神聖円卓領域キャメロットIII−2
そうして荒野を突き抜けて砂漠に入ると、カルデアとの通信は途絶える。観測は続くため意味消失はしないものの、バックアップが受けられないのは、この砂嵐ではやはりきついものがある。
口に入る砂を不快に思いつつ、なんとか全員で砂漠を行軍するが、案の定、三蔵がスフィンクスと出くわすアクシデントに見舞われる。
立香が初めて三蔵と出会った時も同じような状況だったらしいが、なんとかスフィンクスを撃退したところで、アトラス院の遺跡周辺にはスフィンクスが放し飼いされているという情報があったことを思い出す。
そこは御仏の加護というべきか、三蔵によってスフィンクスを目印にアトラス院の大体の場所の特定に成功し、思ったより早く砂嵐の中に目的地を見つけることができた。
しかし同時に、三蔵の第六感によって、後方から迫る強力な反応も知ることになる。
「目的の遺跡は目の前なのですが…」
「武装した者の足音だ。これは円卓の騎士だな」
マシュが前方の遺跡周辺のスフィンクスの群れに、藤太が後ろからやってきた円卓の騎士の部隊に、それぞれほぼ同時に気づく。遺跡にはとても入れそうになく、もう後ろからの気配はすぐそこに迫っていた。
「前門の虎後門の狼ってことね…どうする、藤丸さん」
「やるしかない」
三蔵が立香に尋ねるが、立香は後ろを振り返り、砂嵐の向こうからやってきた軍団を見据えた。
「追いついたか。諸君らとことを構えるのはこれが3度目だな。一度目は聖都からの追撃、二度目は山の民の村。いずれも反逆者のリーダーとは対面できなかったが、最後でようやく対面できた」
凛とした低い声。砂嵐のカーテンから現れたのは、紫の甲冑に身を包んだランスロットだった。
「円卓、遊撃騎士ランスロット。王命によりその身柄を拘束する」
「また会ったな。アーラシュが村を守り切ったことでその首刎ねられたかと思った」
唯斗がランスロットを睨みつけて言うと、ランスロットもこちらを見とめて眉を寄せる。臆病者と罵ってきた相手と再会しても、ランスロットが動揺することなどないだろう。
「落とし前は自分でつける。その後、この首を我が王にお預けする。二度はない」
そこに、ベディヴィエールが唯斗の前に進み出るようにしてランスロットに相対した。ランスロットは砂嵐で視界が悪い中でも、ベディヴィエールの姿を見て軽く目を見張る。
「戦いの前に問いただします、サー・ランスロット。卿はいかなる理由で、今の王にお仕えしているのです」
「ベディヴィエール卿!?バカな、あり得ない…!あなたがこの場にいるなど、そんな…!」
「仮に私が幻であったとしても、我が問いの真実は変わらない。答えよ、あなたほどの騎士が今の獅子王に、なぜ仕えているのか。ガウェイン卿は何であれ王を信じると述べた。モードレッド卿は王に逆らうこと自体が不敬だと述べた。トリスタンは、王の采配を慈悲ある行いだと断言した。あなたはどうだ。あの光を、人々の村を焼き滅ぼす愚行を、アーサー王の所業だと語れるのか!」
ギフトは、騎士たちの性質を変化させていた。特に顕著なのがモードレッドとトリスタンだ。暴走のギフトによって、アーサー王に仕えるということに執着するモードレッドや、反転のギフトによって徳の高さがそのまま悪に転じてしまったトリスタンは、まさに伝説やカルデアの人物像に比べればまったく異なる。
その点、ガウェインはカルデアにいないため、変わっているのかまだ分からない。あの聖抜の一瞬しか話していないこともある。
ではランスロットはどうなのか。それを問いただそうとしたベディヴィエールだったが、ランスロットは長い沈黙のあと、それに答えることはせずに剣を構えた。
「……総員、戦闘準備。これより反逆者たちを拘束する」
それに対して、すかさずベディヴィエールは叫んだ。決して逃がさないという固い意志の籠った声音だ。
「ランスロット!答えなさい!!」
「断じて!あれが王の所業などと語れるものか!私が剣を預けた者は騎士王であって獅子王ではない!だがそれと諸君らを捕らえることは関係がないことだ。申し開きは王の御前でするがいい!」
王の命令には決して逆らわず、これを完璧に遂行するのがランスロットだ。獅子王の過ちを認めつつ、ランスロットはそれでも命令を遂行するという。
ならばもう、戦うほかなかった。