神聖円卓領域キャメロットIII−12


翌日、ついに大神殿に突入した。
最初はきちんと伝令は出していたが、共闘を申し込む書面など、あの太陽王がろくに受け取るわけがない。想定通り、スフィンクスの群れが放たれるとランスロットたちが引き受けた。

カルデア一行だけで大神殿に入ったが、入ってすぐにニトクリスと会敵、これを峰打ちで倒した。強敵であるニトクリス相手に加減するのは大変で、普通に倒す方が遥かに楽だったが、心優しい彼女にそんなことをしたくないのは満場一致だった。

そうして、立香、マシュ、唯斗、ダ・ヴィンチ、藤太、三蔵の2名と4騎は、ついにオジマンディアスの玉座に入った。


「ニトクリスを下したか。良い。褒めてつかわす。して、何用だ異邦のマスターども。余に首を預けに来たか、あるいは情けを乞いに来たか」

「要件はもう伝えてある」


こちらを玉座から睥睨するオジマンディアスに対して、立香が毅然と述べた。オジマンディアスはそれを聞いて片眉を上げる。


「うん?先ほどの知らせだと?余と共に戦え、だのという戯言だったか…なんとあれが本気であったか!ははははははははは!!!!腹を抱えて笑いながら焼き捨ててやったわ!だが良い、許す、特に許す!貴様には才能がある、あまりにも現実離れした夢を見る才能がな!空想を知らぬ余にはない才能だ!」

「…ちょっと。いくらなんでもそれはないんじゃない。こっちは本気なんだから」


やかましく笑うオジマンディアスに、三蔵はまったく臆することなく発言した。さすがの肝っ玉である。慣れている唯斗でも、笑いながら実際にはこちらを厳しく品定めする目に負けそうになる。


「それに、面白くもないのに笑うのもやめなさい」

「え…あれ笑ってないの?」


立香は小声で唯斗に尋ねる。唯斗はちらりと玉座を見上げてから頷いた。


「本当に価値がないと判断したならもっと本気で神殿に入るのを防いでた。なのに、真っ先にニトクリスをあてがった。こちらの意図を探ってんだよ」

「フン、曲がりなりにもカルデアにて余のマスターを名乗るだけある。良いだろう。あの砂漠を一人踏破した玄奘三蔵、そして雨宮唯斗、貴様らに一度のみ発言を許す」


オジマンディアスはぴたりと笑うのをやめると、玉座に座りなおす。こちらを見降ろす視線は、さらに鋭いものになった。それでも三蔵は笑って前に出る。


「ありがとうございます。やっぱり、思っていた通りの人ね」

「…なに?」

「あたし、大神殿には入らなかったけど、多くのオアシスや神殿のお世話になったわ。そこで、国民たちからあなたの話を聞いた」


砂漠を踏破する中で、三蔵はエジプト領の人々からオジマンディアスの人物像を聞いていた。

冷酷で尊大、しかし合理的。苛烈な王ではあるが、国民生活の向上を第一に考えることを王の務めだとして当然のように行ってきた。そんな王だ。


「なのに、あなたはその務めを放棄しようとしている。空想を知らない、と言ったわね。あなたは獅子王と戦えば共倒れになると読んだ。だから戦わなくなった。その結果、国を閉じる道を選んでしまった。獅子王に勝てないから、国民たちを神殿に閉じ込めた!この矛盾を、いえ、この諦めを捨てる道が提示されたのに、なんで素直にいいよって言えないの!」

「たわけ!勝算なき提案に乗ってなんとする!加えて、人理焼却により世界は燃えるのだ、獅子王ひとりを倒したところで無駄なこと」

「あんた、まさか獅子王をたとえ倒せても魔術王は倒せないって自分で言ってんのか?」


そこでつい、唯斗はそう口を挟んだ。まさかオジマンディアスからそんな弱気な言葉が出てくると思わなかったからだ。
さすがのオジマンディアスもぴくりと米神を動かす。


「……ほう?貴様まさか、余をサーヴァントとして使役しているとでも思いあがっているのか?その不敬、貴様一人の死で償えると?」


静かにキレているが、こちらも言いたいことは言わせてもらう。それを許したのは太陽王なのだ。


「うるせぇ!解釈違いなんだよ!」

「………は?」

「王の中の王、神王オジマンディアス!神話である方が納得いくほどの功績を成し遂げた、文明の父たるエジプトにおける最大の王ともあろうあなたが!魔術の世界では史実でも一般人の世界では伝説でしかないアーサー王伝説の王風情に勝てねぇって!?あんたは一般人類史においても実在する最強の王なのに!?なんなら会いに行ける王なのに!?俺だってエジプト考古博物館であんたのミイラ見たけど!?」

「…、貴様、何を、」

「自国大好き国家フランスが自慢の都パリの一番でかい広場に置いたのはフランス人の芸術家のものじゃなくあんたのオベリスクだった!あんたのミイラに対して儀仗兵が迎えたしエジプト政府もパスポートを発行したくらいには現代でも慕われてんだぞ!!そんなあんたが勝てねぇから引きこもるとか!」

「………、」


普段では考えられないほど大きな声でしゃべり続けたあと、広大な玉座の間にはシンとした沈黙が落ちる。ダ・ヴィンチが肩を震わせているのが視界の端で見えているくらいだ。

また、三蔵も徐々にオジマンディアスの言葉にいら立っていたためか、「そうよ!」「言ってやれ!」と囃し立てていた。


「貴様やはり少し頭が…まぁ良い。そんなことはどうでも良いのだ。現代など知ったことか。後世の俗人どもの評価など価値もない!よいか、余は余の権限で余の民を救うまで!他の物など、どうなろうと知ったことではない!」

「あなたまだそんなこと言うわけ!?現代の子にこんなことまで言わせておいて!ほとんど何言ってるかわかんなかったけど!あったま来た!本当に我儘ね、あなた!悟空みたい!」

「悟空…猿ではないか!」

「そう、お猿さんよ!そういえば顔もそっくりだわ!」

「それは悪口だろ!実物は古代人なのに190センチ近い化け物だぞ!」

「フォローになっておらんわたわけェ!!」


三蔵もキレ出したためいったん黙ったが、猿呼ばわりされるのは看過できない。
しかしフォローに失敗しオジマンディアスにも突っ込まれ、ダ・ヴィンチは崩れ落ちた。


301/460
prev next
back
表紙へ戻る