神聖円卓領域キャメロットIII−9
性能そのものが向上したマシュを含め、全員で再びランスロットと戦闘になる。
ランスロットの動きには迷いがあったが、それで倒されるような騎士ではない。しかしランスロットが押されているのは、やはりマシュが怒涛の攻撃を畳みかけているからだ。
そのあまりに重い打撃によって、ついにランスロットもがくりと膝をつく。
「この骨格に響く重さ…!まさに…」
「目が覚めましたか。これでだめなら次は城をぶつけます!」
ランスロットの目の前に盾を思い切り突き立て、砂が舞い上がる。一気に静寂が戻った砂漠に、ぽつりとランスロットの声が落ちた。
「……君の言う通りだ、マシュ。円卓の騎士と戦い敗れた…もはや私に、王の騎士を名乗る資格はない。私の愚かさが晴れたわけではないが…君たちと戦う理由は、なくなった…」
そんなランスロットを見て、三蔵は首を傾げた。
「今回は随分あっさりと負けを認めるのね」
「三蔵ちゃん、実はギャラハッドはランスロットの子供なんだ」
「えー!?あの二人、親子なの!?」
「いえ、違います。父に見えたのは子供のころだけだと、そうギャラハッド氏の霊基が証言したがっています。実際、良好な関係ではありませんでした。そうですよね、お父さん!」
「いや、私はうまくやっていきたかったのだが…すまない、その呼び方は心臓に悪い…」
若干顔を赤らめている様子から察するに、そう呼ばれたことすらなかったのだろう。なんだか不憫な感じがしてくる。
そこに、立香も近づいて、立ち上がったランスロットの前に立つ。
「味方になってもらえないかな」
「負けた以上、私の命はあなたがたに預ける」
「唯斗、事後承諾みたいで悪いけど、いいかな」
立香はそこでこちらを振り返った。わざわざ確認を取ったのは、アーラシュのことがあるからだろう。それでも事前に聞かなかったのは、どうあれ必要なことだからだ。それを唯斗が理解していると分かっている。
「…アーラシュのことは、マスターである俺の未熟さも原因だ。別に、騙し討ちのせいだけじゃない。まさかサー・ランスロットがそんなことすると思わなかったけど、想定してなかった俺の落ち度でもあるしな。非常に残念だけど」
「うっ…」
「唯斗さんが腑抜け野郎とランスロット卿を罵ったとき、ギャラハッドさんがその場にいたら『よく言った』くらいのことは仰ってくれそうな気がしますし、実際身のすく思いでした」
「…、どのような誹りも甘んじて受けよう……」
随分がっくりとしているが、これでランスロットを味方にすることに成功した。
そうして、あとは東の村に戻るだけとなったが、ランスロットは先に案内したい場所があるとして、一行を砂漠と山岳地帯の境目あたりまで連れていった。
訳アリの様子だったこともあり、立香がGoを出して、全員でランスロットとともに北へと向かう。
そこにはなんと、難民たちによる大規模な村が形成されていた。
どうやらランスロットは、遊撃騎士として聖都以外での聖抜を担当しており、その過程で選ばれなかった人々を匿っていたのである。また、獅子王のやり方についていけなくなった兵士も私設部隊として組織化し、聖地の難民すらも受け入れて、このような巨大な村を築いた。
ランスロットはランスロットなりに、できる範囲で獅子王のやり方による犠牲を減らすようにしていたらしい。ここまでのことを実行に移せるのがランスロットの英雄たるゆえんだろう。
賑わう村の様子に全員で感心していると、そこに、聞き慣れた声がかけられる。
「おやおや、騒がしいと思ったらようやく到着かい?待ちくたびれたよ」
「な…ッ!!」
「っ!!?」
息を飲む立香とマシュ、さすがに唯斗も唖然とした。
「ハァイ、ナイスリアクション!万能天才ダ・ヴィンチちゃん、何日かぶりに登場さ!」