考えた方がいい。カルデアのマスターを確実に殺すつもりなのだ。

しばらくロマニはこちらにすべてのフォローを回すようなので、唯斗もアーラシュの方へと走り出す。すでに太陽はかなり傾いていた。

村の入り口に到着すると、東の尾根から峠にかけて、そして西の入り口付近で男たちが散開しているのが見えた。村の戦える者たちだ。

アーラシュは西の入り口から山麓に次々と射撃を行っている。


「東側からは来てないな」

「そうらしい。数は減らしてるが、かなりの規模で攻め込んできてるな」


一時的に強力な視力を得るために米神に添えていた指を離して通常の視界に戻る。敵の数は多いが、アーラシュが着実に数を減らしていた。


「そろそろ第一陣が到達する。俺とエミヤで少し降りる」

「気ぃつけてな」


唯斗はエミヤを呼び出すと、そろそろ入り口付近に到達しそうになっている先頭の粛清騎士を直接切り崩すことにした。後ろはアーラシュに任せて少しだけ削り、また戻るという形だ。


「エミヤ、」

「呼んだかね」

「早速だけど行こう」

「了解した」


いつも通りのエミヤとともに、峠道を一気に走り出す。ともに迷彩魔術をかけているため、ぎりぎりまで敵からこちらは見えないが、これはサーヴァントには通用しない程度のものだ。粛清騎士も性能が良ければ見えるかもしれない。


「攻撃開始」


少し離れている場所から、エミヤは剣を弓で放ち始めた。重い一撃が先頭の騎士を貫き、崖を滑落していく。
唯斗も魔力を多めに込めたガンドをお見舞いしてやり、騎士たちを突き落としていった。

そうして一気に数を減らした、そのときだった。


「ッ、マスター!」


エミヤは突然鋭い声で唯斗を呼び、そして唯斗を抱きかかえて飛び退った。同時に、先ほどまで立っていた地面が思い切りえぐれて石つぶてが飛び散る。あれはトリスタンのフェイルノートだ。


「来たな、後退しよう」

「当たり前だ」


エミヤは唯斗を抱えたまま坂道を走り出す。アーラシュが攻撃目標をそちらに定めたため攻撃を開始するが、アーラシュの矢をフェイルノートは正確に弾き飛ばしていった。正面から互角に打ち合っている。


「まったく、末恐ろしいな」


同じアーチャーとして、エミヤは顔をしかめて両者の激しい応酬を見遣った。エミヤにそう言わせるのだ、本当に別格なのだろう。


『まずい、高速接近するサーヴァント反応!しかしまっすぐアーラシュの方へ向かっている!』

「この速度、ランスロットか…!」


唯斗は急いであとわずかに迫った村の入り口に向けて叫ぶ。


「アーラシュ!来るぞ!!」


あの長身と派手な鎧でどうして隠れられるのか、ランスロットはアーラシュの視界の端を掻い潜っていたようだ。


『この魔力反応は…!まずい、ランスロットが宝具を展開する、アーラシュが!』


エミヤはかつてないほど全速力で坂道を駆け上がってくれたが、登り切ったその瞬間、ランスロットがアロンダイトに魔力を過剰滞留させた状態で切りつける形で宝具を展開、アーラシュは正面から切り裂かれ、足を踏み外す。その向こうは、尾根の崖となっている。


「アーラシュ!!」

「逃げ、ろ……」


力なくアーラシュはそう言いながら、谷底へと滑落していった。すっと体の内側が冷えるような心地がして、考えるより先に唯斗は怒鳴っていた。


Tu es mou du genou(この腑抜け野郎)!!」


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