神聖円卓領域キャメロットIII−6



「さて、カルデアの記録を探る中で、先ほどのミス・キリエライトへの返答も見つけてしまった。もののついてのようで実に申し訳ないが、話していいかな?」

「ひょっとして、私に力を譲渡してくれた英霊の真名ですか?」

「その通り!先ほどは確証がなかったが、今は事実を伝えることができる。聞く準備はいいかね」


すると、黙っていたベディヴィエールがホームズを制する。
ベディヴィエールも当然、マシュの中にいた英霊を知っているだろう。


「お待ちください、それはマシュ殿が自ら見つけ出すべきもの。我々が口を挟むのは…」

「いいや!私は口にするとも。誰もが答えに気づいているのだから。そのうえで真実から目を背けるのは愚者がすること。ではミス・キリエライトは愚者なのか?それは断じてノーだベディヴィエール卿!そもそも君は何を恐れているのか?もしも真名を知っても宝具が展開できなかったらとでも?それこそ不要な気遣いだ。なぜなら、マシュ・キリエライトの精神はすでに完成している!彼女の恐れは、宝具のあるなしで変わるものではない!たとえ宝具を展開できなくとも、たった一つの信じるもののために最期まで力を振り絞って戦うだろう!」


ホームズがまくし立てたことでマシュもベディヴィエールも呆気にとられる。
つまり、ホームズが言っていることは、マシュはすでに特異点探索の中で戦うこととの折り合いをつけており、宝具があろうとなかろうと恐怖は感じるし、たとえ宝具が使えずとも守るべきものを守るということだ。

ほんの少ししかホームズは一緒に行動していないはずだが、どうやらそこまで見抜いているらしい。そういえば、アーサーもロンドンで同じようなことを言っていた。


「…アーサーも言ってた。マシュはマシュの在り方で成長していくって。俺もそう思う。実は俺も、マシュの中にいる英霊の真名に気づいていたけど、もうすでにマシュの力はマシュ自身のものだ。マシュが、今までのグランドオーダーの中で、立香と一緒に獲得してきた力だし、これからもそうなんじゃないか」

「唯斗さん…」

「マシュ、唯斗の言う通りだよ。ちょっと呆気ない感じもするけど、これでいいんじゃないかな」


唯斗の言葉に対して、二人はあまり驚きはなかったようだ。アーサーとともにいる唯斗が知っていてもおかしくはない。

立香にも後押しされ、マシュはついに頷く。


「…はい、お願いします、ミスター・ホームズ」

「よろしい。では、まずそもそもどうやってカルデアは英霊召喚を成功させたのか。それは、英霊を集めるものがあったから。円卓と呼ばれた、英雄たちの集いし席。その聖遺物を加工して、融合素体の肉体に埋め込んだ。彼女が持つ武器は、盾のように見えるが盾ではない」

「ラウンドシールドってことか」

「その通り」


唯斗はずっと気になっていた盾の正体が分かりすっきりとする。英霊の真名こそ知っていたし、アーサー王伝説関連の聖遺物だろうとは思っていたが、まさか円卓そのものだったとは。

ラウンドシールドとは、中世前期から中期にかけて、ゲルマン人の間で使われていた円形の盾のことだ。木材と金属を使って作られたもので、鎧はなくとも盾を持つことで多くの人間が戦えた。


「西暦2010年における召喚成功例第2号、英霊融合実験の唯一の成功例。カルデアの非人道的実験を嘆きながらあなたを救うために現世にとどまり続け、カルデア爆破事件のおり、あなたにすべてを託した者。その英霊の真名をギャラハッド。円卓の騎士の一人にして、ただひとり聖杯探索に成功した人物だ」


ついに明らかになったギャラハッドの存在。マシュは名を聞いた途端、力が抜けたようにその場にへたり込んでしまい、立香が慌てて駆け寄る。


「大丈夫!?」

「はい…大丈夫です、すみません。ただ…あのとき私たちを助け、信じてくれた方の名前がやっと分かって…本当に嬉しいんです」


マシュを支えるためにその手を取った立香に、あの日の光景が蘇る。燃え盛る炎と警告音、真っ赤に染まったカルデアスに照らされた管制室。


「…あのとき、ギャラハッドがマシュを助けてくれなかったら、そのあとの特異点Fでどのみち俺も立香もやられてた。ギャラハッドはきっと、マシュと立香の二人に後を託したんだな」

「……いえ、唯斗さんもです。あのとき、唯斗さんは、先輩を助けることを私に告げてくれました。私が、先輩のことを気にしなくても済むように、少しでも憂いなく最期を迎えられるように。わき目も降らずに手を取ってくれた先輩と、私たちを守ってくれた唯斗さん、全員を、きっとギャラハッドさんは信じてくれたんです」

「そういえば唯斗、あのとき俺のことを助けるから安心しろって言って、ずっと結界張っててくれたんだよね。なんだかんだ、あのときのことお礼言えてなかった。ありがとう唯斗、ほんと、最初からずっと助けられてるね、俺」


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