神聖円卓領域キャメロットIII−5


いろいろと気になることばかりを残した状態で、一同は中枢に辿り着いた。
そこは広大な空間で、高い天井には本物のような人工の空がある。空間の意匠はカルデアの管制室を彷彿とさせた。

中央に鎮座する巨大な3本のオベリスクはトライヘルメス、カルデアにあるトリスメギストスのオリジナルだ。

どこまで行っても人がいなかった理由は、このアトラス院が2016年の時空として存在しているかららしい。つまり、人理焼却によって人間は全員消失しているということだ。

オベリスクの根本あたりまで進み、ホームズが口を開く。


「さて、まずは本題から入ろうか。トライヘルメスには、すべての事象が記録されている。我々ではそれら事象のプロセスは理解できないから、今は結果だけを抽出して閲覧することにしよう。ではトライヘルメスよ、私の質問に答えてもらおう。2004年の日本で起きた、聖杯戦争の顛末について!」


まず最初にホームズが演算を指示したのは、2004年に冬木市で行われた聖杯戦争の記録の開示だった。特異点Fが発生した時空でもある。
そこで聖杯戦争が起きていたことはカルデアもすでに知っていたことだったが、その記録そのものは極めて不明瞭だった。


「む、もう答えが返ってきたな。起動音もないのは些か寂しいが、推測通りの結果だったのは喜ばしい。この聖杯戦争の勝者はマリスビリー・アニムスフィアだ」

「カルデアの前所長…オルガマリー所長の父親だっけ?」


立香が思い出した通り、マリスビリーはオルガマリーの父であり、カルデアの前所長だ。
2004年に聖杯戦争に参加してこれに勝利、聖杯を手に入れた。


「マリスビリーはこの聖杯戦争で助手を連れていた。翌年、この助手をカルデアで雇用した。22歳で医療機関のトップという異例の人事だ」

「…ロマニ・アーキマン、ですね?ドクターはカルデアに来る前から前所長と知り合いだったと」


ロマニをよく知るマシュもそれは知らなかったらしい。確かに、縁がなければあの若さで医療セクションのトップにはならないだろう。それも22歳などあまりに若すぎる。


「イエス。そしてさらにおかしなことに、このロマニ・アーキマンという男の経歴は一切不明。それが、私がドクター・ロマンを信用していない理由だ。彼は間違いなく人間であり、魔術師ではないが…何かを隠している。それもとびきり、真相に近い何かをね」


経歴不明の男が異例の若さでカルデアの医療セクションのトップに就任。その後、カルデアはトリスメギストスやフェイト、カルデアス、シバといった様々な魔術科学によって、ついに国連にまで認可されるほどの一大魔術組織となった。

そこで、唯斗はようやく疑問を述べるため口を開いた。


「でもレフがカルデアに来たのは、確かシバの提供と同じタイミングだろ。シバのカルデアへの共用は1999年あたりだったはずだ。少なくとも聖杯戦争より前のことになる。聖杯戦争が単なる資金繰りだとすると、人理焼却とロマニのカルデア就任が無関係って説もあるよな」

「その通りだミスター・雨宮。そうなるとロマンの存在は、『どうしているのか分からないが、事件とは無関係の、別にいてもいなくてもいい傍迷惑な人物』ということになる」

「ドクターっぽいなぁ…」


立香はおかしそうにするが、ホームズが信用しない理由も分かる。
とりあえずこの件はこれで終わりにして、ホームズからはここでのことはロマニに隠すよう頼まれた。まずはこの特異点を修正できないことには信用も何もない、立香もマシュも唯斗も、とりあえずは頷いた。


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